
感じがよく、誰からも好かれる人はうまくいく。それはそうです。話題が豊富だったり、機転が利いたり、余裕があったり。あるいは、おしゃれだったり。そんなことは、ここで言うまでもありません。
では、そんな人になれというのか。実際のところ、「好かれる人」になるのは簡単ではありません。むしろ、好かれることに意識を向けすぎるほど、自分がすり減っていきます。
じつは、人間関係を重くしているのは、「好かれていないこと」よりも、「無用な反感を持たれてしまうこと」かもしれません。
この記事では、「好かれる人」を目指さなくても職場の摩擦を減らせる考え方と、今日から試せる具体的な振る舞いをお伝えします。
「好かれる」を目指すと、かえって疲れる理由
「無用な反感」といっても、大きなトラブルの話ではありません。たとえば、ちょっとした言い方のきつさで相手が身構える。説明不足で「勝手に決められた」と思われる。こうした小さな摩擦が積み重なると、確認や根回しに余計な時間がかかり、仕事そのものが進みにくくなります。
これは感覚論ではありません。アメリカの人事専門機関SHRMの調査では、職場での無礼な振る舞い(インシビリティ)による生産性の低下や欠勤で、米国企業全体では1日あたり約21億ドルもの損失が生じていると試算されています。*1
つまり、人間関係の摩擦は、それだけ確かな仕事のコストとして跳ね返ってくるのです。
好かれることを目指すと、基準が相手の好みしだいで変わり、終わりがありません。ゴールが動き続ける、加点の競争です。一方の「無駄な敵をつくらない」は、減点を防ぐ話です。反感が生まれる場面はある程度決まっているため、そこさえ塞げば済みます。
だとすれば、工夫を向ける先は決まっています。同じ工夫をするなら、「好かれる」ためではなく、「反感を生まない」ほうへ向ける。この記事の提案は、それだけです。
敵をつくるのは「性格」ではなく「言動のクセ」
人間関係がうまくいかないと、つい「自分はどうも人に好かれにくい性格で」と、性格のせいにしてしまいがちです。でも考えてみれば、相手に性格そのものが届くことはありません。相手が身構えたり反発したりしているのは、特定の場面での、特定の言い方に対してです。
つまり、「好かれにくい性格」に見えているものの正体は、いくつかの言動のクセです。性格を丸ごと変える必要はなく、摩擦を生んでいるクセだけ直せばいい。そしてクセなら、今日から変えられます。

敵をつくりやすい言動には、いくつかの典型があります。
正論の押しつけ
正しいことを、正面からそのままぶつけてしまう。
面子を潰す否定
「それは違いますよね」と、相手の立つ瀬がない形で打ち消してしまう。
説明抜きの結論
経緯を省いて結論だけ伝え、相手に「ぞんざいに扱われた」と感じさせてしまう。
感情の置き去り
相手の気持ちに触れないまま、いきなり正しさだけで詰めてしまう。
どれも本人に悪気はなく、「親切のつもり」だったり、「仕事のため」だったりします。とくに、説明を省くのも結論から詰めるのも、もとはといえば時間を無駄にしないため。つまり、効率のためです。
ところが、SHRMの調査によれば、無礼な振る舞いを経験・目撃した働き手は、1回あたり平均36分もの生産性を失うとされています。*1
数十秒を節約したつもりの一言が、相手の30分以上を消している。効率のための言動が、じつはいちばん非効率な結果を招いているわけです。

しかも、こうした言動はクセとして無意識に出ます。もしも心当たりがあるとしても、責められている気分になる必要はありません。大事なのは「自分はダメな人間だ」と落ち込むことではなく、「あの場面の、あの言い方だけ変えよう」と切り分けることです。
問題を性格から行動に下ろすと、対処はぐっと具体的になります。
📖 あわせて読みたい
摩擦を減らす伝え方は、ほんの少しの“ひと手間”
では、反感はどんな瞬間に生まれるのでしょうか。じつは、典型的なきっかけは限られています。「頭ごなしに決められた」「真っ向から否定された」「拒絶された」と感じた瞬間、そして売り言葉に買い言葉。ここからは、この瞬間をひとつずつ防ぐ伝え方を紹介しましょう。
結論を先に、理由はあとで
「結論はAです。なぜなら〜」と順番を整えるだけで、相手は「頭ごなしに決められた」と感じにくくなります。
一度受け止めてから言う
「たしかにその見方もありますよね」とワンクッション置けば、同じ内容でも「真っ向から否定された」という受け取り方を防げます。
断るなら、理由を一言
「今は手が回らなくて」とだけでも、相手は「拒否された」ではなく「事情があるんだな」と受け取れます。
カチンときたら、即答しない
「少し考えてから返しますね」と間を取るだけで、売り言葉に買い言葉で関係を壊すリスクが減ります。
こうした振る舞いが効くのは、人が内容そのものより「どう扱われたか」に敏感だからだと考えられます。実際、SHRMの調査では、米国の働き手のおよそ3人に2人が「無礼な態度は生産性を下げる」と感じていることが示されています。*2
逆に言えば、丁寧に扱われたと感じるだけで、相手は協力的になりやすいということです。
全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。まずは「結論を先に、理由はあとで」。この順番だけ意識してみてください。
📖 あわせて読みたい
***
「好かれる人」を目指さなくても、職場の人間関係は軽くできます。工夫を向ける先は、「好かれる」ではなく「反感を生まない」ほう。反感を生むのは性格ではなく直せる言動のクセで、きっかけになる場面も限られています。結論を先に、相手の立場を一度受け止める。そこから始めてみましょう。

よくある質問(FAQ)
職場では「好かれること」を目指さなくてもいいのですか?
自分は人に好かれにくい性格なのですが、変えられますか?
まず何から始めればいいですか?
感情的になりそうなとき、どう対処すればいいですか?
*1: SHRM|New Data Shows Managers Could Do More to Curb Incivility at Work
*2: SHRM|New SHRM Research Highlights Urgent Need for Workplace Civility with U.S. Workers Facing Millions of Acts of Incivility Per Day
橋本麻理香
大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。