
vol.6では、KGIとKPIという考え方を学びました。
最終的なゴール(KGI)を達成するために、どんな中間指標(KPI)を追いかけるべきかを明確にする。これがマーケティングの基本でしたね。
でも、ここでもう一歩踏み込んで考えてみましょう。
KPIで見ている施策には、当然「目的」があります。
その施策を通じて、お客様やお客様にしたい人たちに「どんなアプローチをして、どういう行動を起こさせたいのか」を考える必要があるんです。
今回vol.7では、起こして欲しい行動や状態を整理するのに便利な「マーケティングファネル」という考え方を解説します。
- お客様は集団であり、個別でもある
- マーケティングファネルとは? 漏斗で顧客の流れを捉える
- パーチェスファネル 購買までの4つの段階
- なぜマーケティングファネルで考えると良いのか
- 各段階で打つべき施策は違う
- インフルエンスファネル 購買後の行動
- マーケティングファネルを使って施策を整理しよう
お客様は集団であり、個別でもある
ここで大事なことがあります。
お客様は一人ではなく、集団です。
でも、その集団の中には、商品に対して様々な段階にいる人がいます。
段階によって起こしたい行動が異なるから、誰へのメッセージなのかを考えて施策を打つ必要があるんです。
ちょっと俗っぽいですが、分かりやすい例で考えてみましょう。
クラスの気になる人とお付き合いしたいという場面を想像してください。
相手の状態によって、やることが違う
あなたのことを知らない人
→ まず存在を知ってもらう(共通の友達と話す、SNSで目に留まるなど)
知ってるけど興味がない人
→ 「この人面白いかも」と思ってもらう(趣味の話、面白いエピソード)
彼氏・彼女候補には入ってる人
→ 「やっぱりこの人がいい」と思ってもらう(デート、他の人にはない魅力を見せる)
最後の一押しが欲しい人
→ 告白する
やること、全然違いますよね。
知らない人にいきなり告白しても引かれるだけ。
すでに好意を持ってくれている人に、今さら「私の名前覚えてね」と言っても意味がない。
相手がどの段階にいるかによって、適切なアプローチは変わる。
これは、マーケティングでも全く同じなんです。

マーケティングファネルとは? 漏斗で顧客の流れを捉える
ファネル(funnel)とは、英語で「漏斗(ろうと)、じょうご」のこと。
マーケティングファネルとは、顧客が商品を知ってから購入するまでの過程を、漏斗のような形で表現したフレームワークです。
なぜ漏斗の形なのか?
最初に商品を知る人は多いけれど、そこから興味を持つ人、比較検討する人、実際に購入する人は、どんどん少なくなっていきます。
この「段階が進むにつれて人数が減っていく」様子が、上が広くて下が狭い漏斗の形に似ているから、マーケティングファネルと呼ばれるんです。
マーケティングファネルにはいくつか種類がありますが、最も基本的なのが「パーチェスファネル」です。
パーチェスファネル 購買までの4つの段階
パーチェスファネル(Purchase Funnel)は、購買行動に焦点を当てたファネルです。
パーチェス=購買という意味で、お客様が商品を購入するまでのプロセスを段階的に捉えます。
一般的には、認知→興味・関心→比較・検討→購買の4つの段階に分けて考えます。
1. 認知(Awareness)
顧客の状態
商品やサービスを知らない、あるいは知っているけど興味がない段階。
必要なアプローチ
まずは「知ってもらう」ことが目的。マス広告、交通広告、ディスプレイ広告、動画広告、プレスリリースなどで、商品の存在を広く伝える。
2. 興味・関心(Interest)
顧客の状態
商品に関心を持ち始め、「もっと知りたい」と情報収集を始めている段階。
必要なアプローチ
商品の魅力を具体的に伝える。ブログ記事、メルマガ、SNS発信、SEO(情報記事など)、ディスプレイ広告などで、「これいいかも」と思ってもらう。
3. 比較・検討(Consideration)
顧客の状態
他社製品と比較したり、本当に買うべきか検討している段階。
必要なアプローチ
「うちを選ぶべき理由」を示す。
SEO(比較記事など)、お客様の声、無料トライアル、リスティング広告(比較KWなど)などで、最後の一押しをする。
4. 購買(Purchase / Conversion)
顧客の状態
購入を決めて、実際に行動を起こす段階。
必要なアプローチ
スムーズに購入できる環境を整える。SEO/リスティング(指名系)、購入忘れリマインド、限定オファー、購入サポート、LP改善などで、離脱を防ぐ。
なぜマーケティングファネルで考えると良いのか
マーケティングファネルを意識することの最大のメリットは、「手段の目的化」を防げることです。
手段の目的化とは?
