
「まあ大丈夫だろう。だって、これまでも大丈夫だったから」
そう先延ばしにしてきた結果、ある日とんでもないことに……。
このように、私たちが違和感をスルーしてしまう背景には、「人間の脳のクセ」が関係しているのです。
気づいていたのに、見過ごしてしまうのはなぜ?
博士、聞いてください……。
パソコンのデータが、全部消えました……。
それは大変じゃったのう。
バックアップは?
取ってませんでした……。
じつは、数週間前から動作が重いなとは思ってたんです。
でも「まあ、一時的なものだろう」って放置しちゃって。
ふむ。
異変には気づいておったのに、対処を先延ばしにしてしまったのじゃな。
そうなんです……。
なんで放置しちゃったんだろう。
元気をお出し、アンラッキー君。
それは、アンラッキー君のせいではなく、「正常性バイアス」という心理現象のせいなのじゃよ。
正常性バイアスとは?
都合の悪い情報や危険の兆候に直面しても、「自分は大丈夫」「いつも通りだろう」と過小評価してしまう心理的な傾向。
もともとは災害心理学の分野で、避難が遅れる人の行動を説明する概念として研究されてきました。
脳は省エネを好むため、ちょっと違和感があっても「いつも通り」と判断できるものなら、深く考えずに受け流す仕組みになっておる。
便利な仕組みじゃが、これが働きすぎると、本当に対処すべきサインまで「いつも通り」の箱に放り込んでしまうのじゃ。
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正常性バイアスは、仕事や日常のあちこちに潜んでいる
たとえば、こんな場面
・チームで同じミスが繰り返されているのに、「まあ毎回のことだから」と対策を先送りにする
・会議で同じ議題がいつも持ち越しになっているのに、「次はなんとかなるだろう」とやり過ごす
・取引先の反応が少しいつもと違う気がするけれど、「気のせいだろう」と流す
・書類提出がいつもギリギリなのに、「今回もなんとかなるだろう」と後回しにする
とくに厄介なのは、「今回は大丈夫だった」という経験を重ねるほど、正常性バイアスがどんどん強化されてしまう点じゃ。
次に同じ兆候が出たときも「今回もきっと平気だろう」と判断してしまう、いわば悪循環じゃな。
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「正常性バイアス」には、どう対処したらいい?
正常性バイアスの対処法としておすすめなのは、「違和感を覚えたその場で、次の行動を決めてしまうこと」です。
違和感を覚えたら、その場で予定を入れる
「気になるな」と思った瞬間に、スマホのカレンダーに点検や確認の予定を入れてしまいましょう。「あとで考えよう」を物理的になくしてしまうのです。
なぜ効くのか?
正常性バイアスは、「様子を見る」という選択肢が残っているあいだ強く働きます。
「いつ・何をするか」をあらかじめ決めておく、いわゆる実行意図(if-thenプランニング)は、目標の達成率を高める効果が確認されています。*2
気づいたその場で行動を予定に組み込んでしまえば、あとから「様子を見よう」と迷う余地そのものがなくなり、先延ばしを防げるのです。
それなら、いますぐできそうです!
「ギリギリでも間に合ってたから」と先延ばしにしていた経費精算の予定を、カレンダーに入れます!
うむ。
それでこそラッキー君じゃ。
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よくある質問(FAQ)
Q. 正常性バイアスは、なくすことができますか?
Q. 正常性バイアスが強く出やすい場面はありますか?
Q. 部下やチームメンバーの正常性バイアスに気づいたら、どう声をかければいいですか?
*1: Weinstein, N. D. (1980), Journal of Personality and Social Psychology, Vol.39, No.5, pp.806-820|Unrealistic Optimism about Future Life Events
*2: Gollwitzer, P. M. (1999), American Psychologist, Vol.54, No.7, pp.493-503|Implementation Intentions: Strong Effects of Simple Plans
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。