vol.7でマーケティングファネルを学び、vol.8でWeb広告の種類と選び方を学びました。
今回vol.9のテーマはWeb広告の効果測定と改善です。
広告を出したら、必ず結果を測定して改善していく必要があります。
「出して終わり」では、お金を無駄にしているのと同じです。
でも、広告の管理画面を開くと、たくさんの数字が並んでいて、何を見ればいいのかわからなくなりますよね。
「インプレッション」「クリック率」「コンバージョン」「CPA」「ROAS」……。
少々乱暴かもしれませんが、最も重要な数字は「CPA」です。顧客獲得単価でしたね。お客様を一人獲得するのに、いくら費用がかかったかを示します。CPAを正しく把握しておくことは、データ分析の大前提といってもいいでしょう。
そして、このCPAを下げるために見るべき数字は限られています。
この2つの数字を理解して、改善していけば、Web広告の効果は確実に上がります。
この記事では、初心者でも実践できる「測定と改善の手順」を、具体的に解説していきます。
- Web広告は「出して終わり」じゃない
- 見るべき数字は3つだけ
- 改善の手順は「見る→探す→直す」
- CPCが高い場合の対策
- CVRが低い場合の対策
- よくある失敗パターン
- 【補足】CPAの計算式は使い分けよう
Web広告は「出して終わり」じゃない
Web広告の最大の強みは、すぐに結果が数字で見えることです。
テレビCMや新聞広告は、「何人が見たか」「何人が行動したか」を正確に測るのが難しい。
でもWeb広告なら、すべてが数字で記録されます。
だからこそ、測定して改善することが前提なんです。
vol.7で学んだマーケティングファネル、vol.8で学んだ広告の選び方。
それらを実行した後、必ずやるべきことが「効果測定と改善」です。
Web広告の流れ
① ターゲットを決める(ファネルで考える)
② 広告を選んで出す(適切な広告媒体を選ぶ)
③ 結果を測定する ← 今回ここ
④ 改善する ← 今回ここ
⑤ ②に戻る
この繰り返しで、広告の効果は上がっていきます。

見るべき数字は3つだけ
Web広告の管理画面には、たくさんの数字が表示されます。
でも、最初に見るべき数字は3つです。
まず見るべき3つの数字
① CPA(Cost Per Action / 獲得単価)
1件のコンバージョン(購入、申し込み、問い合わせなど)を獲得するのにかかった費用
② CPC(Cost Per Click / クリック単価)
1回のクリックにかかった費用
③ CVR(Conversion Rate / コンバージョン率)
クリックした人のうち、何%がコンバージョンしたか
なぜこの3つなのか?
CPAは、以下の計算式で表せます。
CPA = CPC ÷ CVR
(例:CPC100円、CVR1%なら、CPA10,000円)
つまり、CPAを下げる方法は2つしかないんです。
• CPCを下げる(クリック単価を安くする)
• CVRを上げる(クリックした人の購入率を高める)
だから、この3つの数字を見れば、どこに問題があるかが分かります。
改善の手順は「見る→探す→直す」
数字を見ても、「で、どうすればいいの?」となりますよね。
改善は、この3ステップで進めます。
ステップ1 どの数字が悪いか見る
業界平均と比べて、CPC・CVRのどちらが悪いかを確認します。
ステップ2 なぜ悪いのか原因を探す
その数字が悪い理由を考えます。広告文? LP? キーワード?
ステップ3 原因に合った対策を実行する
原因が分かったら、それを直す対策を実行します。
ステップ1 どの数字が悪いか見る
まず、自社の数字と業界平均を比べます。
比較の例
| 自社 | 業界平均 | |
|---|---|---|
| CPC | 300円 | 310円 |
| CVR | 0.2% | 1% |
→ この場合、CPCは平均並み。CVRに問題があると分かります。
業界平均の調べ方
• Googleのキーワードプランナーで調べる
• 媒体社に競合比較レポートを依頼する
• 業界レポートやホワイトペーパーを探す
• 社内の過去データを参照する
ステップ2 なぜ悪いのか原因を探す
数字が悪い理由は、いくつか考えられます。
CPCが高い原因
• 広告やLPの品質が低い
• 競合が多いキーワードで入札している
• 入札価格に上限を設けていない
CVRが低い原因
• コンバージョンにつながらないキーワードで出稿している
• 広告文とLPの内容がずれている
• LPが分かりにくい、魅力がない
• フォームが入力しづらい
ステップ3 原因に合った対策を実行する
原因が分かったら、対策を実行します。
以下で、具体的な対策を見ていきましょう。

CPCが高い場合の対策
対策1 広告とLPの品質を上げる
なぜ効果があるのか?
