帰宅後、気づけばスマホで1時間。勉強法ライターの夜を変えた「自分に効いた」3つのアイデア

ソファで考え込む女性

仕事から帰ってソファに座った瞬間、スマホを手に取っていた……気づけば1時間。「今日こそ勉強しよう」と思っていたのに。

正直に言うと、これは最近の筆者自身の夜です。忙しい日が続くうちに、気づけばこんな夜が増えていました。

普通なら「意志が弱いんだろうな」と落ち込むところですが、筆者は勉強法の記事を日々つくっている身。こうなってしまう科学的な理由も、対処のテクニックも、仕事柄いくつも知っています。

この知識を、改めて自分に使ってみよう。そう思って、いろいろと試してみました。

今回は、記事づくりで出会った手法のなかから、筆者がやってみて効果を感じた、疲れていてもスマホに逃げず勉強に向き合えるアイデアをご紹介します。

「頑張れない」には、ちゃんと理由がある

筆者と同じように、疲れた夜の勉強がうまくいかず、「またダメだった」とがっかりしている人は少なくないはずです。

ですが、これには科学的な理由があります。

 

その正体は、脳からの「休め」という指令だった!

1. じつは、心のエネルギーが空っぽになっている

自制心を使うたびに、心のエネルギーは少しずつ減っていく。心理学にはそんな理論があります。「自我消耗(ego depletion)」と呼ばれるもので、ニューヨーク州立大学オールバニ校のミューレイヴンらが提唱しました。*1

仕事中の決断やガマンの連続で、帰る頃にはこのエネルギーがほぼ空っぽになってしまうのです。

2. じつは、脳が物理的に疲れている

認知的に負荷の高い作業を続けると、思考や自制心を担う前頭前野に疲労物質(グルタミン酸)が蓄積することが、パリ脳科学研究所のヴィーラーらの研究で確認されています。*2

疲労物質が溜まると、脳が「もう無理はさせない」と判断し、楽な選択(スマホなど)へ自動的に誘導すると考えられているのです。

つまり、「帰宅後は勉強しよう」がうまくいかないのは、脳から見れば、ごく自然な保護反応だったわけです。

それなら、意志力で無理やり勉強するのではなく、脳の負担そのものを減らしてしまえばいいのでは? そう考えて、筆者は次の3つのアイデアを試してみました。

開いた白紙のノート

疲れた脳でも動ける3つのアイデア

1. 電車内で「脳のゴミ」をメモに吐き出す

疲れた脳を軽くするアイデアといえば、STUDY HACKERでもおなじみの「脳のなかを書き出す」こと。

筆者は、帰宅中の電車内でスマートフォンのメモアプリを開き、頭に浮かんだことをそのまま書き出してみました。

筆者が帰宅中の電車内で頭に浮かんだことを書き出したメモアプリの画面

整理する必要はなく、あくまで「脳のゴミ出し」として行ないます。筆者のように、愚痴の書き出しになってしまってもOKです。

なぜ効くのか

これは「ブレインダンプ」と呼ばれる手法です。頭のなかにあることを紙やスマホに書き出すと、脳は「もう覚えておかなくていい」と判断し、作業スペース(ワーキングメモリ)に空きができます。

心理学ではこうした働きを「認知的オフローディング」と呼び、書き出すという動作そのものが脳の負担を軽くすることがわかっています。*3

実際にやってみると、電車から降りたあと、疲れからくる特有のもやもや感が一掃され、いつもより頭がスッキリしていることに気づきました。

ただ、忙しさやストレスが特に強い日は、効果を感じにくいこともありました。

整理された白いデスク

2. 布をサッとかけるだけ。視界をクリアにして脳を疲れさせない

忙しくて、部屋もグチャグチャ。勉強しようとしても散らかっている物が目に入り、気が散る……なんて経験はありませんか?

