「勉強計画を立てても、計画通りに進められない」
「仕事で数値目標を毎期言い渡されるけれど、頑張る意欲が湧かない」
「数年前にキャリアプランを立てたけど、まったく予定通りにいっていない」
目標や計画は立てたのに、なぜか頑張れない……! そんな悩みの背景には、どうやら「頑張れないのも当然」と言える理由が存在しているようです。その3つの理由と対策をご紹介します。今度こそ計画を実行したい方、ぜひご一読ください。
- 【頑張れない理由1】計画にNGワードを使っているから →対策はこれ!
- 【頑張れない理由2】数値目標しか掲げていないから →対策はこれ!
- 【頑張れない理由3】キャリアプランが綿密すぎるから →対策はこれ!
【頑張れない理由1】計画にNGワードを使っているから →対策はこれ!
半年後の資格試験になんとしても合格したくて、「問題集を3周することを意識する」「寝る前の勉強を徹底する」などと計画したけど、そのとおりに勉強できていない……。
このような悩みの原因は、計画に用いている言葉にあります。
行動科学専門家の永谷研一氏によると、計画を立てるときに使いがちな言葉のなかには、行動の定着や継続を阻み、目標の達成を遠ざけるNGワードがあるのだとか。以下がその例です。
- 「心がける」「意識する」……行動ではなく、思考を指している
- 「徹底する」「努力する」「励む」……何をどの程度行なえばよいのか、わかりづらい
これらはどれも、明確な行動とはほど遠いもの。「意識する」「徹底する」というだけでは、行動できなくて当然なのです。
そこで永谷氏がすすめるのが、
- まわりの人から見て、行動を実践できたかどうかがわかる文章
- 誰がやっても、同じ行動をとれる文章
で、計画を立てること。では、この項の冒頭に挙げたダメな計画の例を修正してみましょう。
×「問題集を3周することを意識する」
→◎「毎日10問ずつ問題を解く」
行動へ結びつくよう「意識する」を「解く」に修正。誰がやっても同じ行動になるよう「毎日10問」という具体的な計画に。
×「寝る前の勉強を徹底する」
→◎「寝る前に単語の暗記を10分やる」
「勉強を徹底する」では、何をどのくらいやるのか不明確なまま。「単語の暗記を10分やる」と計画を具体化。
きちんとした計画を立てたつもりでも、実際に行動できなければ、意味がありませんよね。たったふたつのコツを押さえて「本当に行動できる計画」を立てましょう!
【頑張れない理由2】数値目標しか掲げていないから →対策はこれ!
「あなたの今期の目標は、個人売上を前期比110%にすること。これを目指してやっていってね」と、上司に数値目標を言い渡されたけれど、なんだか頑張る気がしないなぁ……。
これと似たような状況に心当たりがある人もいるかもしれません。じつは、行動を起こすには数値目標だけでは不十分なことも。そう指摘するのは、メンタルコーチの大平信孝氏です。
大平氏によると、「楽しい」と感じられない目標を立てても、行動スイッチは入らないとのこと。人は、欲望がなければ行動意欲も湧かない生き物だからです。そこで、次の3ステップで「欲望を刺激し、感情を動かす目標」を立てることをすすめています。
- 心底叶えたい目標を決める
- 自分の価値観を明確化する
- 価値観に基づいた取り組み内容を決める
上司から提示された「個人売上を前期比110%にする」という数値目標を、感情を動かす目標へつくり替えるという例で、各ステップを具体的にご説明しましょう。
1. 心底叶えたい目標を決める
目の前の数値目標はいったん脇に置き、自分の欲望のままに目標を決めます。実現可能性は気にせず、「本当にやりたいこと」「本当になりたいもの」を目標にするのがコツだそう。
例)将来、会社役員になりたい。
2. 自分の価値観を明確化する
1で決めた目標は、自分のどんな価値観に基づくものなのか、明確にします。大平氏によると、人の行動を支える価値観は次の3つに大別できるそうです。
- 「人とのつながり」を大切にしたい
- 目標や課題を「達成すること」を大切にしたい
- 「専門性や自分の個性」を大切にしたい
例)人脈が広がることや、人脈から仕事へ発展することに喜びを感じるので、自分は「人とのつながり」を大切にしたいタイプだ。会社役員になりたいのは、一社員では築けないような人脈を社内外に広げるためだ。
3. 価値観に基づいた取り組み内容を決める
数値目標を達成するための具体的な取り組み内容を、先に明確化した価値観に基づいて決めます。肝心なのは、行動と価値観をリンクさせること。
例)自分は将来役員になって、人脈をいま以上に幅広く築きたい。そのためには、若手のうちから高く評価される必要がある。だから、まずは今期の個人売上を前期比110%にするべく、顧客への訪問回数を○回に増やし、顧客と密接につながろう!
