
「新年度が始まったばかりなのに、もう辞めたいかも」
「環境を変えたい」
「気がつけば、転職サイトばかり見ている」
そんな気持ちが、ふっと湧いてくる時期ですよね。
4月は、いろんなことが一度に押し寄せます。新しい仕事、新しい人間関係、引っ越し、生活リズムの変化。本人としては「ちゃんとやらなきゃ」と頑張ってきたつもりが、気がついたら、糸がぷつんと切れたように力が抜ける。たぶん、そういう感じではないでしょうか。
「もう、辞めたい」――その気持ちは、弱さでも甘さでもありません。むしろ、ちゃんと頑張ってきた人ほど、この時期にやってくる感覚です。
とはいえ、その気持ちのまま大きな決断をするのは、ちょっともったいない。まずは、ゆっくり休みませんか。話は、それからです。
たぶん、ちょっと頑張りすぎたんだと思う
5月になんとなく調子が出ない、やる気が湧かない、なんだかもう辞めたい――この感覚、自分だけだと思っちゃいけません。けっこう多くの人が、同じことを感じています。
ある調査では、会社員の約3割が、五月病をきっかけに退職を検討した経験があると答えたそうです(一般社団法人徳志会・2025年4月実施・有効回答数400サンプル)。*1 3割ですよ。10人いたら3人。けっこうな人数です。
なぜこんなことが起きるのか。理由は、わりとシンプルです。
新年度は、入社・異動・引っ越しといった環境の変化がいっぺんに押し寄せる時期。さらに春から初夏にかけての寒暖差や気圧の変動もあって、身体のコンディションも揺らぎやすくなります。
そこにゴールデンウィークが入ると、緩んだリズムと日常とのギャップがさらに重なります。心が追いつかなくなる人がいても、不思議じゃありません。*2
精神科医・産業医の渡辺洋一郎氏も、こう述べています。*2
こうした変化の連続は、自分でも気づかないうちにストレスをため込みやすく、心身に負担をかける要因となります。4月は頑張りどきとして気を張っている人も多いため、その反動が5月になって表れることがあります。
つまり、5月になって「だるい・やる気が出ない・なんだか辞めたい」と感じるのは、あなたが弱いからではなく、4月にちゃんと頑張っていた証拠。新しい環境に必死に合わせようとしてきたから、その反動が出ているだけです。
新しい環境のあれやこれやを、ちょっと過敏に受け取りすぎているのかもしれない。それくらいに思っておけば、十分です。

とりあえず、ゆっくり休みませんか
そんなときに、いちばん大事なこと。それは、とりあえず休む。これに尽きます。
「そう言われても、仕事あるし」と思うかもしれませんが、ここで言う休むとは “有給とって温泉に行こう” という話ではありません。
たとえば家に帰ったら、スマホは置いて、お風呂にゆっくり浸かる。とりあえず適当に何かを飲むではなく、温かいお茶を淹れる。寝る前に転職サイトを開かない。週末は、予定を入れずにごろごろする。そういう、ささやかな休み方です。
頑張ってきた人ほど、休み方を忘れてしまっているもの。「辞めたい」と思いつめているなら、まずはコンディションを整えること。身体と心が回復してから考える。これだけで、見える景色がだいぶ変わることがあります。
そもそも、いまのしんどさは「環境が変わったこと」自体が原因かもしれません。だとしたら、その変わった環境が「日常」に馴染んでくれば、自然に落ち着いてくるということもあります。
急いで結論を出さないこと。これは、けっこう大事です。
落ち込んでいるときに、大事なことを決めない
とはいえ、それでも「辞めたい」気持ちが消えないこともあるでしょう。そんなときに思い出してほしい話があります。
よく言いますよね、「落ち込んでいるときに、大事なことを決めるな」って。あれ、本当にそうらしいんです。心に余裕がないときは視野が狭まり、物事のネガティブな側面ばかりに目が向いてしまう。そうして判断を誤ってしまうことがあります。
だからこそ大事な決断を行なう前に、こちらを思い出してほしいのです。
これは、自分が次の4つの状態になっていないかどうか「ちょっと確かめてみよう」というシンプルな話。もともとは依存症の再発防止に用いられている、「HALT(ハルト)」という考え方です。*3

Hunger(空腹)――お腹が空いているとき
心当たりはありませんか。お腹がペコペコのままスーパーに行くと、いつもなら買わないお菓子をかごに放り込んでしまう、という “あれ” です。お腹が空いていると、人は「目の前の何かで埋めたい」という気持ちが強くなります。
これが仕事の話になると、「もうこの会社では満たされない、辞めて別のところに行けばいい」といった短絡的な発想につながりやすい。本当はいまの仕事のなかにも満足できる部分はあるはずなのに、空腹のときは目に入りません。
ちなみにここで言う「空腹」には、気持ちの空腹もふくまれます。やりがいが感じられない、認められていない、楽しいことがない――そういう「心のお腹がすいた」状態。これも、判断をブレさせる要因になります。
Anger(怒り)――イライラしているとき
カチンときたメールに、その場で返信して、あとでまずいことになった経験。誰しもありますよね。怒りは強烈なエネルギーで、判断という工程を一気に飛び越えさせてしまいます。
