
「なぜマクドナルドはわざわざ割安なセットを用意するのか?」「なぜチョコザップは、ジムから着替えとシャワーを奪ったのか?」「なぜダイソーでは、予定になかったものまでカゴに入れてしまうのか?」
一見バラバラに見えるこれらの問いには、じつはたったひとつの答えが通底しています——「顧客の脳に、余計な仕事をさせるな」。
この連載【新人さんのためのマーケティング講座 Season4】では、Season3に収めきれなかった国内外の事例をさらに発展的に取り上げながら、「摩擦の除去」という現代マーケティングの最強武器を全20回で学びます。
顧客は「考えたい」のではなく「感じたい」「楽しみたい」のです。その体験を邪魔するあらゆる「摩擦(フリクション)」を取り除くこと——これこそが、売れ続けるブランドに共通するたったひとつの設計思想です。
・Season3を読み終えて「もっと事例を深掘りしたい」と感じている人
・「UX改善」や「CX設計」を理論だけでなく事例で理解したい人
・なぜ「引き算の設計」が強いのか、その構造を知りたい人
・自分のサービスの「摩擦」がどこにあるかを見つけたい人
・顧客の行動を動かす「体験設計」の本質を身につけたい人
・「選択肢の多さ」が顧客を逃がすメカニズムと、摩擦除去の具体的設計
・ピーク・エンドの法則など「記憶に残る体験」のつくり方
・開封体験・匂い・待ち時間など五感を使った顧客体験設計
・リフレーミングによる「同じ商品」の見え方の変え方
・ブルーオーシャン戦略・ジョブ理論など現代の競争回避の発想
- 【第1章】「選ぶ」を楽にする——摩擦除去の入門
- 【第2章】体験を「記憶」に変える——感覚と感情の設計
- 【第3章】「何者か」を伝える——ブランドキャラクターの設計
- 【第4章】摩擦を取り除く——参入障壁の設計と解体
- 【第5章】市場を「再定義」する——リフレーミングの力
- 【第6章】価格と「安さ」の再設計——値段がブランドを語る
- 【第7章】データとリアル——現代の顧客体験設計の最前線
【第1章】「選ぶ」を楽にする——摩擦除去の入門
買い物における最大の摩擦のひとつは「選ぶこと」そのものです。選択肢が多すぎる、比較が面倒、価格がわかりにくい——この章では、「決断の負荷を減らす」設計がいかに購買を加速させるかを学びます。
vol.1:なぜマクドナルドは、わざわざ「割安なセット」を用意するのか?

▶ vol.1:なぜマクドナルドは、わざわざ「割安なセット」を用意するのか?
「ご一緒にポテトはいかがですか?」ではなく、最初から「セット」として提示することで、比較検討という脳の重労働をまるごとスキップさせるマクドナルド。
この記事では、「選択肢の束ね方」が意思決定コストをどう下げるか、そしてバンドル価格が顧客満足と売上を同時に最大化するメカニズムを解説します。あなたのサービスに「ひとことで選べる単位」はありますか?
vol.20:なぜダイソーでは、予定にないものまでカゴに入れてしまうのか?

▶ vol.20:なぜダイソーでは、予定にないものまでカゴに入れてしまうのか?(最終回)
約53,000アイテム、毎月1,200新商品——この巨大企業の成長エンジンは「安さ」ではなく「考えなくていい」という快適さです。
この記事では、ワンプライスが引き起こす認知的経済性・アンカリング効果・損失回避の低下という3つの心理変化を解説します。Season4全体を貫く「摩擦の除去」という原則が、この最終回に結実します。
【第2章】体験を「記憶」に変える——感覚と感情の設計
顧客が実際に感じた満足度よりも、「あとから何を記憶しているか」のほうがリピートと口コミを決定します。この章では、五感・感情・記憶のメカニズムを使った顧客体験設計を学びます。
vol.2:なぜ私たちは、リッツ・カールトンを「最高だった」と記憶するのか?

