ポモドーロ・テクニック(25分作業、5分休憩のサイクル)は多くの人が知る時間管理法ですが、効果を感じられない方も少なくありません。
多くの人が「休憩後に集中力が切れてしまう」「作業や勉強を再開しようとしてもダラダラしてしまう」という問題に直面しています。こうした状況に陥る前に、自分のポモドーロ・テクニックの使い方を見直してみましょう。
最も重要なポイントは、タイマーが鳴ったら、どんなに中途半端な状態でも必ず作業を中断すること。実はこれがポモドーロ・テクニックの集中力アップにおける鍵となります。「あと少しだけ」と作業を続けてしまうと、本来の効果が薄れてしまうのです。
この記事では、ポモドーロ・テクニックを正しく活用して集中力を維持する方法を、実践例とともに紹介していきます。
ポモドーロ・テクニックの落とし穴
ポモドーロ・テクニックは、イタリア人のフランチェスコ・シリロ氏が考案した生産性向上術。「25分間作業、のち5分間休憩」を繰り返すことで、生産性を高めることができます。 *1
集中力を発揮しやすくなるのはもちろん、ブレインコーチのジム・クウィック氏は記憶力を高める効果も期待できると述べています。*1
まさに学習にうってつけのテクニックなのです。
しかし「すでに実践しているけれど、再開時に集中力が途切れてしまい、あまり効果が感じられなかった……」という方もいるでしょう。
そんな方は、もしかしたら「25分経ったら区切りのいいところまで終わらせ、そのあと休憩に入る」という使い方をしていませんか?
筆者はまさにその使い方をしていました。せっかく始めた作業を中途半端なところで中断するのが嫌で、つい区切りのいいところまで進めてしまいたくなっていたのです。
ところが、その行為こそが「再開時に集中が途切れやすい」原因なのです。
「続きが気になる」心理を利用
区切りのいいところまで終わらせると、なぜ集中力が途切れやすくなるのでしょうか。
その秘密はツァイガルニク効果という心理現象にあります。
みなさんは「もう少し続きが知りたい…」と思ったまま、中断せざるを得なかった経験はありませんか?
たとえば、マンガを読んでいて、ラストページで衝撃的な展開のあと「続きは次回!」と示されると、次の話が気になって仕方がないでしょう。
物語の途中で強制的にストップされることで、頭のなかで「次はどうなるんだろう?」と考え続けてしまう——これが、ツァイガルニク効果と呼ばれる心理現象です。
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授の阿部誠氏は、ツァイガルニク効果を「人は自身が達成した事柄より、達成できなかった事柄や中断している事柄の方が記憶に残りやすい」という心理現象だと説明しています。*2
25分間作業したら、どんなに中途半端でも中断して休憩するというポモドーロ・テクニックは、このツァイガルニク効果を引き出します。
「作業が気になる」という気持ちから、休憩後も集中して作業できるようになったり、勉強した内容が記憶に残りやすくなったりするわけです。
しかし、25分経ったら区切りのいいところまで終わらせ、そのあと休憩に入るという方法では、ツァイガルニク効果が起きにくくなります。
もし「休憩のたびに集中が切れてしまう」と感じているなら、25分経ったら、絶対にそこで作業を止めるということを意識してみましょう。
これだけでも十分集中力が持続するようになりますが、さらに取り入れると効果的な「あること」があるのです。
ポモドーロの効果を最大化する「たった1つの習慣」
ポモドーロ・テクニックをさらに効果的にするために、25分の終わりに「たった1つのこと」を実践するだけで、次の作業が驚くほどスムーズに進むようになります。
その方法とは、次に何をするかをメモしておくことです。
勉強の再開時に「次は何をすればいいんだっけ?」と考える時間があると、集中力が途切れやすくなります。
休憩前に、簡単でいいので「次にやること」をメモしておくと、スムーズに勉強を再開できます。
先延ばしの改善について複数の著書を出版している、メンタルコーチの大平信孝氏も「机に戻ってきた未来の自分が、何から手を付けるべきか迷うのを防ぐため」「何の仕事が途中だったのかを付箋に書き残してお」くことが集中力を高めると語っています。*3
これまで紹介した集中力を上げるテクニックをまとめると、以下のようになります。
- ポモドーロタイマーを設定し、タイマーが鳴ったら、どんなにキリが悪くても作業を中断する
- 「次に何をするか」を簡単にメモする
- 休憩をとる
- タイマーが鳴ったら作業を再開する
実際に筆者が試してみた
上で述べた方法を、筆者は中国語の勉強に取り入れてみることにしました。
筆者は普段、ポモドーロ・テクニックを自分なりにアレンジしてタイマーを作業(30分間)・休憩(5分)に設定しています。今回は「次に何をするか」メモする時間を含めるため、休憩時間を7分間にしました。
取り組んだのは、単語学習(音読・書き取り)です。
最初の30分間で、新しい単語を20個覚えることを目標にしていましたが、途中でタイマーが鳴りました。
「このまま中断するのは気持ちが悪いな……」と感じたのですが、なんとかストップ。
「残り4単語を覚えてからリスニングの練習をする」とメモし、5分間休憩をしました。
5分間の休憩後、勉強を再開するときに変化を感じました。
いつもは区切りのいいところまで終えた達成感もあり、「もう少しだけゆっくりしてもいいか」と、つい勉強の再開を先送りにしてしまうことがありました。
しかし、キリの悪いところで中断した結果、休憩後すぐに勉強を再開できたのです。「さあ、もう勉強に戻らなくちゃ」と考える小さなストレスすら感じなかったことに驚きました。
キリの悪いところで中断することで、「一からやる」ではなく「続きをやる」という意識に切り替わり、作業を再開するハードルが下がったようです。
これがポモドーロ・テクニックから引き出されたツァイガルニク効果なのだと実感したのです。
また、「次にやること」をメモするのも効果的でした。
作業の再開時に、見れば何をすべきかわかるものがあるというのは思った以上にストレスを軽減してくれました。
さらに、「次に何をするか」を頭から紙にアウトプットしておくことで、再開後のことを気にせず、ゆっくり休憩できるのも嬉しいメリットでした。
このポモドーロ・テクニックのやり方は、集中力をキープできるため非常におすすめですが、強いて言うなら「作業をやりすぎてしまう」ことがデメリット。
「この勉強が終わるまで」ではなく、「3回繰り返したら今日は終わりにする」などと繰り返す回数を決めて行なうと、あとからどっと疲れが出ることを防げるでしょう。
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ポモドーロ・テクニックを正しく活用しツァイガルニク効果を引き出すことで、休憩を挟んでも集中力を維持することができます。
「勉強の集中力がなかなか続かない」と感じている方は、ぜひ一度試してみてください。
*1 東洋経済オンライン|勉強がデキる人は知っている「25分の法則」
*2 プレジデントオンライン|5つ星より1つ星のレビューが気になる訳
*3 PHPオンライン|専門家が教える「先延ばしする人」「すぐやる人」で分かれる脳の使い方
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。