「スケジュール管理がうまくできない……」と悩んでいませんか? 仕事上の膨大なタスクを把握し、作業の優先順位と時間配分を決めるのは大変ですよね。
業務だけでなく、プライペートの時間を勉強や趣味に有効活用するためにも、スケジュール管理能力は必要不可欠です。「スケジュール管理ができない」と感じている人のため、スケジュール管理ができない原因や、スケジュールを組む具体的なステップをご説明しましょう。
スケジュール管理ができない原因
スケジュール管理ができない原因は、スケジュールを作成する段階での「精度」が粗いことにあると考えられます。3種類の「粗さ」と、もうひとつの原因をご説明しましょう。
「タスクの把握」が粗い
まずは、「タスクの把握」における粗さ。
スケジュール管理のスタートは、自分が何をすべきか(タスク)を把握すること。タスクの存在が曖昧だと、スケジュールの組みようがありません。
もちろん、タスクの存在だけでなく、詳しい中身も把握する必要があります。「資料作成」というタスクがあるとしても、タスク完了までの手順を具体的にイメージできなければ、作業を始められません。手順がわからなければ、所要時間もわかりませんね。
「時間の見積もり」が粗い
2つめは、作業に要する「時間の見積もり」における粗さ。スケジュールを組むには、各タスクに関して3つの「時間情報」が必要です。
- どれくらいの時間がかかるか(所要時間)
- いつまでにやるか(締切)
- いつやるか(タイミング)
どれかひとつでも不明だったり曖昧だったりすれば、スケジュールは不完全なまま。所要時間の見積もりが甘ければ、予定時間内にタスクを完了できずスケジュールが崩壊してしまいますし、締切がわからなかったりやるタイミングを決めなかったりすれば、タスクをどんどん後回しにしてしまうでしょう。
また、想定外のトラブルなどによる時間ロスを考えず、ギリギリのスケジュールを組むのも問題です。急ぎの仕事を1件持ち込まれるだけで、計画が破綻します。
「段取り」が粗い
3つめは、「段取り」における粗さ。
タスクには、いますぐやるべきもの/後回しでかまわないもの/じっくり時間をかけるべき重要なものなど、さまざまな種類があります。それぞれの重要性・緊急性を考慮し、優先順位を決める必要があるのです。
NGなのは、「頼まれた順」や「やりたい順」でスケジュールを組むこと。重要な仕事を簡単に終わらせたり、いますぐやるべきことをあとに回したりすれば、成果を出すことは難しいでしょう。
スケジュール管理の意欲がない
そもそも、スケジュール管理が面倒で、こまめなスケジュール管理をサボっているだけなのかもしれません。スケジュールを組む手間を惜しんだり、「覚えておくだけでいいや」と手帳やカレンダーへの記入をサボったりしていませんか?
スケジュール管理に慣れていないと、非常に面倒に感じるかもしれません。しかし、スケジュール管理ができないと、これから説明するように、非常に大きなデメリットが生まれるのです。
スケジュール管理ができないデメリット
スケジュール管理ができないと、以下のようなデメリットが生じる恐れがあります。
生産性が下がる
スケジュール管理が適当だと、「次はどの作業をやろう?」といちいち迷うため、細かなタイムロスが発生します。すぐ片づけるべき仕事を後回しにしたり、些末な仕事に時間をかけすぎて重要な仕事をパッと終わらせたりすることにもなりかねません。
反対に、スケジュール管理ができていれば、各タスクを適切な順番で迷いなくこなせるため、生産性を最大限に高められるでしょう。
失敗が増える
スケジュール管理を怠れば、もちろん仕事でミスが生じます。典型的なのは、アポイントがあったのを忘れたり、約束をダブルブッキングしたり。スケジュールを管理できていれば、このようなミスは起きません。
それに、スケジュールを組まないまま作業を進めれば、締切に間に合わなくなる恐れも。たとえ間に合っても、時間に余裕がないなかで終わらせた仕事では、それなりの成果しか得られないでしょう。
集中力が低下する
