「今年の目標は、いつまで続きましたか?」
そう問われて、少し考え込んでしまった方も多いのではないでしょうか。
「今年こそは英語を習得する!」「毎日運動を継続する!」「資格試験に合格する!」
新年を迎えるたび、私たちは意欲に満ちた目標を掲げます。年始に立てた新年の抱負は、どれも自分の成長につながる素晴らしいものばかり。
でも、気がつけば3月。「最近、英語の勉強から遠ざかってるな……」「ジムにも全然行けてないし……」。当初の熱意は徐々に薄れ、12月には「今年も結局、目標は達成できなかった」とため息をつく——そんな経験、誰にでもあるのではないでしょうか。
じつは、この「新年の抱負が続かない」という悩みには、ある共通のパターンが隠されています。それは、最初の「目標設定」と「計画づくり」の段階でのちょっとした落とし穴の存在。
本記事では、多くのビジネスパーソンが陥りがちな3つの落とし穴と、それを回避するための対策をご紹介します。
落とし穴1:「理想通りにできるはず」という誤算
新年の計画を立てるとき、私たちはついつい理想的な未来像ばかりを描いてしまいます。毎朝6時に起きてジョギング、夜は決まった時間に筋トレ、週末は体組成計で進捗チェック——たしかに、このような健康習慣への意気込みは素晴らしいものです。
でも、ちょっと立ち止まって考えてみましょう。この計画、何か見落としているものはないでしょうか。
現実の「あるある」が計画を揺るがす
人生には予期せぬ出来事がつきものです。
急な締め切りで残業が続いたり、子どもが熱を出して病院へ行ったり、実家の両親の具合が悪くなったり、自分も体調を崩したり。完璧な計画は、このような小さな「イレギュラー」が重なった途端に綻び始めます。
そして、一度計画が崩れると「もう今年はダメだ」と投げ出してしまい、せっかくの新年の抱負も霧散してしまうのです。
「Plan B」で乗り越える
では、どうすればよいのでしょうか?ポイントは、最初から「イレギュラー」を計画に組み込んでおくことです。
たとえば、朝のジョギングができない日は通勤途中の駅をひとつ手前で降りて歩く、残業で疲れた日は5分でもいいからストレッチをする、体組成計での記録ができなくても体重だけは測るなど、状況に応じた代替案を用意しておくのです。
さらに重要なのが、余裕を持った目標設定。
週7日ではなく週5日を目標にする、毎月最終週は「リカバリー週間」として設定するなど、「完璧」ではなく「継続」を重視した設計にすることで、心理的なプレッシャーを軽減できます。
このように、最初から「Plan B」を組み込んだ柔軟な計画であれば、多少の予定変更があっても「まあ、これもありだよね」と軌道修修正できます。
ただし、計画の柔軟性を確保できたとしても、もうひとつ見落としがちな要素があります。それが次の「秘密主義」という落とし穴です。
落とし穴2:「誰にも言わずに頑張れる」という誤算
「資格の勉強は黙々と進めて、合格してからまわりを驚かせよう」
こんな決意を抱いたことはありませんか? たしかに、SNSで安易に目標宣言をして終わってしまうのは望ましくありません。しかし、その反動で完全な秘密主義に走ることも、じつは大きな落とし穴となるのです。
なぜ「黙々と頑張る」が裏目に出るのか
2月のある平日の夜。残業を終えて帰宅したあなたは、疲れた表情で資格の教材を見つめています。
「毎日1時間は勉強する」という目標を立ててから1か月。最初の2週間は順調でしたが、最近は「今日は疲れているから」と後回しにする日が増えてきました。
しかし、誰にも目標を話していないあなたのまわりからは、励ましの言葉も、アドバイスも届きません。「まあ、誰も知らないんだし、今日はもういいか……」。そんな言い訳が、日に日に力を増していきます。
これは、多くの人が経験する「孤独な戦い」の典型的なパターンです。外部からの刺激や励ましがないため、モチベーションは徐々に低下していきます。
また、同じ資格を目指す仲間との出会いもないため、効果的な学習方法や時間管理のコツを学ぶ機会も失われてしまいがちです。
「適度な公開」で継続力を高める
では、どうすればよいのでしょうか。鍵となるのは、目標の「適度な公開」です。
