あなたの時間を奪う犯人は、"記憶" のなかにいない。"記録" で見つける「無意識の非効率習慣」

セルフモニタリング記録シート

「最近、仕事が遅い気がする」「頑張っているつもりなのに、成果が上がらない」。そんな感覚を抱いたまま、今日も1日が終わっていく。

こんなとき、多くの人は「自分の能力が足りないのかもしれない」「もっと頑張らなければ」と、自分を責める方向に考えを向けがちです。

しかし、やり方や気合いを変える前に、試してほしいことがあります。「自分の1日」を客観的に記録してみることです。本記事では、その具体的な方法である「セルフモニタリング」を紹介します。

生産性が上がらないのは、能力のせいではない

限られた時間のなかで充分な価値を生み出せないとき、多くの人は自分の「能力」「努力」「やる気」、さらには「社会人としての資質」にまで目を向けようとします。

ですが、問題の本質は、能力ではなく「無意識のうちに繰り返している非効率な習慣」にあるのかもしれません。たとえば、次のような行動に心当たりはありませんか?

  • 作業計画を立てずに手をつけてしまう
  • 業務中に届くメール通知を反射的に確認してしまう
  • 「自分は自制できる」と過信してしまう

弁護士の谷原誠氏によると、仕事が速い人はこうした行動を避け、「なんとなく始めない」「マルチタスクをしない」「1日を24時間と考えない」ことを徹底しているといいます。*1

マルチタスクをする女性

初動の速さも大切ですが、無計画ゆえに手戻りが発生しては、かえって無駄が増えてしまいます。どんなに自分の計画が完璧だと思っても、仕事には想定外の出来事がつきもの。計画どおりにいくことのほうが少ないかもしれません。

では、こうした無意識の習慣に、どうすれば気づけるのでしょうか。そこで役立つのが「セルフモニタリング」です。

生産性を下げる無意識の習慣を見抜く方法

セルフモニタリングとは、自分の行動を客観的に観察し、記録する手法です。自己効力感を高め、行動変容を起こす手法として知られています。*2

頭のなかだけで「自分は何を無駄にしているのか」と考えるのではなく、日々の行動を記録して客観的に振り返ることで、初めて本当の問題が見えてくるのです。

セルフモニタリングが有効な理由は、人間の認知の「大きな盲点」にあります。多くの人は、これまでの経験や記憶をもとに「自分のやり方」を評価しがちです。しかし、実際の行動と記憶のズレは、思った以上に大きいもの。

たとえば「メールチェックは1日3回程度だ」と思っていても、実際に記録してみると10回以上チェックしているかもしれませんし、「すきま時間のSNSは合計30分程度だ」と思っていても、実際は1時間以上かもしれません。

作業時間の可視化

セルフモニタリングを通じて行動を可視化すると、次のことが実現します。

(1)無意識の非効率行動が浮き彫りになる

意識していない習慣こそが、生産性低下の主犯となっていることに気づけます。

(2)その習慣がどのくらいの時間を奪っているかが数値化される

「ちょっとだけ……」が1日に何度も積み重なれば、数十分から1時間単位の損失になります。

(3)改善の対象が明確になる

漠然とした「生産性が低い」という悩みから、「メール確認に時間をとられている」という具体的な課題へとシフトします。

セルフモニタリング技術の実践

それでは、実際にセルフモニタリングを始める方法を紹介します。ハードルは低めに設計してあるので、今日から取り組んでみてください。

ステップ1

記録の準備

所要時間 5分

やること

スプレッドシートか紙とペンを用意し、次の3列をつくる。

  • 時間帯(例 9:00~9:15)
  • そのあいだに何をしたか(例 メール確認)
  • 気づいたこと(例 集中力を遮られた、じつは3分で済むはずだった)

Excelやスマートフォンのメモアプリでもかまいません。この3列があれば充分です。項目を増やしすぎると続きません。

ステップ2

1日1回、時間を記録する

所要時間 1日3~5分

やること

朝の準備時間か昼休憩、退勤直前のいずれかで、その時間帯の行動を思い出しながら記録する。

1日のすべての時間を記録する必要はありません。「生産性が低かった時間帯」や「何もしていないのに時間だけが過ぎた時間帯」を優先的に記録するだけでもいいでしょう。

ポイントは「客観的に記録する」ことです。「メール確認に15分かかった」と書くのはいいのですが、「メール確認に無駄に15分かかってしまった」と自責的に書くのは避けてください。あくまで事実を記録することが大切です。

