大人が「ガチャ」や「シール帳」にハマる理由。“懐かしさ”と燃え尽き予防の心理学

シール交換する女性たち

街中のガチャガチャコーナーに人だかりができていたり、SNSでシール帳の投稿がひっきりなしに流れてきたり。そんな光景を、最近よく見かけませんか?

じつはいま、"平成レトロ"が大ブーム。13〜39歳の女性を対象にした日本インフォメーションの調査では、認知率は90.1%、購入・注目層は約半数(47.3%)にのぼるといいます。*1

ブームの広がりを感じる一方で、「いい大人が、お金と時間を費やすほどのものか?」と疑問に思う人もいるでしょう。

じつは「懐かしさ」には、脳やメンタルに嬉しい効果がある様子。本記事では、そのメカニズムと詳しい効果、そして日常への活用方法をご紹介します。

昔のガチャやシールに再会したときの「あの興奮」。脳内の反応は?

思い出のキャラクターが、ガチャガチャのアイテムになっていた。

子どものころに聴いていた曲が、急にSNSで流れてくるようになった。

そんなとき、こみ上げてくるのは「まさかまたこれに出会えるなんて……!」という、ちょっとした驚きと喜び。この感覚は、脳で起きている反応と関係しているようです。

東京都立大学教授の菊池吉晃氏の研究グループは、fMRIを用いた実験で、懐かしさを感じるときの脳の働きを調べました。すると、記憶をつかさどる「海馬」と、快楽や意欲に関わる「報酬系(腹側線条体)」が同時に活発になり、懐かしさが強いほど両者の連動も強くなることがわかったのです。*2

つまり懐かしさは、脳にとって単なる思い出話ではなく、ちょっとした「ごほうび」を受け取るのに近い体験。だからこそ私たちは、懐かしいものをつい手に取ってしまったり、何度も見返したくなったりするのでしょう。

ガチャガチャコーナー

たとえば、片づけようと思った古いシール帳になぜか手が止まってしまう。動画配信サービスで、結局いつもの懐かしいアニメを再生してしまう。そんな「あるある」も、脳のこの"ごほうび"回路が働いているからかもしれません。

「なぜ働いているんだろう」と虚しくなったときほど"あの数分間"が効いてくる理由

懐かしさは脳のごほうびであると同時に、忙しい大人の"よりどころ"にもなりえます。

そんな実験結果を報告したのが、英サウサンプトン大学教授のコンスタンティン・セディキディス氏らの研究チーム。面接形式のスピーチと暗算という、強いストレスのかかる課題を使った実験で、「懐かしさ(ノスタルジア)は、人生の意味を見出しにくくなっている人ほど、ストレスをやわらげる効果が大きい」ことがわかったと言います。*3

つまり、日々の仕事や勉強に追われて「なんでこんなことしてるんだろう」と感じている人ほど、懐かしいものに触れることで気持ちが軽くなりやすいということ。

たとえば、机の隅に置いた小さなシール帳をぱらぱらとめくる。通勤中に、学生時代によく聴いていた曲を1曲だけ流す。そんな数分間が、意外と効果的です。

忙しい時期ほど、「懐かしさに浸る時間」を意識的に確保してみましょう。

デスクに置くだけ? 忙しい大人でも今すぐできる「レトロ休息術」3選

ここからは、「懐かしさ」を日々のリフレッシュに取り入れる方法を3つご紹介します。どれも数分あればできるものばかりです。

忙しい大人のための「レトロ休息術」3選

1休憩の10分は、SNSではなく「懐かしいプレイリスト」で

休憩に入ったら、いつものSNSを開く代わりに、学生時代によく聴いていた曲だけを集めたプレイリストを流してみましょう。1990年代から2000年代のJ-POPを聴くことは、先の調査でも平成レトロの楽しみ方として2番目に多く挙がっていました。*1

2デスクの隅に「推しシール」や「ガチャガチャの戦利品」をひとつ置く

仕事道具の近くに、集めているシールや、当たったガチャガチャのフィギュアをひとつだけ置いてみましょう。作業の合間にふと目に入るだけで、小さな癒やしになります。

3手帳やToDoリストに「完了シール」を貼る

手帳にシールを貼るだけなら、シール帳をつくるほどの手間はかかりません。空いたスペースをお気に入りのシールでデコレーションしたり、終わったタスクにごほうびシールを貼ったりしてみましょう。

筆者の場合は、予定を書き込むついでに空きスペースへ好きなシールを貼るのが習慣。わずかな時間ですが、シールを選ぶひとときが息抜きになり、予定管理も楽しみになりました。

予定の余白にキャラクターや飾りのシールを貼ってデコレーションしたスケジュール帳

予定の余白にキャラクターや飾りのシールを貼ってデコレーションしたスケジュール帳
※画像は筆者が作成

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大人になってもレトロなものに惹かれるのは、脳がそれを"ごほうび"として受け取っているから。懐かしさに浸る数分間は、さぼりでも現実逃避でもありません

懐かしい時間を上手に取り入れながら、日々の勉強や仕事のパフォーマンスを整えていきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q. なぜ懐かしいものに触れると気分が上がるのですか?
懐かしさを感じるとき、脳の記憶をつかさどる「海馬」と、快楽や意欲に関わる「報酬系」が同時に働きます。脳のごほうび回路が刺激されることで気分が高まるためだと考えられています。
Q. レトロな趣味に没頭すると仕事の集中力が下がりませんか?
長く没頭すれば、当然その分だけ仕事の時間は削られます。一方で、休憩中に懐かしいものへ触れるぶんには脳の報酬系が刺激され、気分を切り替えやすくなります。休憩のなかに数分だけ組み込む、という使い方がおすすめです。
Q. 大人がシール帳やガチャガチャに夢中になるのは珍しいことですか?
近年は「平成レトロ」ブームとして、多くの大人が懐かしいアイテムを楽しんでいます。13〜39歳の女性を対象にした日本インフォメーション株式会社の調査でも、認知率は90.1%、関連商品を購入または関心をもって見ている層は47.3%にのぼりました。決して珍しいことではありません。
Q. 忙しくて休憩時間が取れない場合はどうすればいいですか?
5分程度の短い時間でも構いません。懐かしい音楽を聴く、お気に入りのアイテムを眺めるだけでも、気分の切り替えにつながります。
(参考)

*1: 日本インフォメーション株式会社|平成レトロに関する意識実態調査ーエモい×懐かしさが共感を生む最新トレンドー
*2: Atlas of Science|The nostalgic brain gives you the power to live
*3: Sedikides, C., & Wildschut, T. (2018), Review of General Psychology, 22(1), pp.48-61.|Finding Meaning in Nostalgia

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。