ゴチャゴチャした視界は脳を疲れさせる原因になりますが、疲れているのに勉強前に部屋を片づけるなんて無理ですよね。

そこで筆者は、勉強スペース付近に散らかっているものに、バスタオルや布をファサッとかけてみました。ものが見えなくなれば、脳は片づいた部屋にいるのと同じように感じるという話を思い出したからです。

なぜ効くのか

疲弊した脳は、視界に入るすべての情報を無意識に処理しようとします。そのため、部屋が散らかっているだけで、気づかないうちに消耗が進んでいくのです。

目に入るものが多ければ多いほど、脳のなかではそれぞれの情報が互いの処理を邪魔し合い、注意力を奪い合ってしまうことが、プリンストン大学のマクメインズらの研究で示されています。*4

目隠しをするだけで、脳の無駄なメモリ消費をその場でピタッと止められるのです。

試してみると、視界がすっきりするだけで、なぜか本来やるべきことまではっきり見えてきた気がしました。

大切なのは、あくまで「隠す」ことであって「片づける」ことではない、という点です。分類したり所定の場所へ戻したりする作業には、思っている以上に判断力が必要で、疲れた脳にそれを求めるのは酷なことでしょう。

布を1枚かけるだけなら数秒で終わり、本来やるべき勉強だけに集中できます。

3. 「これだけやればOKリスト」を事前につくっておく

「何から勉強を始めようかな」と考えること自体、疲れた脳にとっては負担になるもの。

そこで、事前に「これだけやればOKリスト」をつくっておき、勉強するタイミングになったらそのなかから今の自分が一番ラクにできるものを選ぶ、という作戦をとってみました。リストは、一番元気な日曜の昼間につくりました。

筆者が事前につくった「これだけやればOKリスト」のメモ

正直、このリストに書いたことだけやっていたら勉強にならないんじゃないかと思うような内容ですが、意外とこれが足がかりになり、疲れていても30分くらいは頑張れたのです。

なぜ効くのか

あらかじめ「これだけやればOK」という具体的な行動を決めておくと、いざそのときになって「何をしよう」と考える手間がなくなります。

行動が起こるには「モチベーション」「実行のしやすさ」「きっかけ」の3つがそろう必要があり、なかでも行動を極端に小さくして「実行のしやすさ」を高めることが、もっとも確実な近道である。スタンフォード大学のB・J・フォッグはそう説明しています。*5

小さな行動さえ決まっていれば、疲れた夜はそのなかからひとつ選ぶだけでよくなるのです。

頭や心が元気なときは、「帰宅後は◯時間あるから、これだけ勉強できるはず」と思ってしまいがちですが、仕事で疲れた自分は別人だと思ったほうがよさそうです。

この「物足りなく感じるリスト」でさえ、できない日があるくらいなのです。

それでも、このリストのおかげではずみがつき、思っていたより勉強できるようになりました。100を目指して0になるより、20くらいをほそぼそと積み重ねるほうが、結果としてうまくいくように思います。

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3つのアイデアは、どれも「疲れていてもどうにか勉強したい」という自分を後押ししてくれました。

なかでも「これだけやればOKリスト」は筆者に合っていたようで、リストさえ手に取れば、自動的に勉強を始められるようになりました。もちろんできない日もありますが……。

記事をつくりながら「知っていた」手法は、実際に自分に使ってみることで、頼れる道具になってくれました。「疲れていても、こうすれば自分は動ける」というアイデアをもっておくと、コンディションに左右されることが減るのでおすすめです。

よくある質問

Q. メモに書く内容は仕事のことでなくてもいいですか?
かまいません。プライベートの心配事や、単に「疲れた」といった気持ちでも大丈夫です。頭のなかのもやもやを可視化することが目的なので、内容の種類にこだわる必要はありません。
Q. 布をかけるだけで本当に集中力が変わるのでしょうか?
片づけそのものよりも、視界に入る情報量を減らすことが重要です。散らかった状態を隠すだけでも、脳が無意識に処理する情報を大きく減らすことができます。
Q. 「これだけやればOKリスト」はどんな内容にすればいいですか?
「見出しを1行読む」「1ページだけ眺める」など、元気なときの自分から見ると物足りないくらい小さな行動にするのがコツです。ハードルを極端に下げておくことで、疲れた夜でも手をつけやすくなります。
Q. この3つを続けていれば、そのうち自然に勉強時間が伸びていきますか?
少しずつ伸ばしていける可能性は十分にあります。最初から長時間を目指す必要はありません。小さな行動を積み重ねることで「今日もできた」という感覚が生まれ、それが次の日の行動のハードルをさらに下げてくれます。慣れてきたら、行動の中身を徐々に増やしていくのがおすすめです。

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。