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私たちのまわりには、常に「目標」が存在します。そして多くの場合、その達成のためにPDCAサイクルを回すように言われます。
でも、正直なところどうでしょう?
緻密な計画を立てても、予期せぬ出来事で計画が狂う。目標を立てたものの、日々の業務に追われて後回しになる。立派な目標を掲げれば掲げるほど、達成できない自分を責めてしまう……。
そんなとき、注目したいのがOODAループです。PDCAサイクルとは異なり、計画より「いま」の状況の観察とそれに対応する「行動」を重視するこの考え方は、私たちを目標達成のストレスから解放し、むしろ着実な成果へと導いてくれるかもしれません。
- 従来の目標設定が抱える問題点
- OODAループとPDCAサイクルの決定的な違い
- OODAループの4つのステップ:状況対応力を高める
- 実践例:OODAループの効果的な活用法
- 「できること」から始める:OODAループの真価
- 「目標」より「行動」を重視する
従来の目標設定が抱える問題点
ビジネスの現場でも、学習の場面でも、「PDCAサイクルを回して目標達成を目指す」ということが一般的になっています。しかし、環境が急速に変化する現代において、計画通りに物事を進めることにこだわりすぎると、かえって柔軟な対応を妨げてしまうことがあるのです。
たとえば、営業活動では景気や競合の動きによって市場環境が変化し、先月立てた計画でさえ現状にそぐわなくなることがあります。資格試験の勉強でも、試験で求められる力が変われば、それまでの学習計画を見直す必要が出てきます。健康管理においても、決めた通りのメニューを続けるより、体調や生活リズムに応じて柔軟に調整するほうが効果的でしょう。
このように事前に立てた計画や目標に固執しすぎると、かえって状況の変化に対応できなくなってしまいます。そこで注目を集めているのが「OODAループ」という考え方です。
これは計画を起点とするPDCAサイクルとは異なり、まず「いま」の状況を観察することから始まります。その観察に基づいて状況を判断し、次の一手を決めて実行する。この一連のプロセスをすばやく回すことで、変化の激しい現代においても柔軟な対応が可能になるのです。
OODAループとPDCAサイクルの決定的な違い
PDCAサイクルは、目標に向かって計画的に進むことを重視します。まず目標を設定し、その達成に向けた計画を立て(Plan)、計画に従って実行し(Do)、結果を評価して(Check)、改善を行う(Act)というステップを踏みます。
一方、OODAループは「状況の観察」から始まります。目標や計画を立てる前に、まずいまの状況をしっかりと見極めることを重視するのです。そして、その観察に基づいて状況を判断し、次に取るべき行動を決定します。このアプローチの違いは、特に不確実性の高い状況で大きな差となって現れます。
OODAループの4つのステップ:状況対応力を高める
OODAループは4つのステップで構成されますが、それぞれのステップには重要なポイントがあります。
1. 観察(Observe):広い視野で状況を把握する
観察は単なる情報収集ではありません。重要なのは、先入観や思い込みにとらわれず、できるだけ多くの角度から状況を見ることです。たとえば、営業活動であれば、
- 顧客の反応や表情、声のトーン
- 競合他社の動き、市場全体の傾向
- 自社の商品・サービスの強み弱み
- チーム内のリソースや時間的制約
これらを総合的に観察します。学習においても同様で、単に教材や学習時間だけでなく、自分の理解度、集中力の変化、生活リズムなども観察の対象となります。
2. 状況判断(Orient):情報を整理し、洞察を得る
集めた情報を分析し、現状における最適な方向性を見極めます。ここでのポイントは、過去の経験や既存の枠組みにとらわれすぎないことです。たとえば、
- 「これまでこうしてきたから」という思考を疑ってみる
- 異なる視点からの解釈を試みる
- 新しい可能性を積極的に探る
3. 決定(Decide):具体的な行動を選択する
状況判断に基づいて、次に取るべき行動を決めます。ここで重要なのは、完璧な計画を立てようとせず、すぐに実行できる具体的な行動を選ぶことです。
