「好かれる」より「嫌われない」。職場で "反感を買わない" ための4つの会話の技術

好かれる男女

感じがよく、誰からも好かれる人はうまくいく。それはそうです。話題が豊富だったり、機転が利いたり、余裕があったり。あるいは、おしゃれだったり。そんなことは、ここで言うまでもありません。

では、そんな人になれというのか。実際のところ、「好かれる人」になるのは簡単ではありません。むしろ、好かれることに意識を向けすぎるほど、自分がすり減っていきます。

じつは、人間関係を重くしているのは、「好かれていないこと」よりも、「無用な反感を持たれてしまうこと」かもしれません。

この記事では、「好かれる人」を目指さなくても職場の摩擦を減らせる考え方と、今日から試せる具体的な振る舞いをお伝えします。

「好かれる」を目指すと、かえって疲れる理由

「無用な反感」といっても、大きなトラブルの話ではありません。たとえば、ちょっとした言い方のきつさで相手が身構える。説明不足で「勝手に決められた」と思われる。こうした小さな摩擦が積み重なると、確認や根回しに余計な時間がかかり、仕事そのものが進みにくくなります。

これは感覚論ではありません。アメリカの人事専門機関SHRMの調査では、職場での無礼な振る舞い(インシビリティ)による生産性の低下や欠勤で、米国企業全体では1日あたり約21億ドルもの損失が生じていると試算されています。*1

つまり、人間関係の摩擦は、それだけ確かな仕事のコストとして跳ね返ってくるのです。

好かれることを目指すと、基準が相手の好みしだいで変わり、終わりがありません。ゴールが動き続ける、加点の競争です。一方の「無駄な敵をつくらない」は、減点を防ぐ話です。反感が生まれる場面はある程度決まっているため、そこさえ塞げば済みます。

だとすれば、工夫を向ける先は決まっています。同じ工夫をするなら、「好かれる」ためではなく、「反感を生まない」ほうへ向ける。この記事の提案は、それだけです。

敵をつくるのは「性格」ではなく「言動のクセ」

人間関係がうまくいかないと、つい「自分はどうも人に好かれにくい性格で」と、性格のせいにしてしまいがちです。でも考えてみれば、相手に性格そのものが届くことはありません。相手が身構えたり反発したりしているのは、特定の場面での、特定の言い方に対してです。

つまり、「好かれにくい性格」に見えているものの正体は、いくつかの言動のクセです。性格を丸ごと変える必要はなく、摩擦を生んでいるクセだけ直せばいい。そしてクセなら、今日から変えられます。

癖に悩んでいる男性

敵をつくりやすい言動には、いくつかの典型があります。

正論の押しつけ

正しいことを、正面からそのままぶつけてしまう。

面子を潰す否定

「それは違いますよね」と、相手の立つ瀬がない形で打ち消してしまう。

説明抜きの結論

経緯を省いて結論だけ伝え、相手に「ぞんざいに扱われた」と感じさせてしまう。

感情の置き去り

相手の気持ちに触れないまま、いきなり正しさだけで詰めてしまう。

どれも本人に悪気はなく、「親切のつもり」だったり、「仕事のため」だったりします。とくに、説明を省くのも結論から詰めるのも、もとはといえば時間を無駄にしないため。つまり、効率のためです。

ところが、SHRMの調査によれば、無礼な振る舞いを経験・目撃した働き手は、1回あたり平均36分もの生産性を失うとされています。*1

数十秒を節約したつもりの一言が、相手の30分以上を消している。効率のための言動が、じつはいちばん非効率な結果を招いているわけです。

いがみあっている男性

しかも、こうした言動はクセとして無意識に出ます。もしも心当たりがあるとしても、責められている気分になる必要はありません。大事なのは「自分はダメな人間だ」と落ち込むことではなく、「あの場面の、あの言い方だけ変えよう」と切り分けることです。

問題を性格から行動に下ろすと、対処はぐっと具体的になります。

摩擦を減らす伝え方は、ほんの少しの“ひと手間”

では、反感はどんな瞬間に生まれるのでしょうか。じつは、典型的なきっかけは限られています。「頭ごなしに決められた」「真っ向から否定された」「拒絶された」と感じた瞬間、そして売り言葉に買い言葉。ここからは、この瞬間をひとつずつ防ぐ伝え方を紹介しましょう。

結論を先に、理由はあとで

「結論はAです。なぜなら〜」と順番を整えるだけで、相手は「頭ごなしに決められた」と感じにくくなります。

一度受け止めてから言う

「たしかにその見方もありますよね」とワンクッション置けば、同じ内容でも「真っ向から否定された」という受け取り方を防げます。

断るなら、理由を一言

「今は手が回らなくて」とだけでも、相手は「拒否された」ではなく「事情があるんだな」と受け取れます。

カチンときたら、即答しない

「少し考えてから返しますね」と間を取るだけで、売り言葉に買い言葉で関係を壊すリスクが減ります。

こうした振る舞いが効くのは、人が内容そのものより「どう扱われたか」に敏感だからだと考えられます。実際、SHRMの調査では、米国の働き手のおよそ3人に2人が「無礼な態度は生産性を下げる」と感じていることが示されています。*2

逆に言えば、丁寧に扱われたと感じるだけで、相手は協力的になりやすいということです。

全部を一度にやろうとしなくて大丈夫です。まずは「結論を先に、理由はあとで」。この順番だけ意識してみてください。

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「好かれる人」を目指さなくても、職場の人間関係は軽くできます。工夫を向ける先は、「好かれる」ではなく「反感を生まない」ほう。反感を生むのは性格ではなく直せる言動のクセで、きっかけになる場面も限られています。結論を先に、相手の立場を一度受け止める。そこから始めてみましょう。

仲良く話す男女

よくある質問(FAQ)

職場では「好かれること」を目指さなくてもいいのですか?
全員に好かれる必要はありません。むしろ、無用な反感を減らすほうが仕事は進みやすくなります。好感度を上げる努力より、摩擦を生む言動を一つ減らすことから始めるのがおすすめです。
自分は人に好かれにくい性格なのですが、変えられますか?
性格を変える必要はありません。相手が反応しているのは性格そのものではなく、場面ごとの言い方や伝え方です。摩擦を生んでいる言動のクセなら、今日から直せます。
まず何から始めればいいですか?
「結論を先に、理由はあとで」という順番を意識するだけでも効果があります。さらに、反対意見を言う前に「たしかに〜ですよね」と相手の立場を一度受け止める一言を足すと、反発が和らぎます。
感情的になりそうなとき、どう対処すればいいですか?
その場で即答せず、「少し考えてから返しますね」と間を取るのが有効です。一拍置くだけで、感情的な一言で関係を壊すリスクを減らせます。

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。