知らない分野の本は「4つの枠」で読む。初心者ほど深く理解できる『REAPメソッド』実践レポート

REAPメソッドやってみた

新しい分野の入門書を開いてみたものの、慣れない用語に阻まれて、同じ行を何度も読み返してしまう。数ページ進んだところで、最初に書いてあった内容をもう思い出せない。

知らない分野を学ぶときほど、「読んでいるのに頭に入ってこない」という壁にぶつかりがちです。多くの読書術が事前の知識や疑問を前提としているため、初心者にはハードルが高いという事情もあります。

そこでおすすめしたいのが、予備知識ゼロでも実践できる読書ノート術「REAP(リープ)メソッド」。この記事では、その概要とやり方を、筆者の実践例とともにご紹介します。

REAPメソッドとは何か

REAPメソッドとは、教育学者であるマリリン・イーネット氏とアンソニー・マンゾ氏によって、1976年に米ミズーリ大学カンザスシティ校で開発された読書ノート術です。*1

"REAP" は以下4つの頭文字をとったもので、読むジャンルの予備知識がなくても使えるという特徴があります。

  • Read(読む)
  • Encode(自分の言葉に置き換える)
  • Annotate(要点を抜き出す)
  • Ponder(熟考する)

文章を読むプロセスをRead・Encode・Annotate・Ponderの4つに分解し、能動的な読書と批判的思考を育てます。同じ文章に何度も立ち返って毎回異なる視点から読み返すため、内容の深い理解につながるメリットも。*1

たとえばSQ4R読書術では「質問を立てながら読む」という工程がありますが、予備知識がなければ何を疑問にもてばいいかわからないかもしれません。K-W-L表も「すでに知っていること(Know)」を起点に整理していきますが、初学者だとその「知っていること」自体が少ない場合もあるでしょう。

一方REAPメソッドは、読みながら理解を深めていく方法のため初学者に最適です。

REAPメソッドの4ステップ

REAPメソッドのやり方を、筆者の実践を交えながらご紹介します。今回筆者が実践で使ったのは『世界をよみとく「暦」の不思議』(イースト・プレス)です。

準備マトリクス図を用意する

紙面にマトリクス図を書きます。

REAPメソッド実施前

画像は筆者にて作成

ステップ1Read(読む)

「大まかな全体像をつかむ」のを目的とし、文章全体をざっくり読みます。

章ごとだとボリュームが多く、情報の詰め込みになってしまいそうだと感じたので、今回は節ごとに読みました。マトリクスの左上に、章タイトルとトピックをメモします。

マトリクスの左上に章タイトルとトピックをメモした様子

画像は筆者にて作成

ステップ2Encode(自分の言葉に置き換える)

マトリクスの右上に、読んだ内容を自分の言葉でメモします。

マトリクスの右上に読んだ内容を自分の言葉でメモした様子

画像は筆者にて作成

内容を忘れてしまっている場合は、再度文章を読み返します。

ステップ3Annotate(要点を抜き出す)

マトリクスの左下に、読んだ箇所の要点を書き出します。ステップ2のときと同様、何度でも文章を読み返してかまいません。

マトリクスの左下に読んだ箇所の要点を書き出した様子

画像は筆者にて作成

ステップ4Ponder(熟考する)

マトリクスの右下に考察を書き込みます。読んでいて疑問に感じたことや気づき、「もし〜だったら?」「本にはこう書いてあるけど、それは本当だろうか?」と考察を深めていきましょう。

マトリクスの右下に考察を書き込んだ様子

画像は筆者にて作成

これで4つの枠がすべて埋まり、ひとつの節に対する「読解」と「自分なりの解釈」がひとつのマトリクスに集約されました。

単に「読んだ」という達成感だけで終わらせず、読んで得た知識を自分の血肉に変える。これがPonder(熟考)のステップがもたらす最大の効果です。

そのあとも節ごとに同じ手順で書き出していきました。その様子がこちらです。

REAPメソッド実践レポート

知識を整理しながら読み進められるので、「前半の内容を思い出せない」「覚えていないのに、読んだつもりになってしまう」という状況を防げたのを実感しています。

実証研究からも、REAPメソッドの効果は検証されています。中等学校の英語学習者を対象に、REAPメソッドとコーネルノート式を12週間にわたって比較した研究では、どちらの手法を用いたグループも、通常の授業のみを受けたグループに比べて、批判的に文章を読む力が有意に向上しました。*2

