常に平常心を保つ方法3選

常に平常心を保つ方法1

平常心とは、普段通りに落ち着いた心のこと。類語としては「冷静」「平静」「マイペース」などが挙げられます。

失敗したらどうしようと不安な気持ちになったり、他人の言動に怒りを覚えたりしたとき、私たちは感情を乱してしまいます。人間なので喜んだり悲しんだりするのは当然なのですが、目の前の大切なことに集中して取り組むべきときには冷静さを取り戻したいものです。

呼吸を整えて平常心を取り戻すコツはあるのでしょうか? 今回は、平常心を保ちやすくなる方法・習慣をご紹介します。

平常心を保てないと……

常に平常心を保つことは、ビジネスパーソンや学生をはじめ、すべての人にとって重要です。仕事や日常生活で、

  • トラブルが起きると動揺してしまう
  • 人前に立つと緊張しすぎてしまう
  • 他人の言動にイライラしてしまう

のように、心をかき乱されるシーンは多いはず。平常心のコツを知っていないと、仕事や勉強パフォーマンスが落ちたり、ミスやトラブルを起こしたりしてしまう恐れがあります。

心頭滅却すれば火もまた涼し」という言葉をご存じでしょうか。「無心になれば、火に焼かれることでさえ苦痛に感じない」という意味です。

1582年、織田信長によって恵林寺(山梨県)が焼かれた際、寺の僧侶・快川国師が、自身も炎に包まれながら残した言葉だと伝えられています。さすがに、火を「涼しい」と感じるのは難しいかもしれませんが、平常心の重要性を端的に表現した名言だと言えるでしょう。

では、平常心を維持するスキルが未熟だと、具体的にはどのようなデメリットが生じるのでしょうか? 

緊張に弱くなってしまう

平常心を保てない人は、失敗が許されない大事な場面で緊張しすぎ、結果が出せなくなりがち。大勢の前に立つとうまく話せなくなってしまう方や、商談などで初対面の人に接するのが苦手な方は、心当たりがあるのではないでしょうか。

平常心を保つスキルがあれば、プレッシャーのかかる場面でも普段通りに振る舞え、リラックスした状態で本来の能力を発揮できます。

トラブルで動揺してしまう

平常心を保てない人は、予想外のトラブルにも弱くなります。「発注ミスが起きた」「計画より大幅に遅れている」など、仕事にはトラブルがつきもの。予定外の出来事が起こるたびに動揺し、頭が真っ白になってしまうようでは、冷静に対処して問題を解決することができません

平常心を保つすべを知っていれば、「起きてしまったことは仕方ない」「こんなこともある」と割りきり、気持ちを切り替えられるはずです。

怒りで冷静さを失ってしまう

怒りの感情に振り回されやすくなるのも、平常心を保てないことによるデメリットです。

特に疲れているときなどは、他人のちょっとした言動が気になってイライラしがち。「怒りっぽい人だ」と周囲から悪い印象を抱かれてしまうだけでなく、ストレスがたまったり、冷静に思考できなくなったりと、怒りはさらなるデメリットをもたらします。

一方、平常心を保てる人は、気に入らないことが起きても怒りを上手に鎮められるもの。常に平常心で過ごせると、感情的に行動して失敗するリスクが小さくなるというメリットがあります。

常に平常心を保つ方法2

常に平常心を保つ方法1:ルーティン

平常心を保つ方法として、心理学者・渋谷昌三氏が推奨しているのが「ルーティン」です。ルーティンとは、いつも行なうお決まりの動作・行動のこと。例としては、

  • 朝起きたら、いつも同じ手順でストレッチする
  • 商談の前には、3回深呼吸するようにしている
  • 本番の前には、いつも同じ音楽を聴く

などが挙げられます。たとえば、「決まった手順でストレッチする」というルーティンのある人は、心が乱れそうなときにルーティンを実行することで、いつもの安定した心を取り戻せるのです。

ルーティンのやり方

ルーティンとして行なう動作は、無理なく続けられ、自分に合うものならなんでもかまいません。ストレッチや筋トレのように身体を動かすものや、「“人” という字を手のひらに3回書いて飲む」など儀式的なもの、「“大丈夫” と心のなかで3回唱える」のように自己暗示的なものなど、好みや適性に応じてさまざまなルーティンが考えられるでしょう。

ルーティンの動作は、なるべく細かく決めることが大切です。たとえば、「朝起きてすぐストレッチをする」ではなく、「右脚のストレッチ1分→左脚1分→右肩1分→左肩1分→……」と具体的に設定しておき、常にまったく同じ動作を繰り返します

そして、渋谷氏によると、「結果が良かれ悪しかれ、同じルーティンを続ける」のが大事なのだそう。「前回は本番前にストレッチをして失敗したから、今回はやめよう」と、ルーティンをコロコロ変えるのはNG。ルーティンとは験担ぎではなく「平常心に戻るきっかけづくり」なので、一度身につけたルーティンを使い続けることが大切なのです。

