記憶力チャンピオンの秘策! 独学者のための『A4・1枚記憶シート』活用術

勉強する女性

スキルアップや副業のために独学を始める人が増えていますが、思うような成果が出ずに挫折してしまう方も少なくありません。そんな中、独学を成功に導く意外な秘訣として注目されているのが「手書き」です。

デジタル全盛の時代に、なぜ手書きが効果的なのでしょうか? 実は、手書きには脳を活性化し、記憶を定着させる科学的な根拠があるのです。本記事では、独学における手書きの重要性と、その効果を最大限に引き出す具体的な方法を、筆者の実践例を交えてご紹介します。

特に注目していただきたいのは、記憶力日本選手権大会最多優勝者が考案した「A4・1枚記憶シート」法です。この手法を使えば、独学での学習効率を大幅に向上させることができるかもしれません。

デジタルツールに頼りがちな現代の学習環境の中で、あえて「手書き」を取り入れることで、あなたの独学がどう変わるか、一緒に見ていきましょう。

独学こそ手書きを取り入れるべき理由

独学で勉強していて、成果が出ない……という場合、「手書きで勉強をしているか?」という点について振り返ってみましょう。

身につく勉強法としておすすめなのが手書き。特に暗記を伴う勉強には、手書きが非常に効果的。独学で勉強する人こそ、意識的に手書きを取り入れたほうがいいのです。

手書きについては、このような研究結果があります。言語脳科学を専門とする、東京大学大学院総合文化研究科教授の酒井邦嘉氏らによるものです。*1

参加者を、手帳群・タブレット群・スマホ群に分けます。参加者は、スケジュールの情報をそれぞれ手帳・タブレット・スマホのカレンダーに書き、スケジュールに関する問題に解答しました。

解答中の脳活動をMRI装置で測定した結果、手帳群のほうが、記憶の想起に対する脳活動が確かに高くなったのです。

言語に関係する脳の領域や、記憶処理に関係する「海馬」に加えて、視覚を司る領域でも活動の上昇が観察されました。

このことから、紙の手帳を使うことで言語化や視覚的イメージの機能が促進され、電子機器を用いた場合よりも一層豊富で深い記憶の情報が得られることがわかります。

 

手書きが脳を活性化し、記憶が定着するという事実は、科学的にも証明されているのです。

独学は、勉強スタイルをすべて自分で決められるがゆえに、やりやすい方法——音声を聞くだけ、テキストを読むだけ、といった勉強法に偏りがちです。そのため、意識的に復習を行なっていないと、勉強したつもりになって実際は身についていなかった……という状態に陥りやすいのです。

独学こそ、確実に身につく勉強方法を選び、定期的にチェックすることが大切です。

便利なアプリがあふれる中、手書きで暗記をするというのは無駄が多いように感じるかもしれません。しかし、効率的な学習法を選んだつもりが、学んだことがまったく覚えられていなければ本末転倒。効率的に暗記をしたいのなら、手書きは欠かせない勉強法なのです。

では、どのように手書きを取り入れればいいのでしょうか。手書きの効果を最大限に活かした暗記法として「A4・1枚記憶シート」をご紹介しましょう。

ノートを書く人

手書きで効果的に暗記できる「A4・1枚記憶シート」

「A4・1枚記憶シート」は、記憶力日本選手権大会最多優勝者で、一般社団法人記憶工学研究所で代表理事・所長を務める池田義博氏が考案した記憶法です。

具体的には、A4の用紙を4分割し、覚えたい事柄に対する問い・答え・気づき・イラストを書き込んで、暗記していきます。

それだけであれば、スマホのメモアプリでも十分作成できるように感じますよね。しかし池田氏は、あくまで手書きで作成することを強くすすめています。*2

テキストやイラストを、パソコンやスマホで作成するのではなく、あなたの手で書いて(描いて)ほしいのです。

その作業自体を通して、脳にアプローチをかけ、活性化を促せるからです。結果、感情や思考が引き出されたり、整理されたり、理解が進んだり、覚えやすくなったりします。

それらの効果は、キーボード入力(フリック入力)よりも手書きのほうが顕著なのです。

「A4・1枚記憶シート」には、単語など覚えたいことだけでなく、その単語から連想されるイメージやイラストも手描きします。この工程で、心が動いたり頭の中で情報が整理されたりするのです。