Google広告では、「入札単価 × 品質 = 広告ランク」で順位が決まります。品質が高ければ、低い入札単価でも上位表示できます。
具体的にやること
① 広告の推定クリック率を上げる
検索ユーザーが求めているものにマッチした広告文を書く。興味を引く文言を入れる。
② 広告の関連性を高める
検索キーワードと広告文の内容を一致させる。例 「表参道 美容院」で検索したら「表参道の美容院」という広告文を表示。
③ LPの利便性を高める
• 広告文を見たユーザーが期待する内容をLPに載せる
• 表示速度を速くする
• 導線を分かりやすくする
※Google広告の「品質スコア」から、これらの評価を確認できます。
対策2 競合が少ないキーワードを狙う
なぜ効果があるのか?
競合が多いキーワードは、入札競争が激しくCPCが高くなります。競合が少ないキーワードなら、安いCPCで出稿できます。
具体的にやること
ロングテールキーワード(3語〜4語の組み合わせ)を設定する。
例
• 「自転車 通販」→ 競合多い、CPC高い
• 「自転車 通販 ブリヂストン」→ 競合少ない、CPC安い
注意点
ロングテールキーワードは検索数が少ないため、コンバージョン数も少なくなります。バランスを見ながら設定しましょう。
対策3 上限CPCを設定する
なぜ効果があるのか?
自動入札を使っていると、想定以上に高いCPCで入札されることがあります。上限を設定することで、CPCの高騰を防げます。
具体的にやること
ポートフォリオ入札戦略で、「上限CPC」を設定する。例 「CPCが500円以上の場合は入札しない」と設定。
CVRが低い場合の対策
対策1 キーワード・広告文・LPの一貫性を確認する
なぜ効果があるのか?
キーワード・広告文・LPの内容がバラバラだと、ユーザーは「期待と違う」と感じて離脱します。3つを一致させることで、CVRが上がります。
具体的にやること
チェックポイント
① 検索キーワードで検索する人は、何を求めているか?
② 広告文は、その期待に応えているか?
③ LPは、広告文の内容を提供しているか?
例
• キーワード 「競合分析ツール」
• 広告文 「無料お試し可能! 30秒で競合分析」
• LP 無料お試しボタンを目立つ位置に配置、30秒でできることを説明
→ この3つが一致していれば、CVRは上がります。
対策2 LPを改善する(LPO)
なぜ効果があるのか?
LPが分かりにくい、魅力がない、使いにくいと、ユーザーは離脱します。LPを改善することで、CVRが上がります。
具体的にやること
• ファーストビュー(最初に見える部分)で興味を引く
• 商品やサービスのメリットを分かりやすく伝える
• 申し込みボタンを目立たせる
• お客様の声や実績を載せて信頼感を高める
• スマホでも見やすいデザインにする
※ヒートマップツールを使うと、ユーザーがどこで離脱しているかが分かります。
対策3 フォームを改善する(EFO)
なぜ効果があるのか?
フォームが入力しづらいと、入力途中で離脱されます。フォームを改善することで、CVRが上がります。
具体的にやること
• 入力項目を減らす(本当に必要な項目だけ残す)
• 郵便番号から住所を自動入力できるようにする
• エラーメッセージを分かりやすくする
• 入力例を表示する
• スマホで入力しやすいデザインにする
※フォームでの離脱率が80%以上なら、LPより先にフォーム改善を優先しましょう。
よくある失敗パターン
最後に、Web広告の効果測定と改善でよくある失敗を3つ紹介します。
これを知っておけば、無駄な時間とお金を使わずに済みます。
失敗1 CPAだけを見て、全体を見ない
CPAが低ければいい、と思っていませんか?
