ベストな睡眠は「朝型か夜型か」で異なる! 人気産業医が“いい睡眠を取るコツ”教えます

穂積桜さんインタビュー「いい睡眠をとるコツ」01

ベッドにいる時間は長いのに、どうもきちんと眠れた気がしない――。そういう人は、「いい睡眠」が取れていない可能性が高いはず。

では、いい睡眠とはどんな睡眠なのでしょうか。16社の産業医を務め、多くのビジネスパーソンの健康管理をしている穂積桜(ほづみ・さくら)先生に、いい睡眠とはどんなものなのか、また、いい睡眠を取るためのコツを教えてもらいました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカット)

そもそも「いい睡眠」とはどんな睡眠?

「いい睡眠」とは、はたしてどんな睡眠のことでしょうか? まず大切なのは、睡眠時間そのもの。というのも、心身の健康を保つためには、最低限必要な睡眠時間があるからです。私は、最短でも1日6時間は寝てほしいと思っています。

100万人を対象にしたアメリカの研究では、「1日7.5時間寝ている人が最も長生きする」という結果が出ていますが、多忙な社会人の場合は、毎日7.5時間の睡眠時間を確保することが難しい人も少なくないでしょう。それでも、やはり6時間は寝てほしいですね。

また、深い睡眠であるノンレム睡眠と浅い睡眠であるレム睡眠のサイクルがきちんとできていることも大切です。睡眠に関する書籍のなかには、「深い睡眠こそが大事」というふうなことが書かれているものもありますが、それは間違い。深い睡眠にも浅い睡眠にも、それぞれに大切な働きがあるからです。

深い睡眠には、成長ホルモンを分泌させたり、免疫力を立て直したりする働きがあります。それこそ、新型コロナウイルスの感染が拡大しているいまなら、非常に重要な働きですよね(2020年4月現在)。一方で、浅い睡眠には、記憶を整理したり定着させたりする働きがあります。これも、勉強熱心なビジネスパーソンにとっては大事な働きではないでしょうか。

穂積桜さんインタビュー「いい睡眠をとるコツ」02

それでは、みなさんはいい睡眠を取れていますか? ここで、いい睡眠を取れているかどうかを判別してみましょう。以下は、睡眠研究で有名な、アメリカのスタンフォード大学の研究で示されたものです。自分の睡眠について、次のチェック項目を満たしているかどうかを確認してみてください

「睡眠の質」チェックリスト

□ ベッドに入って30分以内に眠れる
□ 睡眠中、起床までに起きる回数が1回以下
□ 「眠っている時間」が「ベッドのなかで過ごす時間」の85%以上

穂積桜さんインタビュー「いい睡眠をとるコツ」03

いい睡眠を取るために重要な「光のコントロール」

結果はどうだったでしょうか? ベッドに入って寝るまでに時間がかかりすぎたり、せっかく寝たのに起床までに何度も目が覚めたりしている人は、いい睡眠を取れているとは言えません。では、いい睡眠を取るためのコツを教えましょう。

なにより意識してほしいのは光のコントロール。というのも、私たちの体は、光によって体を覚醒させたり眠気を感じたりするようにできているからです。

イメージしやすいことだと思いますが、朝の太陽の光を浴びると、しっかりと目覚めることができます。そして、そのあと14〜16時間が経つと、今度は眠気を誘発して睡眠を良質なものにする「メラトニン」というホルモンの分泌が始まります。つまり、午後11時に気持ちよく寝たいのなら、午前7〜9時にしっかりと朝日を浴びる必要があるのです。

逆に言えば、そろそろ寝るという時間に強い光を浴びることはご法度。ですから、就寝時刻の1時間くらい前からは、自宅の照明もなるべく暗くしましょう。そのとき、光の「色」にも注意してください。蛍光灯やスマートフォンの光に多く含まれる、ブルーライトと呼ばれる青系の光には、メラトニンの分泌を抑え、覚醒させる働きがあります。

就寝時刻の1時間前からは、スマートフォンは見ないほうがいいでしょうね。また、自宅の照明に関しても、寝る前にはオレンジ系の柔らかい光のものにすることが好ましい。最近なら、明るさを調節する調光機能に加えて、色も変えられる調色機能も備えた照明もありますから、そういった照明を使ってみるのもおすすめです。

穂積桜さんインタビュー「いい睡眠をとるコツ」04

きちんと眠れるための「環境」をつくり込む

また、自分の「クロノタイプ」に注目することも大切です。クロノタイプとは、遺伝的に決まっている、いわゆる朝型か夜型かというタイプのこと(『「朝型or夜型?」を19の質問で判定。これが分かれば、仕事の集中力も成果も評価も上がる!』参照)。朝型か夜型か、あるいは中間型かによって、いい睡眠を取るコツにも違いがあります

朝型の人の場合、朝に強い光を浴びるとさらに朝型が進む可能性が高まります。もちろん、早朝から働く仕事をしている人なら問題ありませんが、一般的な就業時間の職場に勤めている人なら、遮光カーテンを使って、朝に強い光をあまり浴びないようにしましょう。

一方、夜型の人の場合も、夜勤をしている人ならそのままでOKでしょう。でも、やはり一般的な就業時間の職場に勤めているなら、まずはきちんと朝日を浴びることが大切。そして、さらに夜の過ごし方も重要になります。先にお伝えした光のコントロールをより強く意識してください。なるべく早く眠れるための環境をつくり込んでいくのです。

帰宅してから洗い物など家事をしたあとに、「ゆっくりできる時間だ」と、寝る直前までテレビやスマートフォンを見ることはやめたいものです。もし、それらを見たいのなら、帰宅した直後にしましょう。そのあとに、徐々に照明の明るさを落としながら家事をすれば、「午前3時になっても眠くない」なんてことが減っていくはずです。

それから、中間型の人は、自分のコントロール次第で朝型にも夜型にもなるという特徴があります。ですから、自分の生活スタイルを朝型にしたいのか夜型にしたいのかによって、ここまでお伝えした方法を使いわけることが肝要です。

穂積桜さんインタビュー「いい睡眠をとるコツ」05

【穂積桜さん ほかのインタビュー記事はこちら】
「朝型or夜型?」を19の質問で判定。これが分かれば、仕事の集中力も成果も評価も上がる!
意外と多い「自覚なき睡眠不足」の弊害。いい睡眠を取らない社会人は、この先勝ち残れない

睡眠レッスン

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  • 作者:穂積桜
  • セブン&アイ出版
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【プロフィール】
穂積桜(ほづみ・さくら)
日本医師会認定産業医、 精神科専門医、 漢方専門医、臨床心理士。2001年、札幌医科大学医学部を卒業し、札幌医科大学附属病院神経精神科、東京都立松沢病院、久喜すずのき病院において精神科医として研鑽を積む。また、国立病院機構東京医療センター、北里大学東洋医学総合研究所において、内科、東洋医学の知識を幅広く習得。2014 年より、精神科、内科の臨床経験に基づく知識のみならず、人事労務、法律の知識を併せ持つプロフェッショナル産業医として稼働。現在(2019年10月現在)は、産業医として16社を担当する。精神科専門医として軽度から重度までたくさんの患者さんの診療にあたってきたほか、内科・救命センター・東洋医学での経験を積み、常に心身双方からアプローチできる精神科医であるよう心がけている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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