勉強力の高い人は「ストレスとの付き合い方」がうまい。“ストレス=絶対悪” はじつは誤解だ

青砥瑞人さんインタビュー「勉強力を高まるストレスとの付き合い方」01

「社会人として勉強するからには、しっかり勉強の成果を出したい」というのは当然の願望だと思います。ところが、仕事をめぐるストレスによって勉強に集中できないという人もいるはずです。あるいは、「勉強しなければならない」と考えていること自体にストレスを感じる人もいるかもしれません。

そう考えると、まずはストレスとうまく付き合う方法を知る必要がありそうです。脳の研究をさまざまな分野に生かす「応用神経科学」を専門とし、ストレスに関する著書もある青砥瑞人(あおと・みずと)さんにアドバイスをお願いしました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

ストレスは、生物が生存するために欠かせないもの

多くの人が、「ストレスはよくないもの、ネガティブなものである」と思っているのですが、それは間違いです。私たちがストレスを感じるのは、生存するためにストレスが必要であり重要なものだからです。

ストレスは、基本的に負の感情にともなって生じるものです。負の感情とは、たとえば恐怖もそのひとつ。私たちが恐怖を感じたときにストレスを感じなかったとしたら、どうなるでしょうか? ナイフを手にした不審者が目の前に現れたとします。そこで一切のストレスを感じずになんの行動も起こさなければ、身に危険が及ぶことは言うまでもありません。

でも、実際にはそうなりません。恐怖がストレスを引き起こし、そのストレスを回避するために、交感神経が働いて「闘争反応 or 逃走反応」という反応が起きるのです。そうして、自分にストレスをもたらす不審者と戦ったり不審者から逃げたりすることで生命を守っています。

もちろん、ストレスは勉強にとっても重要な働きをしています。試験前には「やばい、勉強しなければ!」と感じて、いつも以上に勉強できるということがあります。これは、「ノルアドレナリン」という神経伝達物質の働きによるものです(『応用神経科学者が解説「勉強意欲を上げるコツ」。やる気を発揮できる脳の状態はこうしてつくる』参照)。

ノルアドレナリンが分泌されるときには、あわせて「コルチゾール」というホルモンも分泌されやすくなります。コルチゾールは「ストレスホルモン」とも呼ばれるように、ストレスを引き起こすホルモンですが、その一方で、集中力や思考力、記憶定着率といったものを高めてくれる働きももっていると言われています。

まずは、「ストレス=悪者」という認識をあらためましょう。それが、ストレスとうまく付き合い、勉強で成果を出すための第一歩です。

青砥瑞人さんインタビュー「勉強力を高まるストレスとの付き合い方」02

小さなストレスの蓄積が、思考の停止を招く

ただ、「勉強で成果を出す」という目的に絞って考えたときには、集中力を下げてしまう「不適切なストレス」があると見ることもできます。でもそれは、「こんなことから受けるストレス」といった、あるひとつのストレスというわけではありません。

私たちは、日々の生活のなかで小さいながらもたくさんのストレスを感じています。もちろんそれらひとつひとつは必要だからこそ感じているものですが、積もり積もってしまうことはよくありません。

勉強するために入ったカフェのインターネット環境がよくない……、パートナーとけんかしてしまった……、初めて会った取引先の担当者がちょっと怖そう……。ひとつひとつは些細なことかもしれません。でも、それらが積もり積もると体内をめぐっているストレスホルモン量が多くなり、脳のなかのストレス反応が過剰な状態になってしまいます。

そうなると、注意が分散してやるべきことに集中できなくなり、さらには脳の「前頭前皮質」という部位の機能をストップさせてしまうことにもなります。前頭前皮質は、勉強には絶対に欠かせない、思考をつかさどる働きを担っている部位です。その機能をストップさせてしまうのですから、勉強で成果を出すことにとって、ストレスの蓄積は致命的なものだと言えます。

青砥瑞人さんインタビュー「勉強力を高まるストレスとの付き合い方」03

ストレス・マネジメントのキモは「客観視」にあり

そう考えると、ストレスは私たちに必要なものではありますが、余計なストレスは減らしていく必要があるということが見えてきます。そうするための有名な方法のひとつが、紙に書き出すというもの。なにかにストレスを感じていると思ったら、それらをひとつひとつ書き出すのです。

ストレスの要因は、紙に書き出して「客観視」してみると、「なんだ、たいしたことじゃないな」と思えることも多いものです。もちろん、ストレスの要因が明確化されて逆にストレスを高めてしまうケースもあるのでベストの方法だとは一概に言えませんが、多くの場合に有効な方法でしょう。

そして、そのように自分を客観視することこそが、ストレスとうまく付き合うための鍵となります。なぜなら、ストレス反応は人それぞれにまったく違うものだからです。「勉強しなければならない」というプレッシャーを感じてパフォーマンスを高められる人もいれば、同じ刺激を受けても過剰にストレスを感じてパフォーマンスを下げてしまう人もいます。ストレスホルモンの分泌量やそれをキャッチする受容体の密度の違いといった要因によって、ストレスに対する過敏性の個人差が生まれているのかもしれません。

重要となるのは、自分がどんなことやどんな状況にストレスを感じるのかという、自分のストレス反応のあり方を知ること。その答えは他人のなかには絶対になく、自分自身のなかにしかありません。まずは、先に挙げた紙に書き出す方法などで、常にストレスと向き合うようにしてみてください。それが、自分のストレス反応のあり方を知ること、さらには勉強の邪魔となるようなストレスへの対処法を見いだしていくことにもつながっていくはずです。

青砥瑞人さんインタビュー「勉強力を高まるストレスとの付き合い方」04

【青砥瑞人さん ほかのインタビュー記事はこちら】
 応用神経科学者が解説「勉強意欲を上げるコツ」。やる気を発揮できる脳の状態はこうしてつくる
発想力が欲しい人に朗報。脳の「2つの特性」を知るだけで、大人でも効率よく創造性を育める

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  • 作者:青砥瑞人
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【プロフィール】
青砥瑞人(あおと・みずと)
1985年4月4日生まれ、東京都出身。DAncing Einstein Founder & CEO。日本の高校を中退後、米UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経科学学部を飛び級卒業。脳の知見を、医学だけでなく、そして研究室だけに閉じず、現場に寄り添い、人の成長やWell-beingに応用する応用神経科学の日本におけるパイオニア。また、AI技術も駆使し、NeuroEdTech®/NeuroHRTech®という新分野も開拓。同分野にていくつもの特許を保有する「ニューロベース発明家」の顔も持つ。人の成長とWell-beingに新しい世界を創造すべく、2014年に株式会社DAncing Einsteinを創設。対象は未就学児から大手企業役員まで多様。空間、アート、健康、スポーツ、文化づくりと、さまざまな分野に神経科学の知見を応用し、垣根を超えた活動を展開している。著書に『HAPPY STRESS 最先端脳科学が教えるストレスを力に変える技術』(SBクリエイティブ)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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