脳には「記憶に残りやすい時間帯」があった。自分だけの“当たりの時間”を見つける2ステップ

資格試験の暗記に取り組むビジネスパーソン

「昨日覚えたはずなのに、翌朝にはもう抜けている」

資格試験の勉強をしていると、よくあります。英単語、法律用語、会計知識、判例、公式——覚える内容は多く、テキストを読んだ直後は「覚えた」と思ったのに、翌日問題を解こうとすると出てこない。仕方なく、また同じページに戻る。

これ、見直すべきなのは、記憶力そのものや記憶の方法ではなく、「いつ、覚えるか」という「時間×内容」の設計かもしれません

2025年、東北大学の研究チームがラットを使った実験で、記憶・学習に関わる脳の可塑性が一日のなかで変化することを示しました*1。この研究は「何時間勉強するか」ではなく、「いつ覚えるか」が重要であることを示唆しています。

東北大の研究が示した「脳の記憶定着には時間帯の波がある」

同じ刺激でも「覚えられる時間」と「覚えにくい時間」があった

東北大学大学院生命科学研究科の松井広教授・生駒葉子助教らの研究チームは、ラットの大脳皮質の神経細胞を光で直接刺激し、その応答を記録しました。成果は2025年10月、専門誌『Neuroscience Research』に掲載されています。

確認されたのは、記憶や学習の神経基盤とされる「LTP(長期的増強現象)」——神経のつながりが強まって記憶が定着する現象——が、日の出前には誘導できたのに、同じ刺激を日没時に与えても起きなかったということです。

つまり、まったく同じ刺激でも、脳が「覚えられる時間」と「覚えにくい時間」があった。記憶の定着しやすさそのものに、約24時間周期の波が存在することが示されたのです。

💡 脳には「覚えられる時間」があり、その波には周期性がある

【注意】ラットは夜行性のため、人間の「何時」に当たるかはこの研究では分かりません。ただ、「記憶の定着しやすさに時間帯の波がある」という構造は、昼行性の人間にも共通する可能性があります。研究チーム自身も、時間帯に応じた学習の最適化が期待されると述べています。

デスクで資格試験の勉強に集中するビジネスパーソン

「集中できた」と「覚えていた」は、別の仕組みで動いている

今回の研究でもうひとつ確認されたのは、神経応答の強さ(その瞬間の反応の大きさ)と、LTP(定着しやすさ)が別々の波として動いていたことです。神経が強く反応する時間帯と、記憶が長期的に刻まれやすい時間帯が、一致しませんでした。

これを資格勉強の実感に置き換えると——

💡 「集中できた」と「記憶できた」は、別問題かもしれない。

夜に集中できるから夜に暗記する——その判断が、定着の実態とずれている可能性があるということです。

資格試験で問われるのは、勉強中の納得感ではありません。本番で、必要な知識を取り出せるかどうか。そう考えると、集中力を最優先するタイムマネジメントにも疑問が出てきます。

自分の「記憶が残る時間帯」を見つける2ステップ

では、自分にとって記憶が残りやすい時間帯をどう見つければいいのか。暗記の記録をしばらく続けることで見えてきます。2つの項目でチェックしましょう。

ステップ1 勉強のたびに「冴え」を記録する

勉強したら「何時に・何を・どれくらい手応えがあったか(3段階)」をメモします。脳がどれだけ強く反応していたか——その瞬間の冴えや集中感を、自分の感覚で書き留めておく形です。

自分では朝が得意なつもりでも、記録をとると意外な時間帯に高い集中が出ていた、ということはよくあります。

ステップ2 翌日、「定着」を別の軸で確かめる

翌日または3日後、前日にやった内容をテキストを見ずに思い出す形で確認し、何個再現できたかをチェックします。

英単語なら日本語訳を隠して答える。法律用語なら用語だけ見て説明を書く。簿記なら仕訳を自力で切る。テスト形式でもOKです。

※読み返して「ああ、これね」と感じるのは定着の確認になりませんので要注意。

💡 記録の例(宅建の場合)

朝7時|借地借家法の用語10個|集中度:2
→ 翌朝:10個中7個を説明できた

昼12時半|民法・時効の用語10個|集中度:3
→ 翌日:10個中4個を説明できた

夜22時|重要判例5つ|集中度:2
→ 翌日:5つ中2つしか説明できなかった

勉強の記録をノートに書き込み、時間帯別の定着率を確認するビジネスパーソン

記録から「自分だけの時間割」を組み直す

しばらく記録を続けると、「自分はどの時間帯に覚えた内容が残りやすいのか」が見えてきます。その時間帯に、新規暗記を優先して置く。

💡 ポイント

「朝型がいい」「夜に暗記」という一般論は、あなたに合っているとは限りません。大切なのは、自分のデータで確かめること。朝は眠くて手応えが薄いのに、翌日確認すると意外と残っている——そんな発見が、勉強の効率を大きく変えることがあります。

資格試験の勉強では使える時間が限られています。仕事の前、昼休み、帰宅後、寝る前。その細切れの時間を、「空いているから勉強する」から「記憶が残るから、ここで覚える」に変えるそれが、同じ勉強時間で成果を変える合格戦略です。

もちろん、覚えやすさだけを優先するのではなく、内容によっては集中しやすさも考慮する必要があります。自分なりにアジャストしながら進めていきましょう。

「いつ覚えるか」を合格戦略に組み込もう

脳の記憶定着には時間帯の波がある——東北大の研究が示したのはこの可能性です。そしてその波は、「集中できる時間」とは必ずしも一致しません。

暗記が苦手なのではなく、覚える時間が合っていなかっただけかもしれない

「何を覚えるか」と同じくらい、「いつ覚えるか」を合格戦略に組み込む。次にテキストを開くときから、少しだけ意識してみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 暗記は朝と夜、どちらがいいですか?

一般論より「自分の定着率が高い時間帯」が正解です。朝・夜どちらがいいかは人によって異なるため、記録して確かめることをおすすめします。

Q. 集中できる時間に勉強すれば記憶に残りますか?

必ずしもそうではありません。東北大の研究では、神経が強く反応する時間と記憶が定着しやすい時間は必ずしも一致しないことが示されています。

Q. 記憶が定着しているかどうか、どうやって確認すればいいですか?

テキストを見ずに思い出せるかで確認します。読み返して「わかる」は定着の確認になりません。翌日に再現できた数を記録してください。

Q. 記録はどのくらい続ければ傾向がわかりますか?

1〜2週間、朝・昼・夜の各時間帯で数回ずつ試せば傾向が見えてきます。勉強内容のボリュームをそろえると比較しやすくなります。

Q. 定着しやすい時間帯がわかったら、どう使えばいいですか?

その時間帯に新規暗記を集中させ、それ以外の時間は復習や問題演習に充てるのが効果的です。限られた時間を、最も記憶が残る場所に配置する発想です。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。