ルーティンのある生活

ルーティンを導入するにあたっておすすめなのが、毎日の行動パターンを一定にすること。医師の小林弘幸氏によれば、生活リズムを “ルーティン化” すると「今朝は何を食べようか」「何時に家を出ようか」と悩む回数が減るため、自律神経が乱れにくくなり、平常心を保ちやすくなるのだそう。

生活リズムが乱れがちな方は、下記のように一日のタイムスケジュールを書き出し、自分の行動パターンを細かく決めてみてはいかがでしょうか。

6:30 起床。テレビをつけ、ストレッチする(右脚→左脚→右肩→左肩)
7:00 パンをオーブンで温め、コーヒーを入れる
7:30 スーツに着替える。ネクタイは、一番手前のものを使う
7:50 家を出る
……

小林氏によると、ルーティン化した行動をまずは1週間続け、クリアできたらさらに1週間、と伸ばしていくと定着しやすいのだそう。平常心を保ちたい方は、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

常に平常心を保つ方法3

常に平常心を保つ方法2:セルフトーク

常に平常心を保つ方法としては、「セルフトーク」を見直すこともおすすめ。セルフトークとは、「疲れたなぁ」「おいしいなぁ」「怖いなぁ」など、なにげなく心のなかでつぶやく独り言のこと。

五輪メダリストでメンタルトレーナーの田中ウルヴェ京氏によると、セルフトークを意識的に変えることで、思考・メンタルのコントロールが可能になるのだそう。セルフトークの改善は、アスリートなどのメンタルトレーニングとしても活用されているとのことです。

田中氏が推奨している、セルフトークの改善手順は以下のとおり。

1. セルフトークを記録する

まずは、自分が普段どのようなセルフトークをしているか把握します。病気を治す準備段階として、全身の検査を行なうようなものです。

日常生活のなか、脳内で何かをつぶやいたと気づいたとき、その言葉を漏らさず記録していきましょう。メモ帳でもICレコーダーでも結構です。

記録が貯まったら、自分のセルフトークの傾向を分析してみましょう。田中氏によると、たいていの人は「イジイジ系」か「イライラ系」なのだそう。

  • イジイジ系:「どうせ私なんて」など、自分を卑下する
  • イライラ系:「なぜあの人は評価してくれないのか」など、他人に対して怒る

セルフトークの傾向を把握することで、自分がとらわれているネガティブ思考や、いらだちやすいポイントがわかります。

2. 後ろ向きなセルフトークを止める

セルフトークの傾向を把握できたら、改善の段階に移ります。「私なんて」「もうダメだ」といったネガティブなセルフトークをしてしまったら、すぐ心のなかで「ストップ!」と言いましょう。「完了!」「もうやめよう!」など、自分なりにしっくりくる言葉ならOKです。

「ストップ!」とつぶやいたら、それを合図にネガティブ思考を停止し、別のものへ意識を向けてください。モヤモヤした感情を、いったん棚上げして忘れてしまうイメージです。目の前の仕事に集中したり、楽しいことを考えたりして、気持ちを切り替えましょう。

田中氏によれば、「ストップ!」の習慣を続けるうち、しだいにネガティブなセルフトークをする回数が減ってくるのだそうです。

3. 前向きなセルフトークに置き換える

「ストップ!」をかけたネガティブなセルフトークを、ポジティブに言い換えられないか考えてみましょう。

【ポジティブな言い換えの例】

  • 私はダメな人間だ
    →ダメなところもあるけど、いいところもたくさんある!
  • 誰も私を評価してくれない
    →評価してもらえるように頑張ろう!
  • どうしてA君ばかりほめられるんだろう?
    →A君のいいところを見習おう!

このように言い換えることで、ネガティブなセルフトークを抑制するだけでなく、ポジティブなセルフトークの数を増やせます。失敗やトラブルに弱く、平常心を失ってしまいがちな方は、ぜひこの方法でセルフトークをコントロールし、安定したメンタルを手に入れましょう。

常に平常心を保つ方法4

常に平常心を保つ方法3:アンガーマネジメント

平常心のコツとして3つめに紹介するのが、「アンガーマネジメント」。アンガーマネジメントは、自分の怒り(アンガー)と上手に付き合う(マネジメント)ために開発されたスキルで、アスリートの教育や企業での研修など広い分野で活用されています。

アンガーマネジメントの基本的なコンセプトは、以下の2点。

  • 必要のない怒りはなるべく避ける
  • 必要があるときには上手に怒る

怒りの感情を封じ込めるのではなく、湧いてきた怒りにどう対処するかが重要なのです。

日本アンガーマネジメント協会の代表理事・安藤俊介氏によると、アンガーマネジメントには「衝動のコントロール」「思考のコントロール」「行動のコントロール」という3つのアプローチがあるのだそう。

