KGIとKPIとは? マーケティングの「宝の地図」の作り方【新人さんのためのマーケティング講座 vol.6】

vol.5では、デジタルマーケティングで取得できる様々な指標(Imp、CTR、CVR、CPA、ROAS)と、その数字をどう見て改善につなげるかを学びました。

でも、ここで大事な疑問が出てきます。
「そもそも、何のためにこれらの数字を追いかけているのか?」

数字を見ることが目的になってしまっては意味がありません。
今回vol.6では、「なぜデータを見るのか」「何を目指しているのか」という、マーケティングの根本的な目的を明確にする方法を解説します。

売れる仕組みを作るのがマーケティング

マーケティングの目的は、シンプルに言えば「売れる仕組みを作ること」です。

どんなに素晴らしい商品を作っても、お客様に届かなければ売れません。
どんなに広告を出しても、最終的に売上につながらなければビジネスとして成り立ちません。

だから、マーケティングでは最終的には「売れているか」を見る必要があります

でも、「売上」だけを見ていても、何が良くて何が悪いのかが分かりません。
そこで登場するのが、KGIとKPIという考え方です。

KGIとKPI ゴールと道標

KGI(Key Goal Indicator / 重要目標達成指標)

最終的に達成したいゴール。「何を目指しているのか」を示す数値目標です。


・年間売上1億円達成
・新規顧客100社獲得
・Webサイトからの問い合わせ月50件
・サービス解約率を5%以下に抑える

KPI(Key Performance Indicator / 重要業績評価指標)

KGI達成に向けたプロセスの進捗を測る中間指標。「ゴールに向かって順調に進んでいるか」を確認するための数値です。

例(KGI「Webサイトからの問い合わせ月50件」の場合)
・Webサイトへの月間アクセス数10,000
・問い合わせページへの遷移率5%
・問い合わせフォーム完了率(CVR)10%

宝探しの冒険に例えると分かりやすい

KGIとKPIの関係を、未開の地での宝探しに例えてみましょう。

 
 

宝探しで考えるKGIとKPI

KGI(ゴール)
伝説の宝を見つける

KPI(手がかり・目印)
・古い地図に書かれた目印を発見できたか
・現地の人から有力な情報を得られたか
・選んだルートで前進できているか

でも、整備された登山道とは違います。正解のルートは最初から分かりません

「この道で合っているのか?」と進みながら確認し、行き止まりに気づいたら別の道を選ぶ。
「こっちは違った」という失敗も、地図に書き込める貴重な情報です。

マーケティングは、地図を作りながら進む冒険なんです。
だからこそ、難しくて、面白い。

あなたは今、お宝を探す冒険者です。

なぜKPIに分解するのか

「最終的に売上が上がればいいんだから、売上だけ見ていればいいんじゃないの?」
そう思うかもしれません。

でも、それだと粒度が荒すぎるんです。

粒度が荒いと、改善できない

例えば、「今月の売上目標1,000万円」というKGIがあったとします。
月末に結果を見たら、「800万円でした」となった。

さて、何が問題だったのでしょうか?
これだけでは、何も分かりません。

・そもそもWebサイトへのアクセスが少なかったのか?
・アクセスはあったけど、問い合わせに至らなかったのか?
・問い合わせはあったけど、商談で断られたのか?
・商談はうまくいったけど、単価が低かったのか?

KGIだけを見ていても、どこに問題があるのかが見えないのです。

だから、KGIを達成するまでのプロセスを細かく分解して、それぞれにKPIを設定します。
そうすることで、「どこでつまずいているのか」が明確になり、ピンポイントで改善できるようになります。

KPIツリーで考える

KGIを達成するためのKPIを考えるとき、役立つのが「KPIツリー」という考え方です。

KPIツリーとは、最終目標(KGI)を頂点にして、それを達成するために必要な要素を分解し、ツリー状に整理したものです。

 
 

KPIツリーの例(ECサイトの場合)

KGI:月間売上1,000万円

売上 = 購入者数 × 平均購入単価

では、購入者数を増やすには?

購入者数 = Webサイト訪問者数 × 購入率(CVR)

では、Webサイト訪問者数を増やすには?

