考えすぎて寝られない夜に。「寝る前の一人反省会」を5分で止める「セルフ・コンパッション」ノート術

一人反省会をする女性ベッドに入って電気を消すと「あのひとこと、変だったかな……」と、一人反省会が始まる。

寝る前に今日のミスを思い出して「周りに迷惑をかけてしまった……」と、ぐるぐる悩んでしまう。

そんな夜を過ごした経験があるビジネスパーソンは多いはず。

反省を活かそうと日記を試しても、疲れた夜に丁寧な記録を続けるのは簡単ではありません。三日坊主になるのは意志が弱いからではなく、やり方が合っていないだけ。

必要なのは、努力や気合いではなく、疲れた心をそっと受け止める小さな仕組みです。本記事では、寝る前わずか5分でできる「セルフ・コンパッション(自分への思いやり)」という考え方を使ったノート術をご紹介します。

自分を責めなくていい。「セルフ・コンパッション」の基本と無理に前向きにならなくていい理由

そもそも、セルフ・コンパッションとはなんなのでしょうか?

落ち込んでいる友人には「大変だったね」と声をかけられるのに、同じ状況の自分には「なんでできないんだ」と厳しくなってしまう。この、他人になら自然と向けられる思いやりを、自分自身にも同じ温度で向け直すこと。それがセルフ・コンパッションです。

では、具体的にどうすれば「自分に思いやりを向けた」ことになるのでしょうか。セルフ・コンパッション研究の第一人者であるクリスティン・ネフ氏は、自身の論考のなかで「3つの要素から自己コンパッションを定義している」と述べています。*1

セルフ・コンパッションとは

1. 自分への優しさ

失敗して落ち込んでいるとき、自分を厳しく責めるのではなく、温かく理解を持って接すること。

2. 共通の人間性

うまくいかないことは、誰にでも起こりうる、人間として避けられない経験だと認識すること。

3. マインドフルネス

つらい気持ちを抑え込んだり否定したりせず、あるがままに受け止めること。

要するに、失敗した自分を責めるのではなく、誰にでも起こりうることだと認め、大切な人にかけるのと同じ優しい言葉を、自分自身にも向けるということです。ぐるぐるとした思考

なぜ、それが夜のぐるぐるに効くのか。鍵は、しんどい気持ちを「追い出す」のではなく「受け止める」点にあります。ミスした夜にやりがちな「もう考えるのはやめよう」という蓋は、じつは逆効果。感情を抑え込むことについて、Psychology Today誌は「根本的な問題を解決しないばかりか、抑え込んだ感情をかえって増幅させうる」と紹介しています。*2

蓋をするほどモヤモヤはかえって膨らみ、目をつぶるとまた同じ場面が再生される。だから、しんどい気持ちを頭から追い出そうとするより、そのまま受け止めるほうが、心の負担はかえって軽くなるのです。

三日坊主にならない寝る前5分ノート術。気持ちを整理する2ステップ

セルフ・コンパッションを実践するには、具体的に何をすればいいのでしょうか。今回は、ぐるぐる思考に陥りがちな寝る前に、5分でできるシンプルな方法をご紹介します。

使うのは、ノートとペンだけ。書くことも、たったふたつです。

ステップ1 今日しんどかったことと、そのときの気持ちを短く書く

例)プレゼン中に緊張して言葉に詰まり、一瞬沈黙ができた。情けなかった。

ステップ2 友人ならどう声をかけるか考え、1行添える

例)「緊張するほど、それだけ準備してきた証拠だよ」

感情ラベリングで客観視する

ぐるぐるしているとき、頭のなかにあるのは「なんか嫌だ」という形のないモヤモヤです。ステップ1では、それを「情けなかった」「悔しかった」「恥ずかしかった」など、そのときの気持ちに合うひとことに置き換えます。

この「気持ちに名前をつける」行為は、心理学で「感情ラベリング」と呼ばれています。しんどい気持ちを言葉にするだけで、不安や恐怖を司る脳の部位「扁桃体」の興奮が鎮まることが、研究で確認されています(ハーバード大学医学部と連携する研究機関、Institute of Coachingの紹介による)。*3

