マウンティングする人は “劣等感が強い”。脳科学と心理学が明かす「職場の厄介な人」の真実

デスクで頭を抱えている男性

「また始まった……」

月曜日の朝、コーヒーを片手にデスクに向かう隣で、今日も同僚が自慢話を始めている。

「昨日、部長と食事してさ。例の企画について『君のアイデアは素晴らしい』って褒められちゃって。まあ、当然だけどね」

職場でのマウンティングに、またエネルギーを奪われてしまう——そんな経験、ありませんか?

特に厄介なのは、マウンティングは繰り返されるということ。同じ職場にいる限り完全に避けることは難しく、「相手を変えることはできない」とわかっていても、毎日のように心を消耗させられてしまいます。

そこで——あえて、反応しない技術を身につけてみませんか?

今回の記事では、マウントする厄介な人を上手にかわす「グレイロック・テクニック」をご紹介します。マウントする人の心理メカニズムも詳しく解説しますので、より快適な働き方に変えるために、ぜひご一読ください。

マウンティングしてくる厄介な人

「まだそんな古い情報使ってるの? もう業界では常識が変わってるよ」
「上司とゴルフに行ったんだけど、仕事の話で盛り上がっちゃって。やっぱり信頼されてるからかな」

——職場でこんな言葉を聞くたび、なんとも言えない不快感を覚えませんか?

「知識」「人脈」「能力」を、さりげなくアピールしてくるマウンティング。一度なら聞き流せても、同じ人から何度も繰り返されると「またか……」とうんざりしてしまいますよね。

脳科学者・西剛志氏いわく、マウンティングは「日本特有の言い回し」。英語では以下のように呼ばれるのだとか。

英語で「Condescending attitude」(見下す行為)、「Arrogant」(傲慢)と呼ばれ、「他人をとがめるようなやり方で自分の優位性を主張すること」を意味しています *1

ここで注目すべきは、本当に自信のある人は、わざわざ「自分のほうが上だ」とアピールする必要がないという点です。つまり、マウンティングをする人は「無意識」に「心のどこかに『劣等感』がある」と、西氏は述べます。*1

たとえば、新しい業務手順を提案したときにこのように言われたとします。

「それって前の会社のやり方でしょ? ここでは通用しないよ」

モヤっとする言い方ですが、この発言の根底には「もしかしたら、この人のほうがスキルが高いかもしれない」という劣等感が隠れている可能性があります。それが防御反応として「マウント」という形で現れてしまうのです。

さらに、こうしたマウントをする人は「ナルシスト」が多いと西氏は言います。ナルシストは脳の働きがやや偏るため、「一見すると社交的に見えますが、会う人会う人に『私はすごい』アピール」をするそう。*1

つまり、表面上は「自信満々」「自分大好き」に見える彼らも、実際には強い劣等感を抱えており、自分を守るためにマウンティング行為に走ってしまうというのが真実なのです。

 
 
  • マウンティングは「劣等感の表れ」。本当に自信のある人はわざわざ優位性をアピールしない。
  • マウントをする人は「ナルシスト」が多い。

暗闇の中で頭を抱えているスーツ姿の男性

優しい人にマウントするのは「優しさに嫉妬している」から

なぜかいつもマウンティングのターゲットになってしまう人がいます。それは大抵「優しい人」です。「結局、言い返さないから狙われるんでしょ?」と思われがちですが、じつはもっと深い心理が働いているのです。マウントするナルシスト傾向の人は、「優しさそのものに嫉妬している」可能性があると専門家は指摘します。

『How to Outsmart a Narcissist(ナルシストをうまくかわす方法)』の著者、心理療法士のエリン・レナード博士は「ナルシストは優しい人の弱さを利用しようとする」と述べています。

a narcissist may mischaracterize your kindness as a weakness. They may view you as someone who is easily used and pushed around. *2

(ナルシストは、あなたの優しさを「弱さ」だと誤解することがあります。そして、あなたのことを「簡単に利用されて、いいなりになりやすい人」だとみなすかもしれません)

※訳は筆者が補った

たしかに、優しさは一見「弱さ」に映ることがあります。困っている同僚を手伝ったり、相手の気持ちを優先して自分の意見を控えめにしたりする姿は、攻撃的な人から見れば「扱いやすい相手」に見えるかもしれません。

