人間関係は、職場や学校、プライベートなど、日常生活のあらゆるシーンについて回るもの。人付き合いが苦手な人や、他人の些細な言動に傷つきやすい人は、人間関係においてストレスを感じやすく、心が疲弊してしまうものですよね。
そんな心の疲れから解放されたいなら、以下にご紹介する4つのテクニックを参考に、人との向き合い方・接し方を見直してみましょう。
テクニック1.「嫌われる実害」を考える
「嫌われたくない」という思いから人に気を使いすぎ、いつも心がクタクタ……。そんな人は「もしその人に嫌われてしまったとして、どんな実害が起こるのか?」ということを考えてみるといい——そう提案するのは、信州大学医学部教授で精神科医の本田秀夫氏。
たとえば、上司であるA部長の態度が冷たい気がして、嫌われているのではないかとソワソワする……。そんなときは「もしA部長に嫌われているとして、どんな実害が起こりうるのか」を考えてみましょう。
そして、その実害は本当に起こると言えそうかや、仮に起きたとしてどんな対応策があるのかについても、挙げてみるのです。
- 可能性1.「嫌がらせを受ける」
→常識的な大人なら、そんなことはしないはず。万が一されたとしても、 “パワハラ” として会社に訴えるなど対処のしようがある。 - 可能性2.「昇進に響く」
→昇進に固執していないなら、気にする必要はない。そもそも昇進の可否は、上司の心証より、基本的には仕事の実績によって決まる。 - 可能性3.「社内での居心地が悪くなる」
→仕事が滞らなければ、多少居心地が悪くても困りはしない。もし仕事に支障が出るようなら、それはA部長のほうにも非がある。
このように考えていけば「人に嫌われたところで、意外と実害なんて出ないのだな」ということが理解でき、「嫌われたくない」という呪縛から楽になれるはず。
仕事で関わっている人や、付き合い程度の知人など、「それなりの関係を保てればよい」という程度の相手には、「嫌われてもかまわない」くらいの心構えで接することをおすすめします。
本田氏も指摘するように、世のなかには「敵は多いけれど仕事はできる」という人も大勢いるもの。よほど周囲に迷惑をかけでもしないかぎり、「嫌われることで仕事に実害が出る」というケースはそうそうないのかもしれません。
テクニック2.「心のゆとりは有限」と知る
「いつだって “いい人” でありたい」と考え、気を配ったり我慢したりする毎日に、心が疲れている……。そんな人にもっていただきたいのが、「心のゆとりは有限である」という考え方。
電子掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」の創設者で、どんな論敵にも屈しない “鋼のメンタル” の持ち主としてもおなじみのひろゆき氏が提唱するものです。
たとえば、どんなに人にお金をあげたいと思っても、手持ちの金額は限られているもの。誰かれかまわずお金をあげていては、いずれ自分が破産することになりますよね。「心」についてもまったく同様のことが言えます。
みんなに気配りをし、常に「いい人」であろうとし続ければ、「心のゆとり」という限りある資源が枯渇し、自分が疲れ果ててしまうのです。
- 疲れていると感じるときは、無理に人に気を使わない
- 「常に “いい人” でいなければ」という思い込みを捨てる
上記のような考え方、振る舞い方を心がけ、限られた “心の資源” をなるべく節約し、かつ有意義に使うことを目指しましょう。
テクニック3. コミュニケーションを「パターン化」する
「断ったら嫌われるかも」という不安から頼み事や誘いを断りきれず、しぶしぶ承諾……。そんなシチュエーションは、かなりのストレスになるものですよね。
このように「断れない」せいで心がすり減りがちな人には、ブロガー・著作家でもあり精神科医のTomy氏が提唱する「断り方をパターン化しておく」という方法を紹介しましょう。
「断りたいときはこう答えよう」というパターンを決めておくことで、気が進まないときの返答に悩むことがなくなり、コミュニケーションのストレスから解放されるのです。
では、具体的にどんな「断り方のパターン」をもつといいのでしょうか? Tomy氏がすすめるのは、「とりあえず笑顔でさわやかに応じながら『あとで確認してから返事しますね』と言う」こと。これなら相手に嫌な印象を与えないうえ、返答までに少し間を置けるため、その場の勢いにも流されにくくなるそうです。
自分の心を大切にするためには、無理をしてまで頼み事や誘いに応じないことが大切。ぜひお試しください。
テクニック4. “みほこさん” の法則
少し苦手な相手とコミュニケーションをとるとき、どうしてもぎこちないやり取りしかできず、心が疲れてしまう……。そんなことがよくある人は、会話の際に「“みほこさん” の法則」を意識してみましょう。
この法則は、コミュニケーション研修などを手がけるインサイトラーニング株式会社の設立者・箱田忠昭氏が、好印象を与えるコミュニケーション術として提唱しているもの。以下4項目の頭文字をとっています。
- み=認める
例「さすが、○○さん!」 - ほ=ほめる
例「○○さんはいつも細かいところに目が届いていますよね」 - こ=肯定する
例「おもしろい企画ですね」 - さん=賛成する
例「私も同じことを考えていました」
上記の「みほこさん」を意識して会話をすると、相手からの心証がよくなり、円満な人間関係を形成・維持できるようになるそうです。
この対人テクニックは、「返報性の原理」のという心理法則の観点からも、有効であると考えられます。
心理カウンセラーの秋カヲリ氏の解説によれば、返報性の原理とは「もらったものを返したくなる」という心理のこと。私たちの心には、好意を示してくれた相手や、親切にしてくれた相手に対して自然と好意を抱くという傾向があるのです。
苦手な相手と話さなければならないとき、「嫌だな、苦手だな」としか思えないと、コミュニケーションそのものを負担に感じてしまうもの。そこで、“みほこさん” を意識したひとことを、会話に盛り込んでみてください。
自然なかたちで相手に好意が伝わり、「返報性の原理」が働いて、相手からも好意を抱かれやすくなるはずです。心の疲れは、きっと減っていきますよ。
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人と付き合うのが苦手。職場などのコミュニティにうまくなじめない。そんなお悩みを抱えている方は、上にご紹介した4つの対処法のいずれかを試してみてはいかがでしょうか?
「『人間関係に疲れたな』と思ったら最初にやるべき3つのこと」でも、具体的な対策をご紹介しています。
(参考)
ダイヤモンド・オンライン|【精神科医が教える】「人にどう思われているか」を気にしすぎてしまう人が、ラクになる方法
ダイヤモンド・オンライン|ひろゆきが教える「人間関係の疲れがウソみたいに消える言葉・ベスト1」
ログミーBiz|過去を思い出して後悔するのは、心を守るための防御反応精神科医Tomy氏が教える、自責に苦しまずに生きるコツ
プレジデントオンライン|味方をつくる「心理」基本のキ -懐に入る「心理・論理・時間」テクニック【1】
マイナビウーマン|【心理学】返報性の原理(法則)とは? ビジネス・恋愛での活用例
【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。