「スマホならいくらでも文章が読めるのに、読書は苦手」——そんなあなたのための、3つの読書量アップ法

本棚の前に積まれた本

TwitterやInstagramのタイムラインを何時間でもスクロールできる。
ニュースサイトの長文記事も読める。
友人とのLINEは何往復もできる。

スマホでは文字を読むのが得意なはずの私たちなのに、なぜか本を開くと途端に腰が重くなってしまう——。

「勉強しなきゃ」と思って買った本が、結局は積読になってしまう。そんな経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。

本記事では、読書家として知られる著名人らが実践している「本を確実に読み切るコツ」を参考に、読書量を自然にアップさせる3つの方法をご紹介します。せっかく手に入れた本を無駄にしないために、ぜひご一読ください。

1. 本は自分にとって「新鮮」なうちに読む

本屋さんに並ぶ本を見て、「あ、おもしろそう」「勉強に役立ちそう」と感じたとき、あなたはその本の中身に興味津々なのではないでしょうか。その気持ちが、いつの間にかなくなってしまうのはなぜでしょう?

――その答えは、「本の鮮度が落ちてしまう」からです。ただしここでいう「鮮度」とは、紙の劣化ではありません。本を手に取った時のあなたの「やる気」や「問題意識」、そして「好奇心」の鮮度のことです。

本屋で「これだ!」と思った時、あなたの中には具体的な目的や期待があるはずです。「この資格を取りたい」「この業界のトレンドを知りたい」「この技術を学びたい」――。でも、その切実さや具体性は、時間とともに薄れていってしまいます。

ロングセラー『ゼロ秒思考』(ダイヤモンド社,2013)の著者・赤羽雄二氏は自身の「X」で、【マッキンゼー流】効果的な本の読み方のひとつとして、以下を伝えています。*1

⑥本を買ったら積読せず、すぐに読み始める ・本には鮮度があります。自分の問題意識、関心が高いうちに読むほうがいいです

明治大学文学部教授の齋藤孝氏も、「本は買ったその日が勝負」だと述べ、「本も魚と同じように、新鮮なうちにさばいておくといい」と伝えています。なぜならば、「読書する気持ちが最も高まっているのは、本を買ったその日」であるからです。*2

そこで齋藤氏は、本を買った時の「やる気」を逃さないために、こんな段取りをアドバイスしています。

  1. 本を買ったら、その足で近くのカフェに入る
  2. ドリンクを買って席についたら、すぐに買った本をパラパラめくる
  3. 10分ほどでザッと内容をチェックして、大まかな内容をつかむ

つまり、本を買うという能動的な行動をした直後の、その行動エネルギーをそのまま読書に活かすのです。家に持ち帰ってしまうと「また今度でいいや」という後回し習慣に支配されがちですが、このルーティンを実践することで、積読本もだいぶ減ってくるのではないでしょうか。

買ったばかりの本のおおまかな内容をチェックするビジネスパーソン

2. 本を「スマホ」のように読む

あなたは今、このStudyHackerの記事をスマホで読んでいるかもしれません。XもLINEも文章だらけですが、それでも多くの人が難なくそれを読み進めています。

実は現代人は「読む」のが苦手なわけではありません。


なのに、なぜ本を開くと途端に腰が重くなるのでしょう?
それは、私たちが「本の読み方」に縛られているからかもしれません。

その考えをやめて、本もスマホのように読んでみませんか?

学習法・速読・記憶術インストラクター、トレスペクト教育研究所代表の宇都出雅巳氏は、まるでスマホを見るような読書を推奨しています。読みたいところを読みたいように、気楽に読んでいけば、もっとラクに集中して読めるのではないかと同氏。*3

その背景には、「ページの最初から順番に読まなければならない」「飛ばし読みは良くない」という固定観念が、読書のハードルを上げてしまっている状況が存在します。*4

そうしたことから宇都出氏は、従来の読書法を手放すようすすめているのです。*3

ただ、「ネットサーフィンには慣れているが、紙の本をそれと同じようにするのは難しい」という方も多いでしょう。

その場合は、まず目次や見出しでザッと全体像をつかむという、宇都出氏のアドバイスを参考にしてみてください。それにより、以下の効果が生まれるといいます。*4

  • 頭のなかが整理しやすくなる
  • 予測をしながら本文を読み進めることができる
  • どの部分を重点的に読むべきかが把握できる
  • 自分が興味のあるページが見つかる

ですから、本を開いてまず目次を見て、それからパラパラと本をめくった際に目に入る見出しでザッと全体像をつかんだら、あとは興味のあるページ、特に学びたいページを優先し、好きなところにジャンプしながら読んでいけばいいのです。紙の本がスマホのように自由な読み物になれば、学びも活発化するでしょう。

積まれた紙の本の前に立てかけられたスマートフォン。その画面には「モバイルブックストア」の文字が。

3. 分厚い本は「物理的に」薄くする。意思の力との意外な関係

もしも、本を開くたびにカバーや帯を邪魔に感じたり、本が重くて読むのも一苦労だと感じたりしていたら、「本を読んで勉強しよう」という気持ちが停滞してしまうかもしれません。それら障害物が、意思力を弱めてしまうからです。

そうしたことから前出の宇都出氏は、読書のハードルを下げるべく、以下をすすめています(STUDY HACKER|宇都出雅巳氏インタビューより)。

  • 本のカバーは取り外す
  • 表紙が厚いハードカバーの場合は表紙を切り落とす
  • 分厚い本の場合は解体して数冊の薄い本にしてしまう

カバーを取り外すのはいいとして、表紙を切り落とすのも、解体するのもかなり大胆――というか、そんなことしていいの? と思ってしまいます。

しかし、宇都出氏は、分厚い本などは「手に取るだけでエネルギーを使ってしまう」と述べ、次のように説明しています。

読もうと思った瞬間にすっと読み始められれば、時間もウィルパワーも無駄にすることなく、回転の効率が高まります。

(引用元:STUDY HACKER|宇都出雅巳氏インタビューより)

同氏が言うウィルパワーとは、意志力のこと。アメリカの社会心理学者、ロイ・バウマイスター氏らはその意志力が、「筋肉のように疲労し、また鍛えることができる」と明らかにしています。ウィルパワーについて書かれたバウマイスター氏ら著書の紹介ページには、「大切なのは、いかに意志力を温存し、使わないようにできるかだ」との記述もあります。*5

つまり、宇都出氏は、ウィルパワーを節約して読書に集中できる状態をつくるため、頑張らなくてもラクにページをめくれる本の加工方法を、提案してくれているのです。

本を解体するのはもったいないと思うか、それともその本を生かさずに、積読にしてしまうほうがもったいないと思うか……。どう判断するかは、あなた次第……!

とりあえず、カバーや帯を外すのは躊躇なくできると思うので、さっそく実践してみてはいかがでしょう。

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本記事では、買った本をしっかりと勉強に活かすため、読書家で知られる著名人が実践している方法などを参考に、「勉強しようと思って本を買ったら、まず一番最初にするべき3つのこと」を紹介しました。

よろしければ、取り組みやすいものから始めてみてください。

【ライタープロフィール】
上川万葉

法学部を卒業後、大学院でヨーロッパ近現代史を研究。ドイツ語・チェコ語の学習経験がある。司書と学芸員の資格をもち、大学図書館で10年以上勤務した。特にリサーチや書籍紹介を得意としており、勉強法や働き方にまつわる記事を多く執筆している。

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