しかし、ここで見落としてはいけない重要なポイントがあります。

優しい人がもつのは単なる「弱さ」ではなく、周囲の感情を読み取り、適切に配慮できる高い感情知性(EQ)なのです。この能力により、優しい人は自然と周囲から信頼され、良好な人間関係を築いています。

Unlike other things in life, they cannot manipulate to gain this gift, so they tend to be envious of it. *2

(普通のこととは違って、ナルシストはこの才能(=感情的知性)を自分の思い通りに操作して手に入れることができません。だからこそ、彼らはそれに対して強い羨望を抱きやすいのです)

※訳は筆者が補った

自分が目立つために必死に成果をアピールしているナルシストにとって、特別な努力をしなくても周囲から自然に慕われ、相談を受け、頼りにされている優しい人の存在は、まさに「手に入らないもの」の象徴。それが嫉妬となり、マウンティング行為として表れてしまうのです。

この構造を理解すれば、マウンティングされることは決してあなたの弱さの証明ではなく、むしろあなたが持つ貴重な能力への「裏返しの評価」だということがわかるでしょう。

 
 
  • ナルシストが優しい人をターゲットにするのは、優しさを弱さと誤解し、利用しようとするため。
  • 実際には優しさは「高い感情知性(EQ)」の表れ。ナルシストが手に入れられない能力であるため嫉妬している。

笑顔の表情が描かれた卵二つと、少し離れた位置に置かれた怒り顔の表情が描かれた卵

反応しない技術「グレイロック・テクニック」とは?

マウンティングする人の心理メカニズムを理解したとしても、日々繰り返される彼らの言動に心を振り回されてしまうのが現実です。「わかっていても、イライラしてしまう」「相手にしないつもりでも、つい反応してしまう」——そんな悩みを解決する方法があります。それが「グレイロック・テクニック」です。

この手法は、厄介な人に対して「あえて反応しない」ことで相手の興味を失わせる、心理学的に裏付けられた対処法です。メンタルヘルスを専門とする心理療法士のアイビー・クォン氏は以下のようにまとめています。

The grey rock method, aka gray rocking, is a strategy people use to manage toxic, abusive, or manipulative behavior. This tactic involves deliberately disengaging so that the other person will lose interest. *3

(グレイロック法(またはグレイロッキング)とは、毒性のある人や、虐待的・操作的な人の言動に対処するための戦略です。この方法では、意図的に感情的な関わりを控え、無関心を装うことで、相手の興味を失わせることを目指します)

※訳は筆者が補った

特にこの手法はナルシスト傾向の人に対して高い効果を発揮します。なぜなら、クォン氏によればナルシストは相手の感情的な反応を「栄養源(ナルシシスティック・サプライ)」としているため。その供給を断つことで彼らとの境界線をつくれるわけです。

 

グレイロック・テクニックの具体的な実践方法
【基本姿勢】
声のトーンを低く抑え、表情は常に冷静を保つ
返答は短く、1〜2つのフレーズに留める
実践例①:マウンティング発言への対応

相手の発言

えっ、まだその作業やってるの? 簡単な仕事だから午前中には終わるはずなんだけど
 

グレイロック対応

そうなんですね。でも予定通り進んでいるので大丈夫です
 
⚠️ さらに攻撃が続く場合の対応

事前に定型的な返答パターンを用意しておくことが重要です。

実践例②:しつこく絡まれた場合

相手の追撃

でも誰かに手伝ってもらってるんでしょ? 一人では無理だよね
 

定型返答パターン

「いま答えられません」
「いま集中しています」
「話はあとでいいですか?」

肝心なのは、相手の挑発や刺激に乗らないこと。マウントをする人は、相手の反応の揺らぎを見ることで優越感を得ます。でも、上記の例のとおり、まるでAIになったかのように素っ気なく返答をしてみてください。そうすれば、厄介な人も「ダメージを負うと思ったのに……」とあなたに攻撃をする意味がないとわかるでしょう。

***
厄介な人がマウントをとるのは、じつはあなたの強さに嫉妬しているから。相手の弱さを認識して、あえて素っ気ない態度を示し、健全な距離をつくってみてくださいね。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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