情報社会の超重要スキル『読解力』を一気に高める、"たった2つの原則"とは

読書している様子

「仕事の資料を読んでも頭のなかに入らない……」
「いろいろ資格をとってはいるけど、AIに代替できないようなビジネスパーソンになれるだろうか……」

上記の悩みを抱えている人は、「読解力のリスキリング」に挑戦してみてはいかがでしょうか。じつはいまの時代に何より求められているのは、「読解力」なのです。

今回の記事では「読解力を高めるための方法」を2つ紹介します。ぜひ、ご一読ください。

AIの時代に「読解力のリスキリング」が大切な理由

文章を読む力といえば、漢字が読める「識字能力」を想像するかもしれません。しかし、AIの時代に対応していくには、もう少しレベルを引き上げ「読解力」を高める必要があります。

AIを活用する時代こそ、「読解力のリスキリング」が重要と語るのは、ベストセラー「AI vs.教科書が読めない子どもたち」(東洋経済新報社)の著者、教育のための科学研究所 代表理事・所長の新井紀子氏。というのも、

「AIのことを知る」ということは「AIのできないことを知る」ということでもあります。*1

ここで指している読解力とは深く考察して「AIの仕組みを学ぶ」こと。たとえば、読解力が低ければ、AIの使い方がわかったとしても、マニュアル通りの操作しかできません。しかし、読解力があれば、「AIにはどんな仕事ができないのか」「AIをどう活用すれば仕事の質を高められるのか」といった判断ができるようになります。変化の激しい時代を生き抜くために、読解力は欠かせないスキルなのです。

ただし、読解力を高めるために単に本をたくさん読むのでは、時間がかかりすぎてしまいます。そこで効果的な読み方を身につけ、時代の変化に追いつかれる前に読解力を向上させましょう。

読書している男性

1. 思い込みを疑いながら読む

「文章を正しく読む」ことの妨げになっている要因のひとつは、自身の思い込みだと専門家は指摘します。

拡散性の高いSNSで発信者の意図とは違う大きな反響を起こしてしまう——SNSを使っている人なら、よく目にしている現象でしょう。グロービス経営大学院の副研究科長、村尾佳子氏は「情報の一部分だけを切り取る人が増えている」と語ります。

だからこそ、懸念されるのが以下のようなこと。

自身の思い込みや主観が入る余地が大きくなり、本来相手が伝えたかった内容と大きくずれてしまう可能性が高まります。*2

受け取る側は自分の身の回りにある出来事に結びつけて、発信者の意図から逸れた解釈をしてしまうのです。詩や小説などの創作物では自由な解釈が許されますが、勉強のための専門書やビジネス書では、著者が主張するものを歪めて読むことはできません。

では、思い込みや主観で読むことを避けるためには、どうすればいいのでしょうか。それは「著者の意見と一般論」を区別すること。

『読み解くための現代文単語[評論・小説]』(文英堂)の著者であり、ロースクールで講師を勤める小柴大輔氏は、最もまずい読み方は「書かれたものが、すべてその話者・筆者の意見ととらえる誤解」だと指摘します。*3

有名な福沢諭吉の『学問のすすめ』。多くの人は、次の文が印象に残っているでしょう。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と言えり *3

ただ、これは福沢諭吉が「最初に一般論を述べた」だけ。この文だけで「人は平等だと福沢諭吉が言っている」と解釈し、その思い込みが邪魔をすれば次の文を理解するのは難しくなります。小柴氏は福沢諭吉が最初に述べた文を「対比相手」だと述べます。

「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」のあとに続くのは「賢い人も愚かな人もいる」「裕福な人も貧乏な人もいる」——では、その違いは何によって決まるのだろう? ここが核心部分、つまり冒頭の対比となるわけです。*3

たとえば、「いまの若者は○○だ」という文章を読むとき、多くの人は即座に「著者は若者を批判している」と受け取りがちです。しかし、その文章のあとに「それは時代の変化によるもので、むしろ強みといえる」という著者の本意が続くかもしれません。最初の「いまの若者は○○だ」という文は、著者の意見ではなく、一般的に言われている認識を示しただけかもしれないのです。

文章を読む際には「筆者の意見」と「そうでないもの(意見と対比しているもの)」を整理して読むことで、思い込みによる誤読を避けられます。

「この文は著者の意見? それとも主張と対比するもの?」と考えながら、ゆっくり読んでみてくださいね。

筆者の意見と一般論を混同している様子

2. 接続詞に注目して構造を読む

文章を読み解くうえで意味を早く掴むためには、構造を知ることが大切です。構造を知るためのキーとなるのは「接続詞」です。

私たちは日常会話でも、無意識に「話の展開」を予測しています。たとえば、同僚から「ちょっと相談があるんだけど……」と切り出されたとき、そのあとにどんな話が続くのか考えながら聞いているはずです。ただの他愛のない雑談なら、会話の目的を推測することもありません。でも、話者が何かを伝えたい場合、多くの人は会話がどこへ流れるのか考えながら相手の意図を汲みますよね。

文章も同じく文の流れを掴めるのとそうでないのとでは、文章の理解度に大きく差が開くのです。そこで、あらかじめ文章の構造を知る必要があります。

『東大式目標達成思考』著者であり、高校生のコーチングを行なっている相生昌悟氏は、文章を読み解くには「構造の理解」が必要だと述べます。その際、次の文を想定するための手がかりとなるのが「接続詞」なのだそうです。

相生氏は「接続詞」には次の原則があると説明します。

最初:always/most of/we/tend to、「私たちは」「いつも」「~な経験はないだろうか」などが多い

→そこで書かれていることが次の段落では否定される場合が圧倒的に多い


第二段落~中盤:but/however/yet、「しかし」「でも」「実は」などが多い

→そこで書かれていることが前の段落の否定であり、文全体の趣旨であることが圧倒的に多い。


中盤以降~後半:therefore/for example/for instance、「つまり」「要するに」などが多い

→そこで書かれていることは文の趣旨の詳しい説明であり、前の段落の具体例であることが多い。*4

では実際に以下の文章で次にくる文を考えながら、読んでみてください。

「勉強の成果が伸びないのは、努力ややる気が足りないせい」——成果が伸び悩むと自分の怠惰な性格のせいだと私たちは考えがちです。

でも、それは本当に「努力ややる気がない」性格の問題なのでしょうか。じつは脳研究者によれば、「やる気」とは「やる気のない人間によって創作された虚構」なのだそうです。

つまり、勉強の成果が伸びないのは怠惰な性格のせいではありません。正しい戦略を学んでないからなのです。

頭のなかで以下のように予測しながら読み進めることができたのではないでしょうか。

最初の一般的な認識
「勉強の成果が伸びないのは
努力ややる気が足りないせい」
(we/tend to)


否定の展開が予測される

否定・転換
「でも、本当にそうか?」
脳研究者の見解提示
(but/however)


主張が示され具体例への準備

結論・まとめ
「つまり、性格は関係ない。
戦略の問題である」
(therefore)


結論に対する詳細な説明や具体例が続く

読者のみなさんにとっては簡単な文章かもしれませんが、このような文章構造のパターンは、さまざまな文章に応用できます。文章の流れが変わるポイントは「接続詞」。「次は否定がくる」「次は全体の主旨かな?」と予測できれば、文章をどんどん速く理解できます。そして構造がわかれば、読解力もグッと高まるはずですよ。

***
読解力の高さは資料の読み込みだけでなく、AI時代に対応するための重要なスキルです。「先を読む」深い力こそ、一流のビジネスパーソンに求められるものではないでしょうか。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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