「何もしない休み」は、回復しない? 実は積極的な○○が、あなたの疲労を癒やします。


ダラダラしている女性

心待ちにしていたお盆休み。「今回は、もう何もしないぞ」

日頃の疲れを取るには、徹底的にダラダラするのがいちばん。そう考えて、実際に何もしないで過ごした。

ところが休み明け、なぜか休む前より疲れていた。そんな経験はありませんか?

多くの方は「休み方が悪かったのかな」と思いがちです。しかし休暇の研究を調べると、じつは原因は、「休み=何もしないこと」という思い込みそのものにあるようなのです。

しかも研究では、休みの日に「何かを学んだ人」のほうが、休み明けの消耗が少ない可能性が示されています。この記事では、その理由と、今年のお盆からできる「回復する休み方」を紹介します。

「何もしない休み」は、疲れを止めても回復はさせない

「ちゃんと休んだはずなのに、月曜の朝がつらい」

じつはこれは、あなただけの現象ではありません。

休暇の効果を調べたde Bloomらのメタ分析では、休暇は心身の健康にプラスの効果を持つものの、その効果は仕事に戻ると1週間から数週間ほどで薄れていくことが示されています。*1

休暇の効果は思った以上に「短命」なのです。

そして、効果が短時間で消えること以上に注目したいのは、休みの長さより「休みの中身」のほうが、回復を左右するらしいという点です。

一日中ソファで過ごす休みは、たしかに消耗を「止めて」くれます。でも、それだけでは何も「補充」されません。空っぽのタンクのまま、月曜が来てしまうのです。

つまり考えるべきは、「どれだけ休むか」ではなく「休みで何を補充するか」なのです。

回復には4つの条件がある。

では、何が補充につながるのでしょうか。

心理学者のソネンタークとフリッツは、仕事からの回復につながる休み時間の過ごし方を、4つの体験に整理しました。*2

1. 仕事のことを考えない「心理的距離」

2. 心身をゆるめる「リラックス」

3. 時間の使い方を自分で決める「コントロール」

4. 何かを学び、少し難しいことに挑戦する「熟達」

最初の3つは、聞き覚えのある方も多いと思います。意外なのは、4つめの「熟達」ではないでしょうか。書道をしている女性

じつは、ソネンタークらの研究では、休暇中に熟達を経験した人ほど、休暇後の疲弊が少ないことが示されています。*3

この「リカバリー経験」という考え方は、日本でも厚生労働省の『労働経済の分析』(令和元年版)が、働きがいとの関係とあわせて取り上げています。*4

なぜ学びが回復になるのでしょうか。それは、回復とは「マイナスをゼロに戻すこと」だけではないからです。

何かが少しできるようになったという実感は、自信や前向きな気持ちという新しいエネルギーを生みます。ダラダラ休みが「消耗を止めるだけ」なのに対し、学びのある休みは「エネルギーを作る」休みなのです。

つまり、疲れを取るために必要なのは、何もしない休息ではなく「小さなできた」なのかもしれません。

ただし、仕事の勉強はNG。「回復する学び」の3条件

ここで、大事な注意があります。

「じゃあお盆に資格の勉強を頑張ろう」。そう考えたなら、少し待ってください。それは逆効果になる可能性があります

なぜなら、仕事に直結する勉強は、頭が仕事から離れないからです。先ほどの4条件のひとつ「心理的距離」が壊れてしまい、体は休んでいても、頭は出勤し続けている状態になります。

回復につながる学びの条件は、次の3つです。

1. 仕事と関係がないこと

昇進にも査定にもつながらない、“役に立たない”学びほど良い休みになります。

2. 楽しくて、少しだけ難しいこと

簡単すぎると達成感がなく、難しすぎると新たなストレスになります。

3. 自分で選んだこと

誰かにやらされた瞬間、それは義務になり、「コントロール」の感覚が失われます。

たとえば、昔挫折した楽器で1曲だけ弾けるようになる。作ったことのない国の料理をレシピから作ってみる。好きな海外ドラマを、字幕なしで1話だけ観てみる。

料理する男性

どれも仕事の役には立ちません。でも、だからこそ回復になるのです。

お盆にひとつだけ。「できるようになった」を持ち帰る

お盆の予定に、仕事と関係のない「ちょっと難しいこと」を1つだけ入れる。それだけで、回復の質が変化します。

学びで休みをぎっしり固めたら、それはもう休みではありません。5日間の休みなら、挑戦は1つで十分です。

残りの時間は、堂々とダラダラしてください。ダラダラが悪いのではなく、ダラダラ「だけ」がもったいないのです。

そして休み明け、自分への問いを変えてみてください。

「ちゃんと休めたか」ではなく、「何かひとつ、できるようになったか」。

その小さな「できた」が、月曜のあなたを支えるエネルギーになるはずです。

***

「何もしない休み」は消耗を止めますが、エネルギーは補充されません。回復のカギは、仕事と関係のない小さな学びや挑戦。お盆の予定に「ちょっと難しいこと」を1つだけ入れて、「できるようになった」を持ち帰りましょう。

お盆のなすときゅうり

よくある質問(FAQ)

Q. 疲れすぎて、休みに何かをする気力がありません。それでも学びを入れるべきですか?
A. 無理に入れる必要はありません。消耗が激しいときは、まず仕事から頭を離してリラックスすることが先です。回復につながる体験には「心理的距離」「リラックス」「コントロール」「熟達」の4つがあり、学び(熟達)はそのひとつにすぎません。少し余裕が出てきたタイミングで、楽しめる範囲の小さな挑戦をひとつ加えてみてください。
Q. 読書やゲームでも「熟達」になりますか?
A. なり得ます。ポイントは、少し難しいことに取り組んで「できるようになった」という実感を得られるかどうかです。歯ごたえのある本を読み切る、ゲームで新しいテクニックを身につけるなど、自分で選んだ楽しい挑戦であれば形式は問いません。
Q. お盆に資格の勉強をどうしても進めたい場合は、どうすればいいですか?
A. 休暇のすべてを勉強に充てるのは避けましょう。仕事に直結する勉強は「心理的距離」を保ちにくく、体は休んでいても頭が休まらないためです。進めたい場合は時間を区切って取り組み、残りの時間は仕事と関係のない過ごし方にあてることをおすすめします。

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。