「勉強しても給料は増えない」—— この言葉に、思わず頷いてしまった経験はありませんか?
長時間労働の毎日、疲れた体で自己啓発本を開くエネルギーもなく、「どうせ努力しても報われない」と諦めかけている人も少なくないでしょう。
しかし、本当にそうなのでしょうか?
テクノロジーの発展が加速する現代では、スキルの "賞味期限" が短くなり、常に新しい知識を吸収し続けることが求められています。特にAIやデータ分析といった分野では、需要と供給のギャップが大きく、適切なスキルを持つ人材に対する報酬は年々上昇傾向にあります。
この記事では、「勉強しても意味がない」という思い込みに挑戦し、リスキリングがキャリアと収入を変える可能性について探ります。
- 1.「勉強しても無駄」と考えてしまう理由
- 2. データが語る「学びの効果」
- 3. ICTスキルで人生を変えた実例
- 4. 企業が求める「これからのスキル」
- 5. 効果的なリスキリングのアプローチ
- 学びが報われる環境を自らつくる
1.「勉強しても無駄」と考えてしまう理由
「学んでも評価されない」「スキルより年功序列」「資格を取っても給料に反映されない」
こうした思いは、日本の雇用慣行と深く関連しています。*1
しかし、こうした状況は急速に変化しています。グローバル化とデジタル化の波は、従来の雇用慣行を根本から揺るがし始めているのです。
2. データが語る「学びの効果」
さまざまな調査によれば、労働者のスキルと収入には明確な相関関係があることが示されています。特に注目すべきは、スキルを「持っているだけ」と「実際に活用している」の違いです。
スキルと収入の関係性に関する重要な知見
資格やスキルを持っていても、それを活かせる環境にいなければ収入増には繋がりにくい*2
特にICT関連スキルは、実際に業務で活用することで初めて収入向上につながる傾向がある*3
適切なスキルを持ち、それを活かせる職場環境にある人ほど、一般的に仕事満足度も高い*2
つまり問題は「学んでも無駄かどうか」ではなく、「学んだことを活かせる環境にいるかどうか」なのです。
3. ICTスキルで人生を変えた実例
データサイエンティストとして活躍する松本健太郎氏のキャリアストーリーは、リスキリングの可能性を如実に示しています。*4
大学卒業後、営業職に就く
営業職で挫折を経験
社内でエンジニア職への異動を提案される
プログラミングを独学で猛勉強
ビッグデータの波が到来
多摩大学大学院でデータサイエンスを学び直し
数々の経験を経て現在に至る
松本氏の例が示唆するのは、変化を恐れず新しい分野に挑戦する勇気とコミットメントの重要性です。彼のようなキャリアチェンジの成功例は珍しくなく、特にテクノロジー分野では、適切なスキルセットを持つことが市場価値の向上に直結することが多いのです。
4. 企業が求める「これからのスキル」
企業のニーズは急速に変化しています。多くの調査が示すように、デジタルトランスフォーメーションの加速により、特に以下のスキルへの需要が高まっています。*5
さらに注目すべきは、AI活用スキルの重要性です。生成AIの発展により、これらのツールを効果的に業務に取り入れられる人材の価値は今後さらに高まると予測されています。*5
5. 効果的なリスキリングのアプローチ
新しいスキルを身につけることは容易ではありませんが、以下のような段階的なアプローチが効果的です。
重要なのは、完璧を目指すのではなく、「継続的な学習と実践」のサイクルを確立することです。小さな成功体験の積み重ねが、やがて大きなキャリアの変化につながります。
学びが報われる環境を自らつくる
「勉強しても給料は増えない」という思い込みは、部分的には事実かもしれませんが、全体像を見れば必ずしも真実ではありません。重要なのは以下の点です。
スキルを「持っているだけ」ではなく「活用する環境」を見つけること*3
市場価値の高いスキル、特にデータやAI関連の能力を磨くこと*5
必要であれば、スキルを活かせる新たな環境に移ることを検討すること
***
変化の激しい現代では、「学ばない」という選択肢のリスクの方が、むしろ高まっています。今日から小さな一歩を踏み出し、継続的な学びの習慣を築くことで、キャリアの可能性は大きく広がるでしょう。
あなたの「学び」が実を結ぶ日は、思ったより近いかもしれません。
*1: 第一生命経済研究所|リスキリング1兆円予算で賃上げできるのか?
*2: 独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)|5人に1人は低スキル、北欧や日本は高度な能力を保持(OECD:2025年1月)
*3 RIETI|スキルアップと賃金アップの関係性
*4: 日経ビジネス電子版|営業で挫折した僕が、データサイエンティストになった事情
*5: パーソルイノベーション|リスキリング支援サービス『Reskilling Camp』 企業におけるリスキリング施策の実態調査(2024年12月版)
こばやしまほ
大学では法学部で憲法・法政策論を専攻。2級FP技能検定に合格するなど、資格勉強の経験も豊富。損害保険会社での勤務を通じ、正確かつ迅速な対応を数多く求められた経験から、思考法やタイムマネジメントなどの効率的な仕事術に大変関心が高く、日々情報収集に努めている。