在宅ワークの成果は「休憩」が決める! パフォーマンスを最大化する「戦略的休憩術」を試してみた

在宅仕事の合間に「たい焼き」のことを考えているビジネスパーソン

在宅ワークって、なんかオフィスより疲れませんか?

家にいるのに肩がこる、集中力が続かない、なんとなくだるい……。オフィスにいた頃は同僚との「お疲れさま」で自然に休憩が取れていたのに、家だと休憩のタイミングがわからない。

気づいたら3時間ぶっ通しで作業してたり、逆に「ちょっと休憩」のつもりがダラダラ長引いたり……

どうやら在宅ワークには、それ専用の「戦略的な休憩」が必要らしいのです。

調べてみると、京都大学大学院の研究では、マイクロブレイク(数分程度の短い休憩)が知的作業に効果を発揮することがわかりました。つまり、休憩にも「戦略」がいるということ。

そういえば、将棋という知的なゲームで驚異的な集中力を維持し続ける藤井聡太七冠の「おやつタイム」も、この戦略的休憩の一種なのかもしれません。

そこで今回は、在宅ワーカー向けの戦略的休憩を実際に試してみました。よく言われる「ポモドーロ・テクニック」と組み合わせたら、在宅の疲れ方が劇的に変わったんです。

「戦略的休憩」って何? マイクロブレイクの威力

在宅ワークの疲れの原因を調べていて知ったのが、マイクロブレイクという概念でした。

京都大学大学院エネルギー科学研究科による2024年の研究では、以下内容が明らかになりました。*1

 
7.5分間の知的作業後に20秒間のマイクロブレイクを挟む条件と、マイクロブレイクなしの条件を比較したところ、マイクロブレイクありのほうが、時間経過によるパフォーマンスの低下を軽減し、より安定した作業能力を維持できることがわかった。

つまり、たった20秒でも計画的に休憩を取ることで、集中力を維持できるということ。これは「戦略的な休憩」と呼べるでしょう。

そのため研究者らは、「計画的なマイクロブレイクは、作業回復のための有望な戦略として推進できる」としています。*1

在宅ワークでは、誰も休憩のタイミングを教えてくれません。だからこそ、こうした「戦略」が必要なのかもしれません。

藤井聡太の「おやつタイム」から学ぶ休憩術

戦略的休憩の最高の実例が、藤井聡太七冠の「おやつタイム」ではないでしょうか。

長時間の対局で驚異的な集中力を維持し続ける藤井氏にとって、「おやつタイム」は単なる息抜きではありません。計画的にリフレッシュし、脳にエネルギーを補給する戦略的な時間なのです。

将棋の駒

実際、脳は体重の約2%しかないにも関わらず、全身のエネルギーの約20%を消費する器官です。*2 *3

その主要なエネルギー源はブドウ糖(グルコース)。脳に蓄えておくことができないため、常に血液から供給を受ける必要があります。*2

したがって、血糖値が低下すると脳の機能が低下し、集中力なども低下傾向になってしまいます。逆に適切な血糖値を維持することで、集中力を持続させることができるのです。*2

食糧科学の専門家によれば、その際のおすすめは「ぶどう・バナナ・ラムネ」など。*2

在宅ワークでも、この「計画的なおやつタイム」を取り入れてみてはどうでしょうか。冷蔵庫が近くにあるからこそ、戦略的に糖分補給ができるはずです。

ポモドーロ・テクニックとの最強コンビ

在宅ワークでの戦略的休憩を実現するのに最適なのが、「ポモドーロ・テクニック」との組み合わせです。

 

ポモドーロ・テクニック

起業家のFrancesco Cirillo氏によって考案されたこのあまりにも有名な時間管理術は、25分間集中して作業し、5分間の休憩を挟むという、いたってシンプルな方法。これを4セット繰り返したら少し長めの15分~30分休憩をとる。*4

在宅ワークでは、オフィスのような外的な区切りがありません。だからこそ、このように時間で強制的に区切る方法が効果的なのです。

早稲田大学 スポーツ科学学術院 教授の西多昌規氏も、この「ポモドーロ・テクニック」が効果的で能動的な休憩を確実にとれる方法とし、特に「これまで意識して休憩を取ってこなかった人」にすすめています。*5

ただし、在宅だからこそ気をつけたいポイントがあります。

同氏は、休憩中に座ったままネットサーフィンをしているような状態は、本物の休憩ではなく「フェイク休憩」だと言います。仕事以外の情報で気分転換をしたつもりでも、デバイスに触れたままでは脳が休まらないからです。ブルーライトを浴び続け、目を疲れさせるのも大きな問題です。*5

ビジネスパーソンが休憩している様子

在宅ワーカー向け戦略的休憩を実際に試してみた

そこで筆者は、在宅ワーク専用の戦略的休憩メソッドを1週間試してみました。

  • ポモドーロ・テクニックで計画的にマイクロブレイク
  • 5分休憩中は必ず席を離れる
  • デバイスから完全に離れる
  • 4セット後の長い休憩で「おやつタイム」

具体的には、5分の休憩で以下を行いました:

飲み物を取りに行く・トイレに行く・ベランダに出る・部屋のなかを歩く・屈伸する・階段を上り下りする・「コロコロ」でデスク周辺を掃除するなど。

そして、4セット後の「おやつタイム」は以下のように工夫しました:

  • 午前:ブドウ糖入りのゼリー飲料
    →手軽にエネルギー補給。在宅だから冷蔵庫からすぐ取れる

  • 午後:紫陽花の和菓子
    →疲れが出る午後は、藤井氏を参考に見た目も美しいお菓子で気分転換。家だからこそ、こんな贅沢ができる

ポモドーロ・テクニックを実践しているビジネスパーソン

結果:在宅の疲れ方が劇的に変わった

1週間試した結果、在宅ワークの疲れ方が劇的に変わりました。

これまでの筆者の在宅休憩は、まさに「フェイク休憩」でした。

  • 座ったままの姿勢で仮眠をとる
  • 糖質なしのブラックコーヒーだけを飲む
  • スマホでSNSをチェック

休憩とは名ばかりで、脳も体も休まっていませんでした。

しかし、戦略的休憩を取り入れてからは、以下のような変化がありました。

  • 3時間ぶっ通し作業がなくなった
  • 午後の集中力低下が軽減された
  • 肩こりが明らかに減った
  • 「なんとなくだるい」がほぼ消えた

特に効果的だったのは、「5分でも必ず席を離れる」ルールでした。在宅だとついつい座りっぱなしになりがちですが、強制的に立ち上がることで体の疲れが全然違いました。

また、計画的な「おやつタイム」も想像以上に効果的。午後の集中力キープに本当に役立ちました。

***
在宅ワークは自由度が高い分、自分でルールを作る必要があります。藤井聡太七冠の「おやつタイム」のような戦略的休憩で、在宅でも最高のパフォーマンスを発揮してみませんか?

家にいるからこそできる、贅沢で効果的な休憩を楽しみながら。

【ライタープロフィール】
上川万葉

法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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