スケジュールが定まっていないと、「やり忘れている仕事はないかな」「ほかに優先すべき作業があるんじゃないか?」「次は何をするべきだろう?」と気になり、目の前の仕事に集中できなくなることも。
習慣化コンサルタントの古川武士氏によれば、タスクを書き出すことで記憶の容量が解放され、頭をクリアにできるのだとか。仕事の流れを明確にしておくことで、雑念が消え、目の前の作業に集中できるのです。
時間的・精神的なゆとりがなくなる
スケジュール管理ができていないと、いつも締切に追われ、時間的・精神的なゆとりを失います。周囲への気配りもできず、自分のことで手いっぱいの状態です。残業が増え、ライフワークバランスの崩壊にもつながるでしょう。
しかし、スケジュール管理をして計画的に仕事を進めれば、時間のゆとりが生まれ、仕事もプライベートも充実します。業務体制の見直しやデータの整理、マニュアルの作成・改善といった、プラスアルファの仕事もこなせるでしょう。
つまり、スケジュール管理ができない人とできる人を比べると、以下のようになります。
◆スケジュール管理ができない人
- 生産性が低い
- 優先順位を考えていない
- タスクの存在を忘れる
- 仕事がギリギリになったり、遅れたり
- 集中力が低い
- 時間的・精神的なゆとりがない
- 残業が多い
◆スケジュール管理ができる人
- 生産性が高い
- ミスや締切破りが少ない
- 目の前の仕事に集中できる
- 時間的・精神的ゆとりがある
- プラスアルファの仕事もこなせる
スケジュール管理が「できない人」から「できる人」へ
スケジュール管理が「できない人」から「できる人」になるには、どうすればいいのでしょうか? 業務効率化を促進するアプリケーション「cyzen」を手がけるレッドフォックス株式会社の取締役COO・横溝龍太郎氏の見解などを参考に、5つのステップで解説します。
1. タスクを洗い出す
まずは、スケジュールに組み込みたい作業を、すべて書き出します。この時点では、順番を考慮する必要はありません。抜け・漏れがないよう、全タスクを洗い出しましょう。
◆一日のタスクを書き出す例
- メールのチェック・返信
- 会議で使う資料の作成
- 顧客への電話
- 企画書の作成
2. やる順番を決める
次は、洗い出したタスクの優先順位を決めましょう。このとき役立つのが、経営コンサルタント・生方正也氏が推奨する「アイゼンハワー・マトリクス」です。
アイゼンハワー・マトリクスでは、「重要性」と「緊急性」を考慮し、タスクを以下の4種類に分類します。
- 重要かつ緊急
- 重要だが緊急ではない
- 重要ではないが緊急
- 重要でも緊急でもない
ひとつひとつのタスクについて、重要かどうか、急を要するかどうかを判断しましょう。
- 会議で使う資料の作成:今日の昼までに必ず終えないといけない
→重要かつ緊急
→優先度1位 - 企画書の作成:提出日は1ヶ月以上先
→重要だが緊急ではない
→優先度2位 - メールのチェック・返信:返事の必要なメールが届いているかもしれない
→重要ではないが緊急
→優先度3位 - 顧客への電話:業務上必須ではない
→重要でも緊急でもない
→優先度4位
「緊急性」より「重要性」を優先した結果、このような順番でこなすことになりました。
- 会議で使う資料の作成
- 企画書の作成
- メールのチェック・返信
- 顧客への電話
もちろん、順番を変えるべき場合もあるでしょうが、優先順位を決める基準のひとつとして、アイゼンハワー・マトリクスを活用してみてください。
3. いつまでにやるか決める
タスクをこなす順番を決めたら、いつまでに終わらせるかも決めましょう。
締切を決められている業務には、少し早い「自分のなかでの締切」を設けるのがおすすめです。納期が2月20日なら、17日を自分用の締切にする、という具合。時間的な余裕が生まれ、品質向上や納期厳守につながります。
納期を決められていない業務にも、自分で締切を設けましょう。「時間ができたらやろう」という意識では、いつまでも着手できないままです。
何日もかかる大きいタスクには、「中間締切」も設定します。3月31日が締切なら、「10日までに3分の1完了」「20日までに半分完了」と、小刻みな締切を設けるのです。中間締切をつくることで、よりシビアに進捗をコントロールできます。
