『マインドマップ読書術』|アイディア整理の定番を読書に応用してみた

読書×マインドマッピング

本で読んだはずの内容がさっぱり思い出せない。本で得た知識を何かに活かせた試しがない……。

こんな悩みを抱えているなら、読書のあとに「マインドマップ」を作成するのがおすすめです。マインドマップとは、脳の自然な思考プロセスを書き出すことで、頭のなかが「見える化」され、思考の整理や、記憶の定着、アイデア発想などを助ける手法のこと。*1

本を読んだ自分の「脳」を客観視できるなら、情報や思考の整理だけでなく、行動に移す際のヒントも見えてくるはず。

今回は、筆者が実践しながら「マインドマップを活用した読書術」をご紹介します。

脳は連想を広げたがる

私たちは普段、仕事や勉強などで「何かひとつのこと」を考え続けようとしますが、意外とうまくいきません。

いろいろと余計なことが浮かんできて、収拾がつかなくなってしまうこともあるでしょう。仕事のことを考えながら夕飯のことを考えたり、そうかと思えば突然家族のことが頭に浮かんだり……。

でも、それは脳にとって自然なことです。

英国ThinkBuzan公認マインドマップ®シニアライセンスインストラクターの資格をもつ内山雅人氏(一般社団法人学びコミュニケーション協会代表理事)は「本来、脳はどんどん連想を広げていこうとする性質を持っている」と語ります。

だからこそ、マインドマップが生きてくるのです。

マインドマッピングが効果を生むワケ

マインドマップがくねくねとした枝で、放射状に描かれるのは、脳内の連想を視覚的に表しているから。*2 *3

ニューロンのように広がるマインドマップ

つまり、マインドマップとは、私たちがいつも行なっている連想という認知プロセスを、止めることなくノート等に表現していくこと。脳の性質によく合う方法であることは間違いありません。

また、「マインドマップの学校」は、脳が「言葉よりもイメージに素早く反応」することについても言及しています *2。

とすれば、マインドマップの影響は想像以上に大きいはず。読書での活用もそのひとつではないでしょうか。

「読書×マインドマッピング」が最適な理由

読書とマインドマップを組み合わせることで、本を読んだ自分の「脳」が見える化され、客観視できるのは大きなメリットです。

 

前出の内山氏は次のように述べています。

  • 本で読んだ内容をマインドマップで記録すると、それを見返すことで自分の思考の流れをたどり直せる
  • 読書の際に自分が何を感じ、考えたか思い出せれば著者の主張も連想できる

つまり、「読書×マインドマッピング」は、自分が本を読んだ際の「脳」を客観視でき、見返すだけで読書を再び体験でき、その内容も思い出しやすくしてくれるのです。

情報および思考の整理も、記憶も、実際に活かすことも、スムーズになるのは間違いありません。

では、さっそく「読書×マインドマッピング」を実践するための、準備を始めましょう。

「マインドマップ」の基本

マインドマップはイギリスの著述家・教育者のトニー・ブザン氏が考案しました。そこで、同氏が示す「本物のマインドマップを見分けるためのチェックリスト」を参考にします。

以下に、その内容をわかりやすい表現でまとめました。*2 

  • 明確なテーマが中央にカラフルな絵で示されている
  • 中央から放射状に広がる図になっている
  • ひとつの枝(ブランチ)に一語が沿うように書かれている
  • 文字だけでなくイラストや図などが使われている
  • 全体に色がふんだんに使われている(色彩豊かに)
  • 見やすくてわかりやすい
  • 自然で有機的(脳に自然な曲線で描かれている)
  • 視覚に強く訴える(一枚の絵のように仕上げる)

「スパイダー図」や「コンセプトマップ」がたくさん並んでいる

では、上記の基本を押さえながら実践に入ります。

「マインドマップ読書」を実践してみた

マインドマップは「無地の紙を横長に置いて作成」が基本です。*2

さっそく筆者も無地のA4用紙と、カラフルなマーカーを準備。そして、以下のとおり通常のマインドマップ要素に、読書の要素を加えてみました。

  • 紙の中心に本のテーマがわかる「セントラルイメージ」を描く
  • セントラルイメージから伸ばす「メイン・ブランチ」ごとにカラーをまとめる
  • ブランチはフリーハンドで曲線に描く
  • 本で得た知識や自分で考えた言葉を、ブランチ1本につき1語上に乗せていく