実は、CPAが低くても利益が少ないケースがあります。
例
| キャンペーンA | キャンペーンB | |
|---|---|---|
| CPA | 1,000円 | 1,500円 |
| CV数 | 300件 | 500件 |
| 売上 | 300万円 | 500万円 |
| 利益 | 45万円 | 50万円 |
→ CPAはAの方が低いけど、利益はBの方が多いんです。
正しい見方
CPAだけでなく、「売上」「利益」「コンバージョン数」も一緒に見ましょう。
失敗2 目標CPAの設定がそもそも間違っている
「なんとなく」でCPAの目標を決めていませんか?
目標CPAは、利益から逆算して決める必要があります。
正しい目標CPAの決め方
① 商品単価から原価・人件費などを引いて、利益を計算
② その利益の中で、広告費にいくら使えるかを決める
③ それが目標CPA
例
• 商品単価 10万円
• 利益率 60%(利益6万円)
• 広告費に使える割合 40%
→ 目標CPA = 6万円 × 40% = 2.4万円
この計算をせずに「CPAは5,000円以内!」と決めても、達成できないか、達成しても利益が出ません。
失敗3 改善の優先順位を間違える
広告文もLPもフォームも、全部同時に直そうとしていませんか?
効果が大きいものから順番に直すのが正解です。
優先順位の決め方
① データを見て、離脱が一番多い場所を見つける
② そこから直す
③ 改善効果を測定する
④ 次に離脱が多い場所を直す
例
• LP訪問者 1,000人
• フォーム到達 200人(離脱率80%! )
• コンバージョン 100人(離脱率50%)
→ この場合、LPの改善を最優先すべきです。
何でもかんでも同時に直そうとすると、効果が分からなくなります。
1つずつ、効果の大きいものから直しましょう。
【補足】CPAの計算式は使い分けよう
ここまでCPA = CPC ÷ CVR という式を使って説明してきましたが、実はCPAの計算方法には2つあります。
① シンプルな計算(日常的に使う)
CPA = 広告費用 ÷ CV数
例:広告費用100万円、CV数50件 → CPA 2万円
日々のCPAの推移を見るときはこちら。計算が早くて便利です。
② 分析用の計算(改善するときに使う)
CPA = CPC ÷ CVR
例:CPC 200円、CVR 1% → CPA 2万円
CPAが高い原因を探すときはこちら。CPCとCVRのどちらに問題があるかが分かります。
使い分けのコツ
- 毎日のモニタリング → ①のシンプルな計算
- CPAが目標より高くなった → ②で原因分析
この記事では改善方法を解説しているので、②の計算式を中心に説明しました。
でも実務では、①の方が圧倒的によく使います。状況に応じて使い分けましょう!
***
Web広告は、測定と改善の繰り返しです。
「これをやれば必ず成功する」という方法はありません。
でも、「見る→探す→直す」の手順を繰り返せば、確実に効果は上がっていきます。
改善のポイントまとめ
✓ 見るべき数字は「CPA」「CPC」「CVR」の3つ
✓ 業界平均と比べて、どの数字が悪いか確認
✓ 原因を探して、効果が大きいものから直す
✓ CPAだけでなく、売上・利益も見る
✓ 目標CPAは利益から逆算して決める
✓ 1つずつ改善して、効果を測定する
【新人さんのためのマーケティング講座全記事はこちら】
vol.1:マーケティング部ってなにするところ?
vol.2:「顧客獲得の仕組み」をつくるって何をすること?
vol.3:考える武器 "フレームワーク" を手に入れよう。
vol.4:Webマーケティングってなにをすること? 具体的手法を整理しよう
vol.5:CTRとかCVRとかって何のこと? 数字をどう読み、どう動けばいい?
vol.6:KGIとKPIとは? マーケティングの「宝の地図」の作り方
vol.7:マーケティングファネルがわかればもう迷わない。恋愛に学ぶ「ファネル」の話
vol.8:Web広告って、結局どれがいいの? 目的別Web広告の選び方
vol.9:CPAが効果検証の要! できるだけお金をかけずにお客様に振り向いてもらおう
vol.10:マーケ用語を覚えておこう|広告の種類と基本用語編
vol.11:マーケ用語を覚えておこう|効果測定の指標用語
vol.12:マーケ用語を覚えておこう|SEO/SEM関連用語編
vol.13:マーケ用語を覚えておこう|アクセス解析用語編
vol.14:マーケ用語を覚えておこう|総合テスト編
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。