このようにして、数値目標に欲望や価値観に基づくストーリーをもたせれば、前向きに行動したくなるはずです。
【頑張れない理由3】キャリアプランが綿密すぎるから →対策はこれ!
入社3年で営業チームへ異動、5年で昇進……というキャリアプランを立てたけれど、途中で予期せぬ異動があり、営業の仕事も昇進もできていない。計画通りにならないもどかしさから目標を見失い、モチベーションも行動力も下がり気味……。
このようなキャリアの悩みに陥ってしまうのは、立てた計画に固執しすぎていることが原因かもしれません。
キャリアコンサルタントの藤田總氏は、変化の激しい現代において、先々のキャリアまで緻密に計画を立てたとしても、そのとおりになるとは限らないと説きます。一度思い描いたキャリアプランにこだわりすぎると、かえってほかの可能性を潰す恐れさえあるのだとか。
そこで藤田氏が紹介するのが、スタンフォード大学の教育心理学者ジョン・D・クランボルツ氏が1999年に提唱した、「計画的偶発性理論」というキャリア形成の考え方です。
クランボルツ氏は、キャリアにおけるターニングポイントの8割は予期せぬ偶然によるものだと、調査によって明らかにしました。とはいえ、偶然のチャンスが訪れることをただ待てばよいと言っているわけではありません。クランボルツ氏は、自らチャンスをつくり出そうと積極的かつ柔軟に行動することが大切だとし、以下の5つの行動指針を掲げているそうです。
- 好奇心:たえず新しい学習の機会を模索し続けること
- 持続性:失敗に屈せず、努力し続けること
- 楽観性:新しい機会は必ず実現する、可能になるとポジティブに考えること
- 柔軟性:こだわりを捨て、信念、概念、態度、行動を変えること
- 冒険心:結果が不確実でも、リスクを取って行動を起こすこと
(引用元:All About|クランボルツ教授に学ぶ計画的偶発性理論とは?、太字は筆者が施した)
藤田氏によれば、「こんな仕事をしたい」と方向性だけ漠然と決めたうえで、5つの指針にのっとって行動すると、チャンスをつかみやすくなるそう。
たとえば、「3年後には営業チームに異動して活躍したい」と思っていたのに、期せずして別のチームへ異動になった――そんな偶然をこの先のキャリアに活かすには、楽観的に、柔軟にとらえることが大切です。「新たな仕事のなかに、営業に近い業務はないかな?」「いつか、営業職に挑戦できるチャンスはないかな?」など好奇心をもって、持続的に仕事に取り組んでみましょう。
そうすれば、「この業務はのちのち営業でも役立ちそうだ」「来期、営業チームが人員増のための募集をかけるらしい」というように、進みたい方向へ近づけるチャンスに気づきやすくなります。それを逃さず冒険心をもって飛び込むことで、結果として自分らしいキャリアを築いていけるはずです。
計画通りにキャリアを築けていないからといって、モチベーションや行動力を下げてしまうのはもったいないこと。計画に固執しない柔軟性も大切にしましょう。
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今回ピックアップした「頑張れない理由」のなかに、心当たりはありましたか? もしあった方は、ご紹介した対策をぜひ試してみてください。きっと行動力がアップするはずですよ。
(参考)
東洋経済オンライン|目標達成できない人が使う5つの「残念ワード」
ダイヤモンド・オンライン|数値目標では社員がやる気にならない理由、「行動スイッチの入れ方」のコツとは
All About|クランボルツ教授に学ぶ計画的偶発性理論とは?
RGFプロフェッショナルリクルートメントジャパン|計画的偶発性理論とは?クランボルツ教授に学ぶキャリアデザイン
【ライタープロフィール】
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。