【心理学でサクッと解決!】「これまでも大丈夫だったし、平気でしょう」でトラブル。どうして起こる?

正常性バイアスとは何かを博士とアンラッキー君の会話でわかりやすく解説する心理学入門記事

「まあ大丈夫だろう。だって、これまでも大丈夫だったから」

そう先延ばしにしてきた結果、ある日とんでもないことに……。

このように、私たちが違和感をスルーしてしまう背景には、「人間の脳のクセ」が関係しているのです。

気づいていたのに、見過ごしてしまうのはなぜ?

アンラッキー君
アンラッキー君

博士、聞いてください……。

パソコンのデータが、全部消えました……。

博士
博士

それは大変じゃったのう。

バックアップは?

アンラッキー君
アンラッキー君

取ってませんでした……。

じつは、数週間前から動作が重いなとは思ってたんです。

でも「まあ、一時的なものだろう」って放置しちゃって。

博士
博士

ふむ。

異変には気づいておったのに、対処を先延ばしにしてしまったのじゃな。

アンラッキー君
アンラッキー君

そうなんです……。

なんで放置しちゃったんだろう。

博士
博士

元気をお出し、アンラッキー君。

それは、アンラッキー君のせいではなく、「正常性バイアス」という心理現象のせいなのじゃよ。

正常性バイアスとは?

都合の悪い情報や危険の兆候に直面しても、「自分は大丈夫」「いつも通りだろう」と過小評価してしまう心理的な傾向。

もともとは災害心理学の分野で、避難が遅れる人の行動を説明する概念として研究されてきました。

博士
博士
アメリカの心理学者ワインスタインの研究によれば、人は自分にとって都合の悪い出来事ほど、ほかの人より自分には起こりにくいと考えてしまう傾向があるそうじゃ。*1
アンラッキー君
アンラッキー君
自分だけは大丈夫、と思っちゃうんですね……。
博士
博士

脳は省エネを好むため、ちょっと違和感があっても「いつも通り」と判断できるものなら、深く考えずに受け流す仕組みになっておる。

便利な仕組みじゃが、これが働きすぎると、本当に対処すべきサインまで「いつも通り」の箱に放り込んでしまうのじゃ。

正常性バイアスは、仕事や日常のあちこちに潜んでいる

アンラッキー君
アンラッキー君
「まあ大丈夫だろう。だって、これまでも大丈夫だったから」で先延ばしにしちゃうこと、ほかにもあった気がするな。
博士
博士
アンラッキー君の言う通り、正常性バイアスは日常のあらゆる場面に潜んでおるぞ。

たとえば、こんな場面

・チームで同じミスが繰り返されているのに、「まあ毎回のことだから」と対策を先送りにする

・会議で同じ議題がいつも持ち越しになっているのに、「次はなんとかなるだろう」とやり過ごす

・取引先の反応が少しいつもと違う気がするけれど、「気のせいだろう」と流す

・書類提出がいつもギリギリなのに、「今回もなんとかなるだろう」と後回しにする

博士
博士

とくに厄介なのは、「今回は大丈夫だった」という経験を重ねるほど、正常性バイアスがどんどん強化されてしまう点じゃ。

次に同じ兆候が出たときも「今回もきっと平気だろう」と判断してしまう、いわば悪循環じゃな。

「正常性バイアス」には、どう対処したらいい?

正常性バイアスの対処法としておすすめなのは、「違和感を覚えたその場で、次の行動を決めてしまうこと」です。

違和感を覚えたら、その場で予定を入れる

「気になるな」と思った瞬間に、スマホのカレンダーに点検や確認の予定を入れてしまいましょう。「あとで考えよう」を物理的になくしてしまうのです。

なぜ効くのか?

正常性バイアスは、「様子を見る」という選択肢が残っているあいだ強く働きます。

「いつ・何をするか」をあらかじめ決めておく、いわゆる実行意図(if-thenプランニング)は、目標の達成率を高める効果が確認されています。*2

気づいたその場で行動を予定に組み込んでしまえば、あとから「様子を見よう」と迷う余地そのものがなくなり、先延ばしを防げるのです。

アンラッキー君
アンラッキー君

それなら、いますぐできそうです!

「ギリギリでも間に合ってたから」と先延ばしにしていた経費精算の予定を、カレンダーに入れます!

博士
博士

うむ。

それでこそラッキー君じゃ。

よくある質問(FAQ)

Q. 正常性バイアスは、なくすことができますか?
完全になくすことは難しいと考えられています。人間に標準的に備わった認知の仕組みだからです。意志の力で克服しようとするより、違和感を覚えた時点で予定を入れるなど、仕組みで対処するほうが現実的です。
Q. 正常性バイアスが強く出やすい場面はありますか?
チームの同じミスの繰り返し、会議の持ち越し、取引先の反応の変化など、「今回はたまたまだろう」と判断してしまうあらゆる場面で起こりえます。ゆるやかに進行する問題ほど、正常性バイアスの影響を受けやすい傾向があります。
Q. 部下やチームメンバーの正常性バイアスに気づいたら、どう声をかければいいですか?
「様子を見よう」という判断そのものを否定するのではなく、「いつまでに、何を確認するか」を一緒に決めるとよいでしょう。期限と次のアクションを具体的にすることで、先延ばしを防ぎやすくなります。
(参考)

*1: Weinstein, N. D. (1980), Journal of Personality and Social Psychology, Vol.39, No.5, pp.806-820|Unrealistic Optimism about Future Life Events
*2: Gollwitzer, P. M. (1999), American Psychologist, Vol.54, No.7, pp.493-503|Implementation Intentions: Strong Effects of Simple Plans

【ライタープロフィール】
柴田香織

大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。