
会議の最後、「なにか質問はありますか」の声に、頭が真っ白になる。「的外れだったらどうしよう」と迷っているうちに、話は次へ進んでいく。
心当たりがある方も多いかもしれません。じつは、質問が出てこない原因は、知識不足ではなく、質問の技術を知らないだけなのです。
良い質問はミスを防ぎ、評価を高め、会話の質を変えます。この記事では、その技術を紹介します。
質問をためらう人が知らない、損失と利益
【損失】「わかったつもり」が認識のズレを招く
- 指示を受けて「わかりました」と動き始めたら、成果物が求められていたものと違い、手戻りが発生した
- 理解したつもりが、作業を始めるとわからないことだらけで手が止まった
こうした「わかったつもり」は、ミスの温床です。
調査でも、「認識や理解のズレ」の発生頻度は「月に1、2回」が最多(41.5%)。ズレを感じる場面の第1位は「上司または部下とのやり取り」(69.5%)でした。*1
【利益】質問できる人は「解像度が高い」と評価される
一方で、質問力の高さは次のような評価につながります。*2
- 商談などで聞きたい情報を効率的に収集できる
- 的確な質問で質の高い情報を引き出せる
- 信頼関係の構築につながる
つまり、質問とは「無知を白状する行為」ではなく、「解像度の高さを示す行為」だと言えます。

仕事ができる人の質問技術5選
技術1 相手の話を最後まで聞き、前提を確認する
【使えるシーン】上司からの指示受け・会議・商談全般
質問力が高い人の特徴のひとつに、「相手の話を遮らず、前提を確認する」姿勢があります。*2
相手が話し終わるまで聞き、「〇〇という認識で相違ありませんか」と確認質問を入れるのです。ポイントは、おうむ返しではなく、自分の言葉で言い換えること。
この姿勢はミスを防ぐだけでなく、「理解しようとしてくれている」という安心感を相手に与え、信頼関係の構築にもつながります。聞き切ってから、前提を確認する。この順番が大切です。
技術2 目的を意識して質問する
【使えるシーン】会議・1on1・商談・プレゼン後の質疑応答
質問力が高い人のもうひとつの特徴が、「目的を意識した質問ができる」ことです。*2
「この質問でなにを明らかにしたいのか」を意識する。この目的意識の有無で、問いの質が変わります。
良い質問とは「相手に聞かなければ分からない問い」であり、相手自身も気づきを得るような問いが理想的です。*2
例)
- ×「〇〇ってどういう意味ですか?」と、調べればわかることを聞く
- ○「〇〇には△△のリスクを感じますが、どのようにお考えですか?」と、相手あってこその問いを立てる

技術3 質問で一段掘り下げる
【使えるシーン】会議・相談対応・1on1
「うまくいっていません」「なかなか進まなくて……」。こうした曖昧な発言を「どのあたりで躓いてる?」と一段掘り下げる質問は、問題の本質を炙り出します。基本は、「曖昧な情報を具体的にする」ことです。
段階的な掘り下げの例
最初の発言
「進捗が悪いです」
▼ 掘り下げ1
「どこまでできていて、どこからの進捗が滞っているの?」
回答
「タスクAまではできていますが、タスクBがうまくいきません」
▼ 掘り下げ2
「タスクBのなにがうまくいっていないの?」
回答
「使用するツールが思ったように動かなくて……」
▼ 掘り下げ3
「そのツールでなにをしようとしていたの?」
回答
「テストデータを100件つくりたかったのですが、データの型の指定ができなくて……」
ここまで具体化できれば、具体的な支援に移れます。「具体的にどういうこと?」のひとことで、相手の本当の困りごとにたどり着けるのです。
技術4 沈黙を埋めない
【使えるシーン】全シーン共通
質問のあと相手が黙ると、つい言葉を被せてしまう。これは相手の思考の流れを遮断する行為です。
相手が黙ったとき、それは問いに対して思考を巡らせているサイン。その沈黙を尊重する姿勢が、質問の効果を最大化させます。
技術5 「なぜ」より「どうすれば」で前向きに問う
【使えるシーン】トラブル対応・1on1・振り返りの場面
相手がミスをしたとき、「なぜできなかったの?」と問い詰めても、言い訳やネガティブな思考を招いてしまいます。
声をかけるなら、「どうすればうまくいくと思う?」と、前向きな思考を引き出す問いを選びましょう。
あらゆる角度からの問いかけが相手の成長につながります。*3
例)
- 「どうすればうまくいったと思う?」
- 「次同じ作業をやるなら、どのようにする?」
責任を問うのではなく、未来の解決策を一緒に考える問いを選ぶ。それが建設的なコミュニケーションの基本です。

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5つの技術を使えば、「認識のズレ」や「的外れな質問」を減らせます。すべてを一度に習得する必要はありません。まずは「一段掘り下げる」ことから始めてみませんか?
相手の曖昧な発言に「具体的にどういうこと?」と一度掘り下げるだけで、相手の真意が見えてきます。その体験を重ねるうちに、ほかの技術も身についていきます。
よくある質問(FAQ)
Q. 質問力はどうしたら鍛えられますか?
Q. 質問したあと沈黙が続くと不安になります。どう対処すればいいですか?
Q. 上司に質問するのが怖いです。質問しても大丈夫でしょうか?
Q. 質問すると「詮索している」と思われませんか?
Q. 5つの技術すべてを一度に使うのは難しそうです。
*1: PR TIMES(ALL DIFFERENT株式会社)|ビジネスパーソンが「認識や理解のズレ」を感じる場面、第1位は「上司や部下とのやり取り」と69.5%が回答
*2: グロービス経営大学院 村尾佳子氏|質問力を鍛えるメリットと方法。質問力を高めコミュニケーション能力向上するには
*3: 富士フイルム(ほめ方の伝道師 谷口祥子氏)|コーチングの基本的なやり方とは?/部下の力を引き出す「コーチング」の極意
澤田みのり
大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。