▶ vol.2:なぜ私たちは、リッツ・カールトンを「最高だった」と記憶するのか?
全工程を100点にしなくても、顧客の記憶を「最高の体験」にすることはできる——その鍵が「ピーク・エンドの法則」です。
この記事では、感情が最も高まった瞬間(ピーク)と最後の瞬間(エンド)を設計することで、平均的な体験を「最高の記憶」に変える方法を解説します。リソースをどこに集中させるか、という優先順位設計の根本がここにあります。
vol.3:なぜAppleは、「捨てられる箱」のデザインに何百時間もかけるのか?

▶ vol.3:なぜAppleは、「捨てられる箱」のデザインに何百時間もかけるのか?
開封した瞬間に「これは特別なものだ」と感じさせる——Appleの箱はただの梱包材ではなく、ブランド体験の「第一幕」です。
この記事では、アンボクシング体験が期待感・信頼感・自己重要感を同時に高めるメカニズムと、「捨てられるもの」にまで投資することの戦略的意味を解説します。
vol.4:なぜディズニーは、何もない場所に「ポップコーンの匂い」を漂わせるのか?

▶ vol.4:なぜディズニーは、何もない場所に「ポップコーンの匂い」を漂わせるのか?
人間の感覚のなかで、嗅覚だけが「思考」を経由せず直接感情に届きます。ディズニーはこれを知っている。
この記事では、匂いが記憶・感情・購買行動に与える影響と、視覚・聴覚・嗅覚を組み合わせた多感覚マーケティングの設計思想を解説します。
vol.5:なぜブルーボトルコーヒーでは、15分待たされても満足度が高いのか?

▶ vol.5:なぜブルーボトルコーヒーでは、15分待たされても満足度が高いのか?
「待ち時間」は通常、摩擦の最たるものです。しかしブルーボトルでは、その15分が「価値の証明」に変わります。
この記事では、「待つこと」が期待感と希少性を高める逆説的なメカニズムと、摩擦を「意図的に残す」設計がブランド価値を守る理由を解説します。除去すべき摩擦と残すべき摩擦の見極め方がわかります。
【第3章】「何者か」を伝える——ブランドキャラクターの設計
強いブランドは、機能や価格ではなく「このブランドらしさ」で選ばれます。この章では、個性・世界観・ポジショニングによってブランドキャラクターを際立たせる方法を学びます。
vol.6:水に「ドクロ」を描いたら、2,000億円企業になった

▶ vol.6:水に「ドクロ」を描いたら、2,000億円企業になった
中身はただの水。しかしドクロのデザインと「Murder Your Thirst」というコピーで、Liquid Deathは水市場の常識を完全に破壊しました。
この記事では、カテゴリーの常識を逆手に取ることで生まれる「非常識な差別化」と、デザイン・コピー・世界観の一貫性がブランド価値を指数関数的に高めるメカニズムを解説します。
vol.16:無印良品が「これがいい」ではなく「これでいい」を目指す理由

▶ vol.16:無印良品が「これがいい」ではなく「これでいい」を目指す理由
ブランドロゴも主張もない「アンチ・ブランド」が、なぜ熱狂的なファンを生むのか。
この記事では、「余白」と「引き算」がブランドのアイデンティティになる逆説と、顧客の価値観と深く共鳴することで価格競争から降りる「思想のブランディング」を解説します。
【第4章】摩擦を取り除く——参入障壁の設計と解体
「続けられない」「始められない」——この心理的摩擦こそが、最大の顧客離脱要因です。この章では、参入・継続・離脱それぞれの摩擦をどう設計するかを学びます。
vol.7:なぜチョコザップは、ジムから「着替え」と「シャワー」を奪ったのか?

▶ vol.7:なぜチョコザップは、ジムから「着替え」と「シャワー」を奪ったのか?
「本格的なジムに行くのが面倒」という最大の摩擦を、着替え不要・シャワー不要・予約不要で丸ごと消し去ったチョコザップ。
この記事では、「始めるためのコスト」を徹底的に削ることで生まれる新市場と、機能を引き算することが競合との差別化になるメカニズムを解説します。「完璧なサービス」より「始めやすいサービス」が勝つ理由がわかります。
vol.11:なぜメルカリは、他人の不用品を「宝物」に変えられたのか?