たしかに、単語帳をただ暗記しているときは無感情で、覚えることだけに集中していることが多いですよね。手書きは、心や頭を動かすことにつながる——つまり脳を活性化できる、ということなのです。

A4・1枚記憶シートの作り方と使い方

では、「A4・1枚記憶シート」の具体的な作り方を見ていきましょう。*3

A4・1枚記憶シート

  • A4サイズの紙を縦半分、横半分に折り、全体に大きな十字の折り目をつけます

  • Aに、覚えたい事柄に対する問いを書く
  • Bに、答えを書く
  • Cに、A・Bをみて、気づいたこと、感想、連想することを書く
  • Dに、Cから連想することを、図やイラストで描く
  • 日付用のスペースを作り、復習したら日付を書く

書き込み終わると、以下のようになります。

A4・1枚記憶シートの例

使い方は、A(問い)だけが見えるように折りたたみ、答えを思い出すだけ。正解・不正解によって、次にとる行動が変わります。

【正解できた場合】これ以上暗記は必要なし。試験前に再確認

【不正解だった場合】C・Dを見て、どんなイメージをしていたのかを思い出す。一定期間おいてからもう一度解く

【まったく思い出せない場合】C・Dを書き足し、さらにイメージを強化する。そして、一定期間置いてからもう一度解く

「A4・1枚記憶シート」を実際に試してみた

手書きで「A4・1枚記憶シート」を作って暗記すると、どれだけ効果があるのでしょうか。実際に筆者が試してみました。日頃、中国語の勉強をしているため、中国語のフレーズを暗記してみることにしました。

作成したA4・1枚記憶シートはこちら。

A4・1枚記憶シートの例

上記の例では、単語をひとつだけ書きましたが、複数書いてもいいそうです。

筆者の例では、飲食店で使いそうなふたつのフレーズを書いています。Cには、フレーズの発音を聞きながら、素直な感想や、湧いてきたイメージを書きました。Dには、包まれたご飯を持って走り去る人など、Cで浮かんだイメージをわかりやすくイラストにすることを心がけました。

普段暗記をするとき、連想するものを書き留めることはしないので、とても新鮮な作業でした。ただ、イメージするのは慣れないと時間がかかるかもしれません。

イメージしながら書き込んでいるとき、普段勉強で使っているのとはまったく異なる頭の使い方をしているという感覚がありました。

筆者は、およそ一週間ごとに復習を行ないました。初回は不正解。CとDを見ながら、「そうだ、こんなイメージだった」と思い出しながら、フレーズを再度音読して暗記。

すると、次回はAの問題を見たときに、イラストや発音が浮かんできてスッと答えることができました。念のため、また一週間後に復習したところ、しっかり思い出せました。

自分自身が感じた素直なイメージを、言葉・イラスト両方で書き出したからこそ、定着しやすかったのではないかと思います。

***
暗記をするなら手書き。文字だけでなく、イラストや図を描くことで、しっかり暗記することができますよ。

(参考)

*1 東京大学大学院総合文化研究科・教養学部| 紙のノートの脳科学的効用
*2 東洋経済オンライン|「スマホでメモ」は"浅い思考"量産の超残念習慣だ
*3 東洋経済オンライン|「1年で日本一」44歳が人生逆転"忘れないメモ術"

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。

会社案内・運営事業

  • 株式会社スタディーハッカー

    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
    >>株式会社スタディーハッカー公式サイト

  • ENGLISH COMPANY

    就活や仕事で英語が必要な方に「わずか90日」という短期間で大幅な英語力アップを提供するサービス。プロのパーソナルトレーナーがマンツーマンで徹底サポートすることで「TOEIC900点突破」「TOEIC400点アップ」などの成果が続出。
    >>ENGLISH COMPANY公式サイト

  • STRAIL

    ENGLISH COMPANYで培ったメソッドを生かして提供している自習型英語学習コンサルティングサービス。専門家による週1回のコンサルティングにより、英語学習の効果と生産性を最大化する。
    >>STRAIL公式サイト