衝動のコントロール

衝動のコントロールとは、怒りが湧いた直後の強い衝動をやり過ごすこと。安藤氏によると、怒りにおける「最初の6秒間」は、アドレナリンが最も多く分泌されているピークの状態。その6秒間さえやり過ごせれば、怒りが自然に鎮まりやすくなるそうです。

安藤氏は、怒りのピークをやり過ごすテクニックとして、「怒りの内容を手のひらに指で書く」を推奨しています。怒りが湧いてきたと感じたら、すぐ手のひらに「Aさんから批判されたことに怒っている」「部長が私の話を聞いてくれないことにいらだっている」などと書いてみましょう。怒りが言語化されて冷静になれるだけでなく、手のひらに書いているあいだに怒りのピークが過ぎているはずです。

自分の「怒り度」を10段階で評価してみるのも効果的。「これは10段階で7くらいの怒りだな」という具合に分析すると、怒っている自分を客観視できるため、平常心を取り戻しやすくなります。

思考のコントロール

思考のコントロールとは、立ち止まって「本当に怒るべきなのか」を考えること。安藤氏によると、怒りという感情は、「○○すべき」という観念を他人に破られることで生じるのだそう。あなたが「時間はきっちり守るべき」という考えの場合、平気で遅刻する人に出会ったら怒りを覚えることでしょう。

しかし、「○○すべき」という考えに固執すると、“不必要な怒り” を抱いてしまうことにもなります。たとえば、「部下が始業時間に5分遅れた」なら怒るのも自然ですが、プライベートの遊びで「友だちが集合時間に5分遅れた」程度で怒るのは狭量すぎる感じがしますよね。

必要のない怒りを減らすには、下図のような3つの円をイメージし、相手に対する怒りが「許容できる」「少し嫌だが、許容できる」「許容できない」のどれに当てはまるか考えてみましょう。「本当に怒るべきかどうか」を冷静に判断しやすくなるはずです。

平常心を保つのに便利な、アンガーマネジメントにおける3つの円。

(画像は筆者が作成)

「遊ぶ約束をしていた友だちが約束の時間に5分遅れた」というケースなら、「少し嫌だが、許容できる」に分類されるので、怒る必要がないと判断できます。

行動のコントロール

「許容できない」と判断した怒りは、さらに4つに分類できます。分類の基準は、「重要度」と「コントロール可能度」です。

重要度とは、「その物事は、怒らなければならないほど重要か?」ということ。たとえば、「部下が会社に遅刻した」なら、仕事という「重要」な場面なので、怒る価値があると考えられます。しかし、「部下が飲み会に遅刻した」くらいなら、飲み会という「非重要」な場面なので、わざわざ怒るほどではないと判断できるかもしれません。

コントロール可能度とは、「自分が怒ることで、その物事をコントロールできるか?」ということです。「部下が寝坊で遅刻した」場合なら、怒ることで部下が行動を改めるかもしれませんから、怒る価値があると判断できます。しかし、「部下が通勤中の事故で遅刻した」なら、部下を責めたところで仕方ないので、怒る価値がないとみなせるでしょう。

「重要度」と「コントロール可能度」で怒りを分類し、平常心を保とう。

(画像は筆者が作成)

上図のように怒りを分類し、「怒るほどの価値がない」「怒ったところで変わらない」と認識できれば、自然と怒りが収まっていくはず。重要かつコントロール可能な「本当に怒るべき事柄」だとしても、過度に感情的にならず、相手と冷静なコミュニケーションをとりましょう。

まとめると、怒りを感じたときの対処フローは以下のようになります。

  1. 6秒間待ち、怒りのピークをやり過ごす
  2. その怒りは「許容すべき」かどうか考える
  3. 許容すべきでない怒りのうち、重要&コントロール可能なことについてだけ怒る。それ以外はこらえる

怒りで平常心を忘れることが多い方は、ぜひアンガーマネジメントの考え方を取り入れてみましょう。

***
平常心を保つテクニックとして、「ルーティン」「セルフトーク」「アンガーマネジメント」という3つの方法をご紹介しました。その時々の状況や気分に振り回されず、コンスタントに結果を残したい方は、ぜひ活用してみてくださいね。

(参考)
コトバンク|平常心
コトバンク|心頭滅却すれば火もまた涼し
渋谷昌三(2008),『夢と目標を引き寄せる心理術 コミュニケーション能力を高めれば成功への道は開ける!』, こう書房.
BEST TiMES|ジョブズがずっと同じ洋服を着ていたのは医学的にも正しい
株式会社日立ソリューションズ|第4回 上手に気持ちを切り替える「セルフトーク」術
日本アンガーマネジメント協会|アンガーマネジメントとは?
リクナビNEXTジャーナル|「怒り」をモチベーションにできるアンガーマネジメントを学ぼう

【ライタープロフィール】
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。

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    「STUDY SMART」をコンセプトに、学びをもっと合理的でクールなものにできるよう活動する教育ベンチャー。当サイトをはじめ、英語のパーソナルトレーニング「ENGLISH COMPANY」や、英語の自習型コーチングサービス「STRAIL」を運営。
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