▶ vol.11:なぜメルカリは、他人の不用品を「宝物」に変えられたのか?
C to Cの最大の摩擦は「知らない他人を信用できない」という不安です。メルカリはこれをどう解消したのか。
この記事では、相互評価・補償制度・UIの「安心設計」が見知らぬ他者への信頼を生み出すメカニズムと、「信頼コスト」を下げることが市場そのものを創造する仕組みを解説します。
【第5章】市場を「再定義」する——リフレーミングの力
同じ商品でも、「誰向けか」「何と比べるか」が変わるだけで、売れ方は劇的に変わります。この章では、競争軸をずらして新しい「勝てる文脈」を作るリフレーミング戦略を学びます。
vol.9:なぜワークマンは、職人向けの服を「おしゃれなキャンプウェア」に変えられたのか?

▶ vol.9:なぜワークマンは、職人向けの服を「おしゃれなキャンプウェア」に変えられたのか?
商品は何も変えていない。ターゲットを変え、文脈を変えただけで、ワークマンは「作業着メーカー」からアウトドア市場の新星になりました。
この記事では、既存の商品・強みをまったく別の市場に再文脈化する「リフレーミング」の設計思想と、自社の「強みの再解釈」が新市場を開く事例を解説します。
vol.10:なぜサントリーは、おじさんのウイスキーを若者のハイボールに変えられたのか?

▶ vol.10:なぜサントリーは、おじさんのウイスキーを若者のハイボールに変えられたのか?
縮小する一方だったウイスキー市場を、「飲み方の提案」ひとつで若者文化に変えたサントリー。
この記事では、消費シーン・飲み方・見せ方を再定義することで既存カテゴリーに新客層を呼び込む戦略と、「商品」ではなく「使われ方」を変えることの威力を解説します。
vol.14:なぜ任天堂は、スペック競争を降りることで世界一になれたのか?

▶ vol.14:なぜ任天堂は、スペック競争を降りることで世界一になれたのか?
ソニーやMicrosoftが高性能を競う「赤い海」で戦うのをやめ、任天堂はWiiで全く別の「青い海」を見つけました。
この記事では、ブルーオーシャン戦略の本質——「競争のない市場をどうやって見つけ、創るか」を解説します。「勝てる土俵を自分で作る」という発想の転換がここにあります。
【第6章】価格と「安さ」の再設計——値段がブランドを語る
「安い」は武器にもなれば呪いにもなります。この章では、価格設定がブランドの信頼・ポジション・顧客層をどう決定するかを、対照的な事例から学びます。
vol.8:なぜサイゼリヤは、インフレの時代に300円のドリアを守り抜けるのか?

▶ vol.8:なぜサイゼリヤは、インフレの時代に300円のドリアを守り抜けるのか?
値上げが当たり前の時代に、価格を守ることを「戦略」にするサイゼリヤ。これは企業努力ではなく、設計の話です。
この記事では、徹底的な工程の内製化・標準化・ロスコントロールが可能にする「低価格の持続性」と、価格の約束を守ることがブランドへの絶対的信頼になる理由を解説します。
vol.15:なぜ2,000円の「チープカシオ」は、時計好きに愛されるのか?

▶ vol.15:なぜ2,000円の「チープカシオ」は、時計好きに愛されるのか?
高級時計があふれる市場で、2,000円の腕時計がなぜコレクターに熱狂的に支持されるのか。
この記事では、「機能の引き算」が生む潔さとジョブ理論の視点——顧客が本当に片付けたい「用事(ジョブ)」に完璧に応えることが、価格帯を超えたロイヤルティを生む仕組みを解説します。
【第7章】データとリアル——現代の顧客体験設計の最前線
テクノロジーとリアルな体験が融合する現代、データ活用・コミュニティ設計・ブランドの意外な転換点が新しい競争軸を生んでいます。この章では、現代的な事例から「次の時代のマーケティング」の輪郭を描きます。
vol.12:なぜくら寿司は、満腹の客に「あと1皿」を注文させることに成功したのか?