◆締切を設定するポイント
- 納期の少し前に「自分のなかの締切」を決める
- 納期が特になくても、自分なりの締切を決める
- 時間のかかるタスクには「中間締切」を決める
◆締切を設定する例
- 会議で使う資料の作成:今日の12時
- 企画書の作成:【第1締切】3月10日【第2締切】3月20日【第3締切】3月30日
- メールのチェック・返信:今日の17時
- 顧客への電話:2月20日12時
4. かかる時間を見積もる
第4のステップは、所要時間の見積もり。これまでの経験をもとに、タスク完了にかかる時間を概算します。
初めてやるタスクの場合、「およそこのくらいだろう」という推測でOK。今回かかった時間を記録し、次回の参考にするため残しておいてください。
時間のかかる大きいタスクは、手順を細分化したうえで、各手順の所要時間を考えましょう。時間管理コンサルタント・水口和彦氏によれば、タスクが小さく単純になるほど、スムーズに取りかかりやすくなるそうです。
とはいえ、タスクの分割が細かすぎると、かえってスケジュールが複雑になってしまう恐れもあります。そこで水口氏が提示する目安が「2時間」。所要時間が2時間を超えそうな場合だけ、タスクを細分化しましょう。
◆所要時間を見積もるポイント
- 過去の経験をもとに概算する
- 未経験の場合は推測でOK
- 2時間以上かかりそうなタスクは細分化する
◆所要時間を見積もる例
- 会議で使う資料の作成:2時間
- 企画書作成:10時間
(リサーチ/データ集計/構成決め/執筆/チェック・修正で各2時間) - 顧客への電話:1時間
- メールのチェック・返信:1時間
5. スケジュール帳にまとめる
最後に、ステップ1~4で得られた情報を、スケジュール帳にまとめましょう。その際、各タスクの開始時刻から終了時刻に線を引きます。こうすることで、時間の長さをイメージしやすくなるのです。
各タスクに必要な「準備時間」や「移動時間」も書いておきましょう。ほかの予定と同様、準備や移動の開始・終了時刻を記入してください。
スケジュールには、あえて余白を残しておきましょう。予定を詰め込んでしまうと、想定外のトラブルや急な仕事に対応できないからです。イレギュラーな出来事はあって当たり前だと考えましょう。
スケジュール管理ができないとお悩みの方は、以上の5ステップを実践してみてくださいね。
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スケジュール管理ができない方は、ご紹介した方法でスケジュールを組み、漏らさず手帳に書き出すことを徹底してみてください。「予定を組む→実行する」を毎日繰り返すうち、スケジュール管理の習慣が身につくでしょう。
水口和彦(2012),『残業ゼロ! 時間管理のコツ39』, 学研プラス.
浜中省吾(2013),『会社員のための究極のタスク管理 「君ならまかせて安心」と言われる仕事術 5つのコツで「時間」と「情報」は自由に使える!』, インプレス.
古川武士(2017),『成果を増やす 働く時間は減らす 高密度仕事術』, かんき出版.
生方正也(2018),『仕事の悩み 問題解決』, 日本能率協会マネジメントセンター.
cyzenマガジン|たった3つ覚えるだけ!今すぐできるスケジュール管理の仕組み。
STUDY HACKER|「時間があるときにやろう」では何も進まない。仕事の先延ばしを防ぐ方法——水口和彦『仕事も学びも効率化 目からウロコの時間管理術』第6回
STUDY HACKER|“想定外” を想定せよ! 時間管理は「矛盾」との戦いだ。——水口和彦『仕事も学びも効率化 目からウロコの時間管理術』第1回
佐藤舜
大学で哲学を専攻し、人文科学系の読書経験が豊富。特に心理学や脳科学分野での執筆を得意としており、200本以上の執筆実績をもつ。幅広いリサーチ経験から記憶術・文章術のノウハウを獲得。「読者の知的好奇心を刺激できるライター」をモットーに、教養を広げるよう努めている。