Webサイト訪問者数を増やす施策

・SEO対策で自然検索からの流入を増やす
・Web広告のクリック率(CTR)を改善する
・SNSからの流入を増やす

このように分解していくと、「売上1,000万円」という大きなゴールを達成するために、
「何をどれだけ改善すればいいのか」が具体的に見えてきます

適切なKPIを設定するSMART基準

KPIを設定するとき、ただ数字を決めればいいわけではありません。
効果的なKPIにするには、「SMART基準」を意識しましょう。

SMART基準

S(Specific / 具体的)
曖昧ではなく、具体的な数字で表す。「売上を増やす」ではなく「売上を前年比120%にする」

M(Measurable / 測定可能)
数値で測定できるものにする。「顧客満足度を上げる」ではなく「NPS(顧客推奨度)を50にする」

A(Achievable / 達成可能)
現実的に達成可能な目標にする。無理な目標はモチベーションを下げる

R(Relevant / 関連性がある)
KGI達成に本当につながるKPIかどうか。関係ない指標を追いかけても意味がない

T(Time-bound / 期限がある)
「いつまでに達成するか」を明確にする。「3ヶ月後までに」「今四半期中に」

この基準を満たしていない目標は、曖昧で実行しにくく、達成できたかどうかの判断も難しくなります。

vol.5で学んだ指標はKPIだった

ここで、vol.5で学んだ指標を振り返ってみましょう。

Imp(表示回数)、CTR(クリック率)、CVR(コンバージョン率)、CPA(顧客獲得単価)、ROAS(広告費用対効果)。
これらは全て、KGI達成のためのKPIだったんです。

 
 

Web広告の場合

KGI
Web広告経由で月50件の新規問い合わせ獲得

KPI
・Imp(どれだけ表示されたか)
・CTR(何%の人がクリックしたか)
・CVR(何%の人が問い合わせしたか)
・CPA(1件の問い合わせ獲得にいくらかかったか)

KGIである「月50件の問い合わせ」を達成するために、これらのKPIを日々チェックし、改善していくわけです。

CTRが低ければ広告クリエイティブを改善し、CVRが低ければランディングページを見直す。
CPAが高すぎれば、予算配分を変えたり、ターゲティングを調整する。

「何のためにその数字を見ているのか」が明確だからこそ、改善の方向性が見えるのです。

KPIだけ追いかける罠

ここで注意が必要なのは、KPIを追いかけることが目的になってしまうことです。

よくある失敗例
KPI「Webサイトへの月間アクセス数10,000」を達成するために、広告費を大量に投入。
結果、アクセス数は達成したが、質の低い訪問者ばかりで問い合わせには全くつながらなかった。

KGIである「問い合わせ件数」は全く増えていないのに、KPIだけ達成して満足してしまった。

KPIは、あくまでKGI達成のための手段です。
KPIを達成しても、KGIが達成できなければ意味がありません。

だから、定期的に「このKPIは、本当にKGI達成につながっているのか?」を見直す必要があります。

PDCAサイクルで継続的に改善

KGIとKPIを設定したら、あとはPDCAサイクルを回して継続的に改善していきます。

PDCAサイクル

Plan(計画)
KGIとKPIを設定し、施策を計画する

Do(実行)
計画に沿って施策を実行する

Check(評価)
KPIの数値をチェックし、KGI達成に向かっているか確認する

Act(改善)
問題があれば原因を分析し、施策を改善する。そして再びPlanへ

このサイクルを素早く、何度も回すことで、少しずつ精度が上がっていきます。

最初から完璧なKGI・KPIを設定できる人はいません。
実際にやってみて、数字を見ながら「このKPIは意味があったな」「こっちのKPIは見る必要なかったな」と学んでいくものです。

***

デジタルマーケティングでデータが取れることは大きな利点です。
でも、データを取ること自体が目的ではありません。

最終的には、売れなければ意味がない。
だから、まず「何を達成したいのか(KGI)」を明確にして、
それを達成するために「どの数字を見るべきか(KPI)」を決めましょう。

そうすることで、vol.5で学んだ様々な指標が、ただの数字ではなく、
「ゴールに向かうための道標」として意味を持つようになります。

目的を見失わず、データを武器に、売れる仕組みを作っていきましょう!

【新人さんのためのマーケティング講座全記事はこちら】
vol.1:マーケティング部ってなにするところ?
vol.2:「顧客獲得の仕組み」をつくるって何をすること?
vol.3:考える武器 "フレームワーク" を手に入れよう。
vol.4:Webマーケティングってなにをすること? 具体的手法を整理しよう
vol.5:CTRとかCVRとかって何のこと? 数字をどう読み、どう動けばいい?
vol.6:KGIとKPIとは? マーケティングの「宝の地図」の作り方
vol.7:マーケティングファネルがわかればもう迷わない。恋愛に学ぶ「ファネル」の話
vol.8:Web広告って、結局どれがいいの? 目的別Web広告の選び方
vol.9:CPAが効果検証の要! できるだけお金をかけずにお客様に振り向いてもらおう
vol.10:マーケ用語を覚えておこう|広告の種類と基本用語編
vol.11:マーケ用語を覚えておこう|効果測定の指標用語
vol.12:マーケ用語を覚えておこう|SEO/SEM関連用語編
vol.13:マーケ用語を覚えておこう|アクセス解析用語編
vol.14:マーケ用語を覚えておこう|総合テスト編

【ライタープロフィール】
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