▶ vol.12:なぜくら寿司は、満腹の客に「あと1皿」を注文させることに成功したのか?
5皿に1回のガチャ——これはただのゲームではなく、可変報酬スケジュールを使った購買継続設計です。
この記事では、ゲーミフィケーションが購買の「次の一手」を引き出す仕組みと、予測不可能な報酬が人間の行動をいかに強力に操作するかを解説します。
vol.13:なぜポカリスエットの「タブーの青」は、夏の代名詞になったのか?

▶ vol.13:なぜポカリスエットの「タブーの青」は、夏の代名詞になったのか?
飲食品には使ってはいけないとされていた「青」を採用したポカリスエット。この「タブー破り」がなぜ成功したのか。
この記事では、常識に反するデザイン選択が強烈な記憶形成とブランド独自性を生む理由と、一貫した色・デザイン戦略がカテゴリーそのものを「所有」する仕組みを解説します。
vol.17:なぜストリーミング全盛時代にアナログレコードが売れ続けるのか

▶ vol.17:なぜストリーミング全盛時代にアナログレコードが売れ続けるのか
手軽さが極限まで進化した時代に、あえて「手間のかかる体験」を選ぶ人が増えています。
この記事では、「不便さ」そのものが価値になる逆説——摩擦が体験の質と愛着を高めるメカニズムを解説します。摩擦を除去することが常に正解ではない、その判断基準がわかります。
vol.18:なぜスタンレーのタンブラーは突如として売上を10倍に伸ばしたのか

▶ vol.18:なぜスタンレーのタンブラーは突如として売上を10倍に伸ばしたのか
100年の歴史を持つアウトドアブランドが、女性のライフスタイルアイテムとして突然爆発的に売れ始めた——この転換には「コミュニティとインフルエンサーの偶然」があります。
この記事では、コミュニティ主導の口コミがいかに市場を再定義するかと、ブランドが「偶然の追い風」を活かして戦略的にピボットする方法を解説します。
vol.19:なぜ一蘭は客を孤独にさせることで最強のブランドを築けたのか

▶ vol.19:なぜ一蘭は客を孤独にさせることで最強のブランドを築けたのか
仕切りで隣を遮断し、店員との会話も最小化し、注文はすべて紙で——この「孤独設計」が、なぜ圧倒的な集中と満足を生むのか。
この記事では、「味集中カウンター」が感覚のノイズを除去することで生まれる没入体験の設計と、「引き算の極致」としての一蘭モデルを解説します。
全20回、お疲れ様でした!
Season4のキーワードは「摩擦の除去」でした。しかし最終的に気づいたことがあるはずです——摩擦を除くことが常に正解ではない、ということを。ブルーボトルの15分待ち、アナログレコードの手間、一蘭の孤独。これらは摩擦を「意図的に残した」事例です。
大切なのは、顧客にとって「余計な仕事」と「意味のある仕事」を見極めること。前者は徹底的に削り、後者は丁寧に残す。この判断こそが、マーケティング設計の真髄です。
「この体験の摩擦は、顧客にとって余計か、それとも意味があるか?」——この問いを持ち続けることが、あなたを一流の設計者にします。
▶ Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで
▶ Season2(全15回)はこちら|PL翻訳術、弱者の戦略、広告評価、インタビュー技術まで
▶ Season3(全20回)はこちら|世界的ブランドの「なぜ」から学ぶ顧客心理・ブランド戦略・価格設計の本質
岡 健作(おか・けんさく)
株式会社新恵社代表取締役/スタディーハッカー(現(株)イングリッシュカンパニー) 創業者。
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
X→@oka_kgs / Instagram→@oka_ken2010
/ 著書(amazon)