2000円で120時間を買う方法──認知科学が教える〇〇という投資


2000円で120時間を買えると言ったら、信じますか?

時短家電なら何万円、家事代行なら月数万円。それなのに、たった2000円で年間120時間を生み出せる方法があります。

認知科学が明らかにした、最もコスパの良い時間の買い方。でも、多くの人が「そんな時間はない」と言って避けているものです。

この記事では、なぜこの投資が年間120時間を生み出すのか、科学的根拠をもとに解説します。

「読んだのに覚えてない」現象の正体

「スマホで読んだ記事、何だっけ……」
「確かに読んだはずなのに、内容が思い出せない」

こんなふうに感じることはありませんか?

じつはこれ、あなたの記憶力が悪いわけではありません。スマホでの情報収集には、構造的に記憶に残らない仕組みがあるのです。

スマホ情報収集の典型的パターン
  • 通知が来るたびに記事を開く → 読み切らずに次へ
  • タイトルだけ見て「読んだ気」になる
  • 複数のアプリを行き来して、浅く広く流し読み
  • 気になった記事を「あとで読む」に保存 → そのまま忘れる

なぜ記憶に残らないのか

認知心理学では、情報を記憶に定着させるには「深い処理」—— つまり、新しい情報を既存の知識と結びつけて意味を考える作業が必要だとされています。*1

しかしスマホでは、次のような状況になります。

  • 次々と情報が流れてくる(立ち止まって考える余裕がない)
  • 通知で頻繁に中断される(思考が深まらない)
  • 浅く広く、流し読みになる(知識と結びつける前に忘れる)

結果、情報はワーキングメモリに一瞬載るだけで、長期記憶に転送されずに消えていきます。

これが「読んだはずなのに覚えてない」現象の正体です。あなたの記憶力の問題ではなく、スマホという媒体の特性なのです。

スマホでの情報収集を10倍効率化する投資

2000円で120時間を生み出す方法。その答えは「本」です。

「本なんて読んでる時間があったら、最新ニュースを追ったほうがいい」

そう思うかもしれません。しかし、ここに大きな誤解があります。

じつは、本を読めば読むほど、スマホでの情報収集が効率化されるのです。なぜなら、本を読むことで得られるのは「情報」ではなく「情報を処理する枠組み」だから。認知科学では、これを「スキーマ」と呼びます。*2

スキーマとは何か

スキーマとは、知識の枠組み・構造のこと。言い換えれば「引き出し」です。

例えば、経済学の本を1冊読むと、次のようなものが得られます。

  • 市場、需要と供給、金利、インフレといった概念
  • それぞれの関係性(金利が上がると投資が減る、など)
  • 全体の構造(マクロ経済とミクロ経済の関係、など)

これらが頭のなかで整理された「引き出し」として形成されます。

すると——

スマホでニュースを見たとき、「これは需要と供給の話だな」「金利政策の影響だな」と瞬時に分類できるようになるのです。

スキーマがあると何が変わるか

既存の知識(スキーマ)と新しい情報が結びつく → 記憶に定着する → 理解も深まる

本でつくったスキーマが「情報処理のOS」として機能し、スマホで得た断片的な情報が、自動的に適切な引き出しに整理されていくのです。

情報が増えるほど、体系が必要になる

「情報収集にはスマホが便利。本を読む必要なんてあるのか?」

こう考える人は多いでしょう。しかし、ここに大きな誤解があります。

じつは、本を読んで体系をつくればつくるほど、スマホで得られる情報の価値が上がるのです。

「情報が多い=理解が深まる」という幻想

心理学者のダニエル・カーネマンは、専門家が情報を増やしても予測の正確さは向上しないが、自信だけは高まるという「情報の錯覚」を指摘しています。*3

つまり、情報量と理解の質は比例しないのです。

体系的知識(スキーマ)がない状態で情報を増やすと、次のようになります。

  • 情報を処理しきれない(頭がパンクする)
  • 何が重要か判断できない(全部が同じに見える)
  • ノイズに埋もれる(結局何も残らない)

逆に、体系があれば次のことが可能になります。

  • 重要な情報を瞬時に選別できる
  • 新しい情報を既存の知識に統合できる
  • 情報収集の効率が10倍になる

情報洪水の時代だからこそ、本という「体系構築ツール」の価値が跳ね上がるのです。

読書は「時間を買う」行為である

「本を読む時間がない」

これは、多くの人が口にする言葉です。しかし、この考え方は根本的に間違っています。

本を読むことは、時間を「使う」のではなく「買う」行為なのです。

1冊5時間の投資が、何百時間を節約する

例えば、経済学の入門書を1冊読むのに5時間かかったとします。一見、5時間の「損失」に思えるかもしれません。

しかし、体系を持たずにスマホで情報収集を続けると、どうなるでしょうか。

体系なしでスマホ情報を追い続けた場合
  • 毎日30分、経済ニュースを読む → ほとんど理解できず、記憶にも残らない
  • 分からない用語を調べる → また別の用語が出てきて、調べ続ける
  • 同じような記事を何度も読む → 新しい理解は得られない
  • 結局、月に15時間を使っても、頭には何も残らない

一方、5時間で本を1冊読んで体系を作れば、その後の情報収集は劇的に変わります。

体系を持ってスマホ情報を見た場合
  • 記事を読めば、瞬時に内容が理解できる
  • 重要な情報だけを選別できる(読む記事が3分の1に減る)
  • 知識が体系に統合され、記憶に残る
  • 月に5時間で、質の高い理解が得られる

つまり、最初の5時間の投資で、毎月10時間を節約できるのです。半年で60時間、1年で120時間。

「本を読む時間がない」のではなく、「本を読まないから、時間が奪われ続けている」のです。

本とスマホの最適な関係——対立ではなく補完

ここまで読んで、「じゃあスマホはやめて、本だけ読めばいいのか?」と思った方もいるかもしれません。

答えはNOです。

本とスマホは対立するものではなく、役割が違うだけなのです。

本の役割:体系的知識を構築(スキーマ形成)
  • ある分野の全体像を理解する
  • 概念間の関係性を学ぶ
  • 論理的思考を訓練する
  • 「情報処理のOS」を頭の中にインストールする
スマホの役割:最新情報のアップデート
  • リアルタイムの動向を追う
  • 速報やトレンドをキャッチする
  • 具体例や最新事例を集める
  • OSにデータを入力して、知識をアップデートする

この2つを組み合わせると、情報処理能力が圧倒的に上がります。

本でつくったスキーマに、スマホで得た断片を統合する。これが最も効率的な学習法です。

***

スマホで情報が頭に入らないのは、あなたの能力の問題ではありません。体系的知識(スキーマ)がないまま情報を浴び続けているだけです。

本を読む5時間は、あなたの何百時間を節約します。読書は時間を使う行為ではなく、時間を買う行為なのです。

この記事は、「スマホを捨てて本を読め」というお説教ではありません。スマホとKindleを両方ポケットに入れて出かけよう、という話です。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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