まずは、信頼できる同僚や友人に目標を話してみましょう。「じつは今年から資格試験の勉強を始めたんだ」という何気ない会話から、思わぬサポートが得られることがあります。「私も同じ資格を取ろうと思ってたんだ」「この問題集がおすすめだよ」といった具合に、具体的なアドバイスをもらえるかもしれません。
さらに、資格試験の勉強会やオンラインコミュニティに参加するのも効果的です。そこでの交流は、「自分だけじゃない」という安心感を与えてくれるだけでなく、継続のための具体的なヒントも得られます。月1回の勉強会で進捗を報告する、コミュニティで週の学習時間を共有するなど、小さな約束事が、確実な継続の力となっていきます。
このように、適切なサポート環境を整えることは、新年の目標達成における重要な戦略なのです。ただし、まわりの支援を得られたとしても、もうひとつ克服すべき課題が残っています。それが「時間とエネルギーの管理」という次の落とし穴です。
落とし穴3:「足し算だけ」の目標設定が招く破綻
「英語の勉強を始めよう。オンライン英会話も始めたいし、英語の動画も毎日見て、英単語も1日50個は覚えよう。それから、リスニング教材も……」
新年を前に、私たちは次々と新しい目標を追加していきます。その一方で、既存の生活習慣やスケジュールについては、あまり考えを巡らせません。しかし、すでにフル回転の日常に、新しい習慣を「足し算」し続けることは、やがて大きなひずみを生むことになります。
新習慣と既存生活の板挟みで疲弊する日々
なぜこれが問題なのでしょうか。答えは単純です——それは、人間のリソースには限りがあるから。
1日は24時間、集中力も体力も限られています。新しいことを始めるなら、そのぶんだけ何かを減らす必要がある。この当たり前の事実に、私たちは意外なほど無自覚なのです。
たとえば、夜9時から英語学習を始めようと決意したとき、私たちは「その時間に何をしていたか」を振り返っているでしょうか。スマートフォンでSNSをチェックしたり、動画を観たりする時間。メールやニュースに没頭する時間。これらを合計すると、意外なほど大きな時間になっているはずです。
仕事面でも同様です。慣例化した会議、形骸化した報告書、必要性の薄れた定例作業。「これって本当に必要?」と一度立ち止まって考えることで、意外な時間の余裕が生まれるかもしれません。
じつは多くの場合、何かを「やめる」ことで、より本質的な活動に集中できるようになるのです。
「引き算」から始める新習慣
では、具体的にどう行動すればよいのでしょうか。
まず、新しい英語学習を始める前に、スマートフォンの通知設定を見直してみましょう。特定のアプリの使用時間を制限したり、夜間の通知をオフにしたり。小さな調整から始めることで、新しい習慣のための時間を確保できます。
次に、エネルギー配分を考えましょう。「24時間戦えますか?」というCMがありましたが、実際には誰もが充電時間を必要とします。
脳科学的に見ても、人間の集中力と記憶力は休息なしには維持できません。週末の一部を意識的に「オフ」の時間に設定する、夜の時間帯は新しい学習を入れずリラックスの時間として確保する。このような余裕を持った設計があってこそ、新しい習慣は持続可能なものとなります。
新年の目標を立てるとき、私たちはついつい「何を始めるか」ばかりに目を向けがちです。しかし、限られたリソースの中で新しい習慣を根付かせるには、「何を減らすか」という視点が不可欠です。
「やりたいこと」と「できること」のギャップを埋めるには、「減らすこと」こそが最も確実な一手となるのです。
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新年の目標達成に向けて重要なのは、理想論ではなく「続けられる仕組み」をつくることです。イレギュラーへの備え、信頼できる仲間との共有、そして「引き算」の意識。これらの要素を組み込んだ計画であれば、きっと来年の今頃、目標達成の喜びを実感できているはずです。
まずは小さな一歩から。あなたの新年が、着実な成長の1年となることを願っています。
STUDY HACKER 編集部
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