
マルチタスクが大変なのはわかっています。けれど、やらざるを得ないのが現実です。
通知が次々に届き、会議中もメールやチャットが止まらない。複数案件が同時に進む環境で、この状況を完全に避けるのは困難です。
問題は「知っていても、やめられない」ということ。
「仕事ができる人ほどマルチタスクが得意」というイメージがあります。しかし優秀な人ほど、この罠を理解し、上手に回避する術を身につけているのです。
つまり問題は「やめる・やめない」の二択ではなく、「どうやって上手に付き合うか」。本記事では、マルチタスクをせざるを得ない環境での実践的な対処法を紹介します。
「無駄なマルチタスク」と「必要なマルチタスク」を見極める
まず理解すべきは、すべてのマルチタスクが悪いわけではないということ。
作業療法士で脳の機能に詳しい菅原洋平氏は、「必要ではない無駄なマルチタスクを減らすこと」の重要性を指摘しています。私たちが「仕方ない」と諦めているマルチタスクのなかには、工夫次第で回避できるものが多く含まれているのです。
いますぐ見直せる「無駄なマルチタスク」の例を見てみましょう。
マルチタスクの見直し例
・ リマインドや、メールやチャットの通知が来るたびに気をとられてしまう
→ 通知を管理する仕組みをつくる
・ ToDoリストが目に入ると、作業中も次のタスクを意識してしまう
→ リストは引き出しなどにしまい、ひとつ終わるごとに取り出してチェックする
・ 複数の案件の資料を同時に机に広げて、あれこれ考えてしまう
→ 使う資料だけ手元に出し、残りは目に入らない場所にしまう
たとえば「作業をしながら、ついスマホに手を伸ばしてSNSをチェックしてしまう」という行為。これは「無駄なマルチタスク」と言っていいでしょう。
これらは小さな変更に見えますが、脳の認知負荷を大幅に軽減する効果があります。特に視覚情報の整理は即効性があり、実践した初日から集中力の違いを実感できるはずです。
つまり、すべてを同時並行で処理しようとするのではなく、マルチタスクをしているように見える人ほど、ひとつの仕事に集中しているのです。

複数タスクを「同時」ではなく「連続」で処理する
ここからが本題です。マルチタスクをやめられない環境で最も効果的なのは、「同時並行」から「高速切り替え」への発想転換です。
タイムボクシングで脳の負担を最小化
たとえば「タイムボクシング」という手法があります。複数のタスクを扱いながらも、脳への負担を最小限に抑えることができる方法です。
時間を区切って集中することで、脳の切り替えを明確にし、タスクの混在を防ぐことができます。
実践方法
・ 集中タイムを設定する | 重要な仕事を選び、30分〜2時間の集中時間を確保
・ 通知を制限する | 特定の時間だけに通知する設定にする(1時間に1回など)
・ 環境を整える | 使う資料だけ手元に出し、残りは目に入らない場所にしまう
・ 切り替えを明確に | ひとつのタスクが完了後、次のタスクに移る
最初は慣れないかもしれませんが、この方法を続けていくことが重要です。
よくある失敗パターンと対処法
いざ実践してみると、「緊急の連絡が来たらどうしよう」と最初は通知が気になるかもしれません。
そこで、通知をまとめて確認する時間を設けることで、目の前のタスクに集中しやすい環境をつくります。
また、予定時間内に終わらないタスクが出てくることもあります。これはよくあるケースです。むしろ、自分の作業時間を正確に把握できるようになった証拠であり、継続していくうちに現実的な時間配分ができるようになります。
でも、タスクからタスクへ切り替えるたびに、頭がモヤモヤして疲れてしまう経験はありませんか?
そこで大切なのが、「脳の切り替え」を習慣にすることです。

脳を守る"切り替えの習慣"をつくる
脳の疲労をためないためには、タスクの合間に "切り替えの時間" を意識的に挟むことが大切です。
脳はタスクを切り替えるたびに "再起動" のようなエネルギーを消費します。そのため、物理的にも心理的にもリセットの習慣を持つことが有効です。
具体的には、以下のような方法があります。
脳を守るための "小さなリセット習慣"
・ リセットタイムを取る | タスクが終わったら、3分だけ椅子から立ち上がり、軽く体を動かす
・ デスク環境を整える | 使い終えた資料を片づけ、次のタスクに必要なものだけを並べる
・ 呼吸を整える | 深呼吸を3回してから、次のタスクに取りかかる
・ 思考を言語化する | 「次はこれをする」と口に出して、脳の切り替えを促す
いきなりすべてを変えようとすると挫折するので、段階的に導入していくことをおすすめします。

結果的に実現する「効率的なマルチタスク」
興味深いことに、時間を区切って集中する習慣を身につけると、複数のタスクを効率的に処理できるようになります。
これは「シングルタスクの連続」という、脳に効率的な働き方。結果的に「マルチタスク」の働き方が実現できます。
現代の働き方において、マルチタスクを完全に排除することは現実的ではありません。しかし「同時並行」から「効率的な切り替え」へと発想を転換することで、脳への負担を最小限に抑えながら、必要な仕事をこなすことは可能です。
また、適度な休憩を挟むことで脳がリフレッシュされます。次のタスクに新鮮な気持ちで取り組めるため、1日を通して高いパフォーマンスを維持できるようになるのです。
***
完璧を求める必要はありません。
今日から集中できる環境を整えて、目の前のタスクに集中する。それだけでも大きな一歩です。
本記事を読んで同じような悩みを抱えているとしたら、まずは時間を区切って集中する習慣を身につけることから始めてみてはいかがでしょうか。
*1 プレジデントオンライン|人間は本質的に"マルチタスク"はできない
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。