- シンプルで明確な行動を選択する
- リスクと見返りのバランスを考慮する
- 必要に応じて複数の選択肢を用意する
4. 行動(Act):すばやく実行し、フィードバックを得る
決めた行動をためらわず実行します。このとき重要なのは、行動しながら次の観察も同時に行なうという意識です。つまり:
- 行動の結果だけでなく、プロセスからも学ぶ
- 予期せぬ展開にも柔軟に対応する
- 得られた気づきを次のサイクルに活かす
実践例:OODAループの効果的な活用法
ビジネスでの活用:新規プロジェクト立ち上げ
新規プロジェクトでは、計画通りに進まないことがむしろ普通です。OODAループを活用し、プロジェクトを立ち上げる例を紹介しましょう。
まず、市場調査や顧客ヒアリングを通じて現状を観察します。このとき、数値データだけでなく、顧客の表情や声のトーン、なにげない会話のなかの「まさにいま、目の前で起こっていること」も重要な情報となります。
それらの情報から、最適なアプローチを判断します。たとえば「対面営業よりもオンラインでの商談が効果的かもしれない」といった気づきを得たら、すぐに行動に移せる形に具体化します。
「まず3社とオンライン商談を設定する」といった具体的な行動を決め、すばやく実行にうつすのです。その結果や気づきを次のサイクルに活かすことで、徐々に最適な方法を見つけ出していけるはずです。
学習への応用:効果的な語学学習
語学学習でもOODAループは効果を発揮します。たとえばオンライン英会話を例に取ると、
レッスン中の自分の理解度、講師の説明スタイル、時間帯による集中力の違いなどを観察します。その中で「朝一番のレッスンが最も集中できる」「特定の講師の説明が分かりやすい」といった気づきを得たら、それを次の行動に活かします。
たとえば「朝7時から30分のレッスンを予約する」「理解度の高い講師を指名する」といった具体的な行動を決め、実行します。そして、その効果を観察しながら、さらなる改善を重ねていくのです。
「できること」から始める:OODAループの真価
PDCAサイクルでは目標達成が重視されますが、実際のところ「目標」は必ずしも自分の力だけでコントロールできるものではありません。売上目標は市場環境に左右され、試験の合格も出題傾向に影響されます。
同様に「状況」も、私たちの手の届かないところで変化していきます。どれだけ緻密な計画を立てても、予期せぬ出来事は必ず起こるものです。
しかしOODAループでは、そういったコントロール不能な要素に一喜一憂するのではなく、「自分にいまできること」つまり「行動」に焦点を当てます。市場が悪化しても「今日3件の商談をこなす」ことはできますし、試験傾向が変わっても「毎日2時間の学習時間を確保する」ことは可能です。
この「できることから始める」という考え方は、私たちに大きな心理的効果をもたらします。結果の善し悪しではなく、「観察し、判断し、行動できた」という事実が、着実な自信となっていくのです。そして「なぜうまくいかないのか」と悩むのではなく、「次にどんな行動をとるべきか」という建設的な思考が育まれていきます。
「目標」より「行動」を重視する
ビジネスの現場でも、学習の場面でも、私たちはつい「計画」や「目標」にこだわりがちです。しかし、OODAループが教えてくれるのは、むしろ「観察」から始めることの価値です。
計画に縛られすぎると、状況の変化を「想定外の出来事」「予期せぬ障害」として捉えてしまいます。一方、観察を起点とすれば、その変化は新たな可能性を示す「有益な情報」となります。つまり、OODAループは私たちの物事の見方そのものを変えてくれるのです。
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今日から意識を変えてみましょう。目標を立てることに躊躇したり、計画が狂うことを恐れたりする必要はありません。
まずは目の前の状況をよく観察し、そこから見えてきた可能性に向かって一歩を踏み出す。その積み重ねが、結果として大きな成果につながっていくはずです。
STUDY HACKER|いまの時代「PDCA」だと遅すぎる。超速で動くには「OODAループ」に乗れ!
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。