形のなかったモヤモヤが言葉の輪郭を持つと、脳は「一区切りついたこと」として処理しやすくなります。まずは1行、ノートに書き出してみましょう。

感情ラベリング

友人目線で自分にひとこと贈る

ステップ2の「友人ならどう声をかけるか考える」は、ネフ氏が自身の論考のなかで紹介する「セルフ・コンパッション・レター」という実践法がもとになっています。*1

これは、批判せずに受け入れてくれる想像上の友人を思い浮かべる方法です。その友人ならどんな言葉をかけてくれるかを考えながら、自分への手紙を書きます。*1

この考え方を、1行だけ書き添えるシンプルな形にしたのが、ステップ2です。仕事のミスや人間関係のモヤモヤなど、どんな悩みでも書き方は同じです。

夜の「ぐるぐる思考」は本当に消えるのか? 筆者の実践レポート

筆者自身も、夜ベッドに入ってから「一人反省会」を始めてしまうタイプ。そこで実際に、1週間ほど「セルフ・コンパッション」ノート術を試してみました。

寝る前にノートを開き、その日の出来事と気持ち、そして自分へのメッセージを記入。自分へのメッセージだけはひとめでわかるよう、また気分を切り替えられるよう、違う色のペンを使いました。

セルフ・コンパッションノート_1

画像は筆者が作成した

ぐるぐる考えてしまいがちな失敗も、ひとこと書き出すだけで意外とシンプルに捉え直せることに、やってみて気づいたのです。感情に名前をつけることは、思っていた以上に効果がありました。自分とは違う視点からの言葉を受け止めると、気持ちがすっと軽くなる感覚を覚えられたのです。

数日続けるうちに、「ああすればよかった」「こう思われたんじゃないか」というぐるぐる思考も落ち着き、前向きな気持ちでベッドに入れる日が増えていきました。

セルフ・コンパッションノート_2

画像は筆者が作成した

はじめは、「友人目線で自分にひとこと贈る」というイメージが湧きにくいかもしれません。そんなときは、こう考えてみてください。

「仕事でミスしちゃった」と落ち込む友人に、「それはおまえの注意力不足だ!」なんて声をかけることは、まずないはずです。「そういう日もあるよ」「気にしすぎだって」と、自然に優しい言葉が出てくる。それなのに、相手が自分になったとたん、その痛烈な批判を平気で浴びせてしまうのです。

つまり、優しい言葉のかけ方は、すでに知っている。あとは、それを自分にも向けるだけなのです。筆者は「同じことを友人から相談されたら、なんと返すだろうか」を想像しながら書くようにしていました。内容は、共感でも、励ましでも、アドバイスでも構いません。

ノートを開いても、とくに何も思い浮かばない日は、無理に書かなくても大丈夫です。継続そのものが目的ではなく、必要なときに自分を受け止められることが大切です。

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事実と気持ち、そして友人にかけるような優しい言葉を1行。それだけで、今日のモヤモヤに区切りをつけられます。

今夜は自分を責めるのをやめて、疲れた自分に優しい言葉を贈ってみませんか。

よくある質問(FAQ)

Q. しんどかったことが何も思い浮かばない日はどうすればいいですか?
無理に探す必要はありません。特に何もなければ、その日は書かなくて大丈夫です。小さな不満やモヤモヤでもかまいませんので、「今日はまあまあだった」とひとこと書くだけでも、自分を振り返る習慣につながります。
Q. PCやスマホのメモアプリでも効果はありますか?
メモアプリでも実践は可能です。ただし、就寝直前のスマホ操作は画面の光が脳を覚醒させ、寝つきを妨げる可能性があります。可能であれば紙のノートに手書きするほうが、脳への刺激が少なく、この習慣本来の「脳を落ち着かせる」効果を得やすくなります。
Q. 「友人の視点」の言葉がどうしても思い浮かびません。
無理に気の利いた言葉を探さなくても大丈夫です。「大変だったね」「よく頑張ったね」など、シンプルなひとことで十分です。誰かに励まされた経験がある方は、そのときにかけてもらった言葉をそのまま使ってみるのもおすすめです。
Q. 書いているうちに人への愚痴っぽい内容になってしまいます。
最初はそれでもかまいません。慣れてきたら、相手への不満よりも「自分がどう感じたか」という事実と、その気持ちに対する優しい言葉に焦点を当てるようにすると、この習慣本来の効果を得やすくなります。

(参考)

*1: Kristin D. Neff|The Science of Self-Compassion(C. Germer & R. Siegel (Eds.), Wisdom and Compassion in Psychotherapy, Guilford Press, 2012 所収)
*2: Psychology Today|Toxic Positivity
*3: Institute of Coaching|Putting Feelings Into Words: Affect Labeling as Implicit Emotion Regulation

【ライタープロフィール】
藤真唯

大学では日本古典文学を専攻。現在も古典文学や近代文学を読み勉強中。効率のよい学び方にも関心が高く、日々情報収集に努めている。ライターとしては、仕事術・コミュニケーション術に関する執筆経験が豊富。丁寧なリサーチに基づいて分かりやすく伝えることを得意とする。