ステップ3

パターンを見つける

所要時間 週1回10分

やること

3日~1週間分の記録がたまったら、繰り返し現れている行動パターンを探す。

たとえば、実際の業務記録からは次のような気づきが得られます。

1週間分の業務内容と集中度を記録したセルフモニタリングの記録表の例

(画像は筆者にて作成)

  • 朝一番の業務(特に週明け)は集中度が低い傾向にある
  • 「企画資料作成」など継続的に取り組む業務では集中度が高く、効率的に進められている
  • 「報告書読み」など単調な読み直し作業では、つい何度も確認し直してしまう
  • コミュニケーションをとりながら進める業務のほうが、集中して取り組める

このように、実際の記録から「朝の時間帯は生産性が低い」「単調な確認作業では無意識に何度も読み直してしまう」といった、繰り返される無意識の習慣が見えてきます。これがあなたの生産性を下げている犯人です。

ステップ4

改善案を試す

試行期間 3~5日

やること

見えてきたパターンに対して改善案をひとつ選び、3~5日試す。その効果も記録し続ける。

朝の集中度が低い、協働したほうが集中できるというパターンが見えた場合は、「朝一番はコミュニケーションをとりながら進められる業務にあてる」といった改善案が考えられます。あるいは、単調な読み直し作業で何度も確認し直してしまうパターンが見えた場合は、「確認は1回限りと決める」「ポモドーロ・テクニックでこまめに休憩を挟みながら実施する」といった工夫が有効かもしれません。

改善案をひとつに絞るのは、どの工夫が効いたのかをはっきりさせるためです。効果まで記録しておくと、「朝に頭を使う業務を先に片づけるようにしたら、その時間帯の集中力が上がった」「確認を1回限りに決めたら、読み直しの時間が減った」といった変化が手元に残ります。

セルフモニタリングの価値は、こうした「自分の変化の可視化」にあります。変化が見えると、行動を続けようというモチベーションが生まれるのです。

***

生産性が上がらないと感じたときは、能力や努力に目を向ける前に、「いまの自分は、実際に何に時間を使っているのか」を見つめることから始めてみてください。その客観的な観察が、もっとも実効的な改善へとつながります。

セルフモニタリングは特別なスキルではなく、誰もが取り組める手法です。1日3~5分から始められるからこそ続けやすく、実際の変化をもたらしてくれます。

よくある質問(FAQ)

Q. セルフモニタリングはどのくらいの期間続ければ効果が出ますか?
最初の効果が見えるのは、3日~1週間の記録後です。パターンが明確になり、改善すべき習慣が見つかります。ただし、改善を実感するまでには、2~3週間の実践が目安となります。急がず、まずは1週間の記録に集中することをおすすめします。
Q. 毎日すべての時間を記録する必要がありますか?
いいえ。むしろ、「生産性が低かった時間帯」や「時間が消える感覚があった時間帯」を優先的に記録することをおすすめします。すべての時間を記録しようとすると、続きません。シンプルに保つことが継続の秘訣です。
Q. セルフモニタリングの記録に適したツールはありますか?
Excelやスプレッドシート、紙とペン、スマートフォンのメモアプリなど、何でも大丈夫です。もっとも大切なのは「継続すること」なので、あなたがもっとも使いやすいツールを選んでください。凝ったツールよりも、シンプルで続けやすいものが効果的です。
Q. 発見したパターンに対して、複数の改善案を同時に試してもいいですか?
おすすめしません。ひとつの改善案ずつ、3~5日の期間を設けて試すことが重要です。複数を同時に試すと、どの改善が効果をもたらしたのかが不明確になります。ひとつの改善の効果を確認してから次のステップに進むことで、より確実な成果につながります。
Q. セルフモニタリングで生産性が上がらなかったらどうすればいいですか?
その場合は、記録内容を改めて見直してみてください。本当の非効率習慣を見落としている可能性があります。または、改善案の実行方法が自分に合っていないのかもしれません。セルフモニタリングは「発見」と「試行錯誤」のプロセスです。焦らず、段階的に調整していくことが成功の鍵です。

【ライタープロフィール】
澤田みのり

大学では数学を専攻。卒業後はSEとしてIT企業に勤務した。仕事のパフォーマンスアップに不可欠な身体の整え方に関心が高く、働きながらピラティスの国際資格と国際中医師の資格を取得。日々勉強を継続しており、勉強効率を上げるため、脳科学や記憶術についても積極的に学習中。