新年度は、知らず知らずのうちにイライラがたまりやすい時期でもあります。「あの上司の言い方が」「あの後輩の態度が」「またあのクライアントが」――小さな怒りが積もり積もって、ふとしたきっかけで「もうこんな会社、辞めてやる」と爆発してしまう。そのとき頭にあるのは、辞めた先のキャリアではなく、目の前の誰かを見返したいという気持ちである場合があります。
怒りで決めた決断は、たいてい怒りが収まったころに「あれ、なんでこうしたんだっけ」となるもの。まずは、ひとつ深呼吸してみてください。
Loneliness(孤独)――ひとりで考え込んでいるとき
これは特に、リモートワーク時代に増えた落とし穴かもしれません。家に帰って、誰とも口をきかず、頭のなかだけで「辞めようかな、続けようかな」とぐるぐる考える。同じ場所をぐるぐる回っているだけなのに、考えれば考えるほど「やっぱり辞めるしかない」という結論に近づいていく感覚、ありませんか。
ひとりでの思考は、案外恐ろしいものです。誰かに話せば「いやそれ、たいしたことないよ」と笑い飛ばしてもらえる悩みでも、ひとりで抱えていると、どんどん大きくなっていきます。家族でもいい、友達でもいい、同期でもいい、誰かと話してみてください。それだけで、悩みのサイズが変わってくることがあります。
Tiredness(疲労)――疲れているとき
これがいちばん厄介かもしれません。徹夜明けに人生のことを考えると、なぜかすべてが終わったように感じませんか。「自分には才能がない」「この仕事に向いていない」「もう全部やめたい」――。
でも、ぐっすり寝た翌朝、同じことを考えると「あれ、昨日の自分、なんであんなに深刻だったんだろう」となることがあります。疲労は、未来の見え方そのものを変えてしまうのです。フィルターのかかった眼鏡で景色を見ているようなもの。眼鏡を外せば(=眠れば)、また色が戻ってきます。
疲れているときの「辞めたい」は、本心というよりも、疲労がしゃべっているのかもしれません。
4つのうち、いくつ当てはまりますか?
お腹が空いている、イライラしている、ひとりぼっちで考え込んでいる、疲れがたまっている――こうやって並べてみると、新年度のしんどい時期は、4つ全部に当てはまっていることも珍しくないのです。だとしたら、判断は当然ブレます。
仕事を辞めるかどうかは、人生のなかでも大きい部類の決断です。だったらなおさら、ご飯を食べて、よく寝て、誰かと話して、落ち着いてから考えたほうがいい。
「辞める」が正解の人もいれば、「もう少し続ける」が正解の人もいます。それは人それぞれ。ただ、その正解にたどり着くためには、自分が落ち着いていることが前提。それだけの話です。
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「辞めたいかも」――その気持ちは、たぶん、ちゃんと頑張ってきた証拠です。だから、自分を責めないでください。まずはゆっくり休む。決めるのは、休んだあとで、落ち着いてからでいい。それだけで、あなたのキャリアは守られていきます。
よくある質問(FAQ)
Q新年度に「辞めたい」と感じるのは、自分が環境に向いていないからでしょうか?
A.必ずしもそうとは限りません。新年度は入社・異動・引っ越しなど環境変化が一度に重なり、寒暖差や連休のリズムのギャップも加わって、誰もが心身の負荷を受けやすい時期です。「辞めたい」という気持ちは、環境に向いていないサインではなく、4月に頑張って新しい環境に適応してきた反動かもしれません。
Q「辞めたい」と思ったとき、まず何をすればよいですか?
A.とにかく休むことです。有給を取って遠くに行く、というスケールではなく、ゆっくりお風呂に入る、温かいお茶をいれる、週末は予定を入れずにごろごろする――そういう小さな休息で構いません。コンディションが整ってから考えても、決断は遅くありません。
Q「HALT(ハルト)」とは何ですか?
A.Hunger(空腹)、Anger(怒り)、Loneliness(孤独)、Tiredness(疲労)の4つの頭文字をとった考え方です。もともとは依存症の再発防止の文脈で使われるもので、この4つの状態にあるときは判断がブレやすいとされています。「落ち込んでいるときに大事なことを決めない」という古くからの知恵を、シンプルに整理したものとして使えます。
Q環境に慣れれば、しんどさは落ち着きますか?
A.その可能性は十分にあります。しんどさの原因が「環境の変化」そのものであれば、変わった環境が日常になじむにつれて、自然に落ち着いていくこともあります。すぐに結論を出さず、しばらく様子を見るのも、ひとつの選択です。
*1: PR TIMES|一般社団法人 徳志会のプレスリリース|3割の会社員は五月病が原因で退職を検討⁉︎︎五月病が仕事へ与える影響を徹底調査【2025年版】
*2: 日本CHRコンサルティング|CHR発 well-being コラムWell be|【医師監修】5月病とは?多くは適応の障害・・・症状・原因と対策・抜け出し方を精神科医が解説
*3: 公益財団法人 住吉偕成会 住吉病院|HALT
STUDY HACKER 編集部
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