題材は『人を動かす(改訂文庫版)』(D・カーネギー, 創元社, 2023)で、目的は「対人関係スキル」を学び、活かすことです。

人づきあいの「基本のき」が詰まった一冊であり、長く読み継がれてきたのは、それだけ本質がブレてないから。

また、初めてのマインドマッピングの題材を、内容が複雑すぎたり、専門用語が多かったりする本で行なうのは難しく感じたため、「伝え方の原点」とも言える本書を選びました。

では、さっそく始めましょう。

1. 目次に印をつける

マインドマッピングの下準備として、本の目次から自分が最も学びたいことが書いてある章を探し、黄色いマーカーで印をつけます。

本の目次を見て学びたい章に黄色いマーカーで印をつける

目次の学びたい章に印をつける

結局、学びたいのは「人に好かれる六原則」すべてでした……!

2. 本のページに印をつける

本を読みながら、重要だと感じた箇所にマーカーを引き、あとからすぐ開けるように本の端を折っておきます。

重要だと感じた箇所に黄色いマーカーで印をつけておく

読みながら重要だと感じたらマークしておく

3. マインドマップ作成

読み終えたら、つけておいた印を頼りにマインドマップを作成していきます。

できあがったマインドマップはこちら(作成時間は1時間半程度)。

筆者が本を読んだあとで完成させた「マインドマップ」

筆者が作成した「マインドマップ」

初めての挑戦で、なおかつ絵を描くことにもあまり自信がなかったので心配でしたが、基本を守って書き進めたら、それらしいものができました。

枝のあたりなど、よく目にするマインドマップとはちょっと違うような気もしますが……、それでもしっかりと効果は感じられたので、今回はこれでよしとします。

「読書×マインドマッピング」の感想

最初は慣れずに戸惑いましたが、堅苦しく考えずに、パッと思いついたことをブランチの上にひとつひとつ書くようにしてみたら、少しずつスムーズに進めらえるようになりました。

最後に、やってみて【よかった点】と、【工夫が必要な部分】をお伝えします。

【よかった点】

書くことがスムーズになるにつれ、「思考がみるみる広がっていく」ような、自由な感覚を得ることができました。自分の頭のなかがさっと開けて、解放されていくような感じです。

マインドマップが脳の特性を生かした思考表現であることを、実感できた瞬間です。

そして、今回の読書の目的は「対人関係スキル」を学び、活かすこと。結果として、以下の「ものすごく当たり前のこと」を学び、少しだけ行動に移すことができました。

  • 自分が人からしてもらえたら嬉しいことを考え、自分もそうする。
  • 相手への尊重が伝わるよう、丁寧で思いやりのある振る舞いをする。

ただの読書なら、「そんなことはわかっている」と、やり過ごしてしまったかもしれません。でも、このマインドマッピングを実践することで思考が整理され、知識にピンが打たれ、しっかりと身に刻まれたのです。

新たな学びは、なにも驚くような発見だけではないということも、学べた気がします。

【工夫が必要な部分】

慣れないうちは、ブランチを曲線的に書くのを難しく感じる人もいるかもしれません。うねうねした線が苦手なら、筆者のように、地図上の川のイメージを浮かべながら描いてみるのがおすすめです。

また、今回独自に、目次を見て学ぶ箇所をチェックしたり、本文で気になる部分が出てきたらマーカーで線を引いたり、ページの端を折ったりといった下準備を行ない、あらかじめ「読書×マインドマッピング」を行なう箇所を絞り込みました。

現実的に、これを行なわなければ、かなり大変だったと想像できます。この下準備と絞り込みは、「読書×マインドマッピング」に必要な工程かもしれません。

よろしければ参考にしてみてください。

***
「読書×マインドマッピング」は、決して簡単な作業ではありませんが、調子がのってくると、どんどんスムーズになります。効果もしっかりと得られるので、脳の自然な働きに任せ、一度挑戦してみてはいかがでしょう。

(参考)

*1: マインドマップの学校|マインドマップとは?
*2: マインドマップの学校|マインドマップの書き方・描き方「6つの法則」
*3: PRESIDENT Online|自分だけがわかる「超強力」なメモの方法

【ライタープロフィール】
上川万葉

法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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