「いい意見」の2つの条件。満たすためには、自分の主張に○○してみて

狩野みき先生インタビュー「自分の主張に反論してみる」01

会議などの場で意見を求められることも多いビジネスパーソン。そんな場が訪れた際、どうせなら「いい意見」をもちたいですよね。でも、そもそも「いい意見」とはどんな意見で、どうすれば「いい意見」をもてるようになるのでしょうか。慶應義塾大学や東京藝術大学の講師である狩野(かの)みき先生は、「自分の主張に反論してみる」ことをすすめてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹

意見には「結論と根拠」さえあればよく、「正解」などない

日本人が、「自分の意見をもつ」ことを苦手としているということは、すでに以前の記事で述べました(『「自分の意見をもてない人」に決定的に足りないもの。“これ” がなければ意見とは言えない』参照)。そもそも日本人は、「意見」という言葉に対して偏った見方をもっているように私は感じています。たとえばですが、地球温暖化といった小難しいテーマでないと、意見など述べてはいけないと思っていませんか?

でも、意見というのはそんなにハードルの高いものではありません。「今日のお昼にはハンバーガーを食べたい、なぜならハンバーガーのクーポンがあるからだ」というふうに、結論と根拠さえあれば、それは立派な意見になるのです。

また、ビジネスパーソンの場合には、「馬鹿だと思われたくないな」といった思いも、自分の意見をもちにくくさせている要因かもしれませんね。なんらかの会議で、「若い人からも意見を聞きたいのですが、何かありますか?」と問われたとして、多くの人が、「自分がどう思うか」ではなく「この場ではどんな意見がふさわしいか」というように、ついその場に迎合した「ストライクゾーン」を探してしまうのです。

このことの要因は、日本の教育に根強く残っている「正解主義」にあるのでしょう。それこそ「考える力」だとか「自分なりの意見をもつ力」を育てることを重視している新学習指導要領は、旧学習指導要領から移行の途中です。私たちの世代ほどではないにしても、旧学習指導要領のもとで教育を受けてきたいまの若いビジネスパーソンの場合にも、自分の意見をもつことではなく、「その場での正解を探したい」という意識がどうしても強く働いているように感じます。

まずは、意見は小難しいものでもなんでもなく、結論と根拠さえあればいいということ、そして意見には正解などないということを知ってください。

狩野みき先生インタビュー「自分の主張に反論してみる」02

説得力があり、説明責任をとれる意見こそ「いい意見」

でも、「それはわかったけど、どうせならいい意見をもちたい」と思う人もいるでしょう。では、どんな意見が「いい意見」なのでしょうか? いい意見とは「説得力がある意見」のことです。意見とは、議論をよりよく発展させるためにあるものですが、意見を言うからには、やはり相手を説得する力が必要です。

でも、勘違いしてほしくないのは、完全に相手を論破するような必要はないということ。説得というと、相手の意見を180度変えて自分の意見に染めてしまうことのように考える人もいるかもしれませんが、相手には相手の価値観やそれをかたちづくってきた過去がある。それを完全に覆すことなどそう簡単にできるわけもありませんよね。

でも、「そんな意見もあるのか、思ってもみなかったな」「もしかしたら自分の意見はちょっと考え直した方がいいかも……」と相手に思わせることならできると思います。そうして相手の立ち位置を少しでもずらすことができれば、その議論はただ対立するものではなく、よりよく発展していくと考えます。

また、「なぜそう思うのか」をきちんと説明できる——つまり、「説明責任をとれる」こともいい意見の条件です。これは、「説得力がある」とニアリーイコールとも言えます。無責任に意見を押しつけるのではなく、説明責任を果たすためには意見の根拠が明白である必要があり、だからこそ説得力がある意見にもなりうるのです。

狩野みき先生インタビュー「自分の主張に反論してみる」03

相手に歩み寄り「迂回」することで相手の心を動かす

では、どうすれば説得力があって説明責任をとれる「いい意見」をもつことができるようになるのでしょうか。一番手っ取り早い方法は、自分の主張に反論してみるということです。

たとえば、先にも例に挙げましたが、「今日のお昼にはハンバーガーを食べたい」と思ったとします。そこでまずはその結論の根拠を考えましょう。「ハンバーガーのクーポンがあるから」「半年間、ハンバーガーを食べていないから」といったことを思いつくかもしれません。

そこからさらに先に進んで、自分の主張に反論してみてください。「カロリーが高すぎる」など、自分の主張に反する「今日のお昼にはハンバーガーを食べないほうがいい」という結論の根拠を考えるのです。

すると何が起こるか? それは、別の根拠をもつふたつの視座を手に入れるということです。視座が増えるということは、物事を多角的に見られるようになるということ。それだけ自分の意見も深まっていくわけです。

そうしてできた意見は、その意見に反論する相手に伝えるときにも違いが出てきます。相手の意見やその根拠についても相手の視座からしっかり考えているのですから、「あなたの主張もその根拠もよくわかる、けれども〜」というふうに、相手に歩み寄りながらも自分の意見をしっかり伝えることができるでしょう。

そのように、ただ「私の結論はこうだ」「その根拠はこうだ」と述べるにとどまらず、いわば「迂回」することで思考の深さが言葉選びや表情に表れ、相手の心を動かすのです。

狩野みき先生インタビュー「自分の主張に反論してみる」04

【狩野みき先生 ほかのインタビュー記事はこちら】
「自分の意見をもてない人」に決定的に足りないもの。“これ” がなければ意見とは言えない
社会人が「なんかおかしい、ちょっと違う……」という感覚を、絶対にスルーしてはいけない理由

【プロフィール】
狩野みき(かの・みき)
慶應義塾大学、東京藝術大学、ビジネス・ブレークスルー大学講師。「自分で考える力」イニシアティブ、THINK-AID主宰、子どもの考える力教育推進委員会代表。慶應義塾大学大学院博士課程修了。20年以上にわたって大学等で考える力・伝える力、英語を教える。『ハーバード・スタンフォード流 子どもの「自分で考える力」を引き出す練習帳』(PHP研究所)、『ハーバード・スタンフォード流「自分で考える力」が身につく へんな問題』(SBクリエイティブ)、『超一流の「自信思考」 世界のエリートにも負けない自分のつくり方』(大和書房)、『「自分で考える力」が身につく親子の対話術』(朝日新聞出版)など著書多数。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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