よくある失敗例
「SNSのフォロワーを増やす」という施策を頑張っている。
フォロワーは順調に増えているけど、全然売上につながらない。
なぜ? → フォロワーを増やすことが目的になってしまい、「何のためにフォロワーを増やすのか」が曖昧になっていたから。
マーケティングファネルで考えると、こう整理できます。
ファネルで考えた場合
施策: SNSでフォロワーを増やす
ファネルの位置: 「認知」段階
目的: 商品を知らない人に知ってもらう
次に必要なこと: フォロワーに「興味・関心」を持ってもらう施策(製品紹介記事、使い方動画など)
認知だけで終わらせず、次の段階に進めることが重要だと分かる!
「これって何のためにやってるのか」がずれなくなるんです。
各段階で打つべき施策は違う
ファネルの段階ごとに、お客様の状態が違うので、適切なアプローチも変わります。
Web広告の例
認知段階
→ ディスプレイ広告、SNS広告で幅広くリーチ
→ 「こんな商品があるんだ!」と知ってもらう
興味・関心段階
→ 一度サイトに来た人にリターゲティング広告
→ 「もっと詳しく知りたい」と思ってもらう
比較・検討段階
→ 比較キーワードでリスティング広告(「○○ 比較」など)
→ 「やっぱりこれがいい」と決断してもらう
購買段階
→ 指名検索での広告出稿、購入忘れリマインド
→ スムーズに購入完了してもらう
このように、どの段階のお客様にアプローチしているのかを意識すると、施策の内容や訴求メッセージも自然と変わってきます。
インフルエンスファネル 購買後の行動
実は、マーケティングファネルは購買で終わりではありません。
購入した後の行動を表す「インフルエンスファネル」という考え方もあります。
購入したお客様が「継続」して使ってくれて、さらに友人に「紹介」したり、SNSで「発信」してくれたりする。
この流れが、新たな「認知」を生み出し、次のお客様につながっていきます。
インフルエンスファネルは、パーチェスファネルとは方向が逆になります。
一人のお客様の満足が、多くの人に影響(インフルエンス)を与えて広がっていくイメージです。
だから、購買後のフォローも重要
せっかく買ってもらったのに、そこで終わりにしてはもったいない。
使い方のフォローメール、アフターサービス、ポイント制度などで継続利用を促し、「紹介したくなる体験」を作ることが、次のお客様獲得につながります。
マーケティングファネルを使って施策を整理しよう
マーケティングファネルは、難しい理論ではありません。
「お客様は今どの段階にいて、次にどんな行動を起こして欲しいのか」を整理するための、シンプルなフレームワークです。
では、具体的に各段階でどんな施策を行えばいいのでしょうか?
施策を考えるときのチェックリスト
施策を考えるときは、こう自問してみてください。
✓ この施策は、ファネルのどの段階を狙っているのか?
✓ その段階のお客様に、どんな行動を起こして欲しいのか?
✓ その行動を起こしてもらうために、何を伝えるべきか?
✓ 次の段階に進んでもらうための施策は用意できているか?
この質問に答えられれば、「何のためにこれをやっているのか」が明確になります。
***
vol.6で学んだKGIとKPIは、「何を目指すか」「進捗をどう測るか」を明確にしました。
そして今回のマーケティングファネルは、「お客様にどう動いてもらうか」を整理するための考え方です。
KPI・ファネル・施策、この3つがつながって初めて、マーケティングは機能します。
「これって何のためにやってるんだっけ?」
そう感じたら、マーケティングファネルに立ち返ってみてください。
きっと、進むべき方向が見えてくるはずです。
お客様の段階を見極めて、適切なアプローチを届けていきましょう!
【新人さんのためのマーケティング講座全記事はこちら】
vol.1:マーケティング部ってなにするところ?
vol.2:「顧客獲得の仕組み」をつくるって何をすること?
vol.3:考える武器 "フレームワーク" を手に入れよう。
vol.4:Webマーケティングってなにをすること? 具体的手法を整理しよう
vol.5:CTRとかCVRとかって何のこと? 数字をどう読み、どう動けばいい?
vol.6:KGIとKPIとは? マーケティングの「宝の地図」の作り方
vol.7:マーケティングファネルがわかればもう迷わない。恋愛に学ぶ「ファネル」の話
vol.8:Web広告って、結局どれがいいの? 目的別Web広告の選び方
vol.9:CPAが効果検証の要! できるだけお金をかけずにお客様に振り向いてもらおう
vol.10:マーケ用語を覚えておこう|広告の種類と基本用語編
vol.11:マーケ用語を覚えておこう|効果測定の指標用語
vol.12:マーケ用語を覚えておこう|SEO/SEM関連用語編
vol.13:マーケ用語を覚えておこう|アクセス解析用語編
vol.14:マーケ用語を覚えておこう|総合テスト編
STUDY HACKER 編集部
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