自己啓発本、ビジネススキル本、専門書。
「これは役に立ちそうだ」と思って手に取ったのに、読み終えたあとは結局何も実践していない——そんな経験はありませんか?
読書中は「これは使える」と感じていたはずが、日常の業務に戻るうちに内容を忘れ、気がつけばもとのとおり……。
時間をかけて読んだのに何も変わらないことに、焦りやもったいなさを覚えた方も多いのではないでしょうか。
こうした「読みっぱなし」を防ぎ、読書の成果を実務に結びつけるには、読書とあわせて実践したい3つのアクションがあります。
この記事では、筆者の実践例も交えながらその具体的な方法を解説します。
読書したのに仕事に活かせない理由
「これは仕事に活かせそうだ」と感じたにもかかわらず、そのまま内容を忘れてしまう——このようなことは珍しくありません。
というのも、人間の記憶は放っておくと自然に薄れていくからです。
ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスが提唱した忘却曲線(時間の経過と記憶の関係を表した曲線)によると、
1日後には74%
1週間後には77%
1か月後には79%
の記憶を忘れてしまうことがわかっています。*1
つまり、何もしなければ、せっかく得た知識も記憶から抜け落ちてしまうのです。
では、どのようにすれば読んだ内容をしっかり記憶し、実務に活かせるのでしょうか?
カギとなるのは「アウトプット」です。
脳内科医の加藤俊徳氏は、「アウトプットを繰り返すほど、脳はよく働いて記憶力も高まる」と述べ、以下の方法をすすめています。
脳科学的にいちばんおすすめするのは、アウトプットを意識しながらインプットをし、そこで考えたことをノートなどに書き出して、誰かに説明するように話すというアウトプットのミルフィーユ状態を作り出すことです。 *2
つまり、読書をしているときから「得た情報をどのように使うか」を意識し、それを実際に書いたり話したりしてみることが記憶を強化し、行動へつなげる近道となるのです。
以上を踏まえて、次項ではさらに具体的に「読書を仕事に活かす3ステップ」をご紹介します。
読書を仕事に活かす3ステップ
1. 目的を書き出す
まず大切なのは「何のためにこの本を読むのか」を明確にすること。
ただ漠然と「役に立ちそう」という動機では、内容が頭に入りにくく、行動にも移しづらくなります。
たとえば、「資料作成スキルを高めたい」「部下とのコミュニケーションを改善したい」といったように、具体的な業務課題と結びつけて目的を定義することで、インプットの質が向上します。
2. 3行で記す3つのアクション
読了後は、以下の情報をコンパクトにまとめた「3行ノート」を作成しましょう。
これは、手帳を活用した目標達成メソッドで自己実現のためのコーチングを手掛ける高田晃氏が提唱するノート術です。
高田氏自身が、読書で得た知識を行動につなげるために、試行錯誤して生み出したもの。*3
以下の内容を書き出します。
読み終えた日付
書籍名
著者名
○△×の3段階でのその本に対する評価
その本を読んで「これをやってみよう」と決めた3つのアクション *3
ポイントは、行動を「3つだけ」に絞ること。
それは選択肢が多すぎると実行に移しにくくなるからです。
自分にとって本当に必要な行動を明確にすることで、知識が実務に変わる準備が整います。
3. 24時間以内に実践する
「3行ノート」に記したアクションは、24時間以内に実行することをおすすめします。
たとえば「タスク管理は3つの優先事項に絞る」というアクションを書いたなら、翌日のToDoリスト作成時に試してみるのです。
即実践することこそが、読書を行動に変える最大のポイントです。
実際に筆者が実践してみた
筆者は、記事の構成力や説得力を向上させたいと考え、ライティングスキルの学び直しをしています。
そのため、今回はライティングスキルについての本を使って、読書を仕事に活かす3ステップを実践しました。
1. 目的を書き出す
まず目的は、「文章の質を高めること」にしました。
2. 3行で記す3つのアクション
次に「3行ノート」としてアクションを書いていきます。
本を読み終えた後、以下のように記録しました。
目的:文章の質を高めること
読み終えた日付:2025/3/5(水)
タイトル:文章が苦手だった元新聞記者のライティング術
著者:根本毅
評価:○
さらに、「実践する3つのアクション」を記入していきます。
・【執筆】順接の「が」は避ける(逆説にとらえやすいため)
・【推敲】横書きで書いた文はたて書きで読み直す(逆も同じ)
※実践画像はすべて筆者が作成した
3. 24時間以内に実践する
そして24時間以内に、早速この3つのアクションを実践してみました。
・【執筆】タイトル・序文など、「つかみ」で関心を引くことをあらためて心がける
・【推敲】横書きで書いた文は縦書きに変換して読む
このふたつのアクションはすぐに実行できたため、この時点で読書を仕事に活かせた実感がわきました。
しかし、
・【執筆】順接の「が」は避ける(逆説にとらえやすいため)
このアクションは、該当表現がもともと使われておらず、チェックで終了。
この経験から、実践項目は「自分に必要かどうか」を見極めて選ぶことが大切だと感じました。
学びを仕事に活かしやすくなった
本を読んでも行動が伴わなければ、得た知識はやがて忘れ去られてしまいます。
一方で、読書の目的を明確にし、行動計画を立て、すぐに実践すれば知識は確かなスキルへと昇華します。
「読んだのに何も変わらなかった」と感じているなら、ぜひ次の3ステップを取り入れてみてください。
- 読書の目的を明確にする
- 3つのアクションを3行で書く
- 24時間以内に実践する
この小さな習慣が、あなたの読書を「学び」から「成果」へと変えてくれるはずです。
***
知識を得るだけで終わらせず、読んだ内容を実際の仕事に活かすことが、読書を価値あるものに変えます。
本を読んでも「結局何も変わらなかった」とがっかりしているなら、本記事で紹介した3つのステップを試してみてください。
「学んだことを活かせている」という具体的な手応えを感じられるはずです。
※引用の太字は編集部が施した
*1 一般社団法人日本経営心理士協会|エビングハウスの忘却曲線
*2 ゴールドオンライン|覚えたはずなのに思い出せない…!「記憶力を高めるため」に大事なこと【脳内科医が解説】
*3 STUDY HACKER|本を読んでも「いいこと書いてるなあ」で終わる人に最適。読書を行動に結びつける「3行ノート」
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。