この結果は、テキストに何度も立ち返り、批判的に向き合うことが読解力向上の鍵であることを示唆しています。REAPメソッドは、それを実現するのに効果的な手段なのです。

REAPメソッドの注意点・向いていない場面

初学分野の理解を深めるのにぴったりのREAPメソッドですが、時間や集中力を要するため、すべての読書に向いているわけではありません。

【向いていない場面】

情報収集が目的のとき

要点だけ拾えればいい場合、4つのステップをふむ手間がコストに見合わない可能性があります。

リアルタイムにノートをとるとき

REAPメソッドは何度もテキストに立ち返ることを前提としているため、流れを止められない場面には向きません。

正確な暗記を求められるとき

語彙の暗記や資格試験における知識の詰め込みなど、深い考察よりも正確に記憶することを求められる場面には適しません。

図表や計算が中心のテキストを読むとき

REAPメソッドは文章による論述に適した方法のため、数式や図解が中心のテキストには不向きです。

【向いている場面】

新しい分野を学ぶとき

難解で文章が頭に入ってこないとき

自分なりの意見をもちたいとき

仕事や日常に活かしたいとき

著者の主張を読み解きたいとき

既存知識の肉付けや復習をしたいとき

このように、REAPメソッドは「速くたくさん読む」よりも「一冊から得られる知識を最大化する」ことに特化した手法です。

***

予備知識がなくても、「読む・置き換える・抜き出す・熟考する」の流れで初めての分野への理解を深められるREAPメソッド。まずは手元にある1冊の、1章分だけで試してみてください。

ノートに書き出す作業を通じて、ただ読み流すだけでは気づけなかった発見が生まれるはずです。読書の質そのものを見直すきっかけにもなるにちがいありません。

よくある質問(FAQ)

Q. REAPメソッドにはどのくらい時間がかかりますか?
REAPメソッドは4つのステップを繰り返すため、通常の読書よりも時間がかかります。1冊の本全体に適用する場合は数日~数週間必要ですが、1章や特定の節だけに絞れば、1~2時間程度で実践できます。重要なのは「時間をかけること」ではなく、「理解の深さ」を優先することです。
Q. 紙とペンでなくデジタル(パソコンやタブレット)で実践できますか?

はい、可能です。REAPメソッドの本質は「Read・Encode・Annotate・Ponder」の4ステップを意識的に実践することなので、ツールは問いません。デジタルノートアプリや表計算ソフトを使用して、マトリクス図を作成することもできます。ただし、東京大学教授の酒井邦嘉氏らの研究では、スマートフォンなどの電子機器よりも紙に手書きしたほうが記憶の定着(記銘)にかかる時間が短く、思い出す際には記憶や言語に関わる脳領野の活動が高まることが示されています。*3

記憶への定着を重視するなら、紙での実践がおすすめです。

Q. 初心者向けとのことですが、上級者が使用しても効果はありますか?
もちろんです。REAPメソッドは初心者向けというだけで、上級者にも有効です。むしろ、専門分野を深めたい上級者が、異なる視点から既存知識を再検証する際に有力なツールとなります。難しい学術論文やテキストを読む際にも、Ponder(熟考)のステップにおいて、より高度な批判的思考が生まれる可能性があります。
Q. ほかの読書術(SQ4Rやマインドマップなど)と組み合わせることはできますか?
はい、組み合わせることは可能です。実際、REAPメソッドで基本的な理解を深めたあと、SQ4Rで質問を立てたり、マインドマップで知識を整理したりするなど、段階的に異なる手法を組み合わせることで、さらに学習効果を高められます。ただし、最初はひとつの手法に集中し、習得してから組み合わせることをおすすめします。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。