
📘 新人さんのためのマーケティング講座 Season7
Season6では「なぜこのブランドは選ばれ続けるのか」を事例で深掘りしました。
Season7では、より深く「なぜこの構造(仕組み)は崩れないのか」を解き明かしていきます。
まだ過去のSeasonを読んでいない方は、そちらからどうぞ。
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毎週月曜日の朝、スマホを開いて「しいたけ占い」を読み、涙する人がいます。
12星座という大括りの分類で書かれているにもかかわらず、「なぜ私のいまの状況を知っているの?」と、強烈な自己関連性を感じさせる文章。2014年の夏にVOGUE GIRLでの連載が始まり、プラットフォームが閉鎖されてもなお、2026年現在は公式サイト(shiitakeuranai.jp)とnoteの有料マガジンでファンを固め続けています。*1
これは占いなのでしょうか。読者が「逃げ場所」「回復のための聖域」と呼ぶこのコンテンツの構造に、2026年のマーケティングが学ぶべきことがあります。
- 「予言」から「伴走」へ——占い市場のコモディティを「全肯定」で突破する
- プラットフォームが閉じても消えない——「人格のインフラ化」という最強の構造
- 顧客の「頑張り」を言語化することが、最強のマーケティングになる
- よくある質問(FAQ)
「予言」から「伴走」へ——占い市場のコモディティを「全肯定」で突破する
占いというカテゴリーは、ある意味でコモディティ化の極致にあります。12星座占いは世界中に無数に存在し、AIが大量生産できるコンテンツの代表格です。
しいたけ占いが選んだのは、このスペック競争から完全に降りることでした。
従来の占いが提供するのは「未来の予測(当たる・外れる)」という機能価値です。しかししいたけ占いが提供するのは「現在地の承認」という情緒価値です。*2 「大変だったことを、当たり前にこなしているすごさがある」——この種の言葉が、読者の心に「なぜ私のことを知っているの?」という感覚を呼び起こします。
| 項目 | 従来の星占い(機能価値) | しいたけ占い(情緒価値) |
|---|---|---|
| 主目的 | 未来の予測・当たる・外れる | 傷ついた心のリカバリー・自己肯定 |
|
読後の 感情 |
「ラッキーだから行動しよう」 | 「いまの私のままで、大丈夫なんだ」 |
| 関係性 | 占い師と迷える子羊(縦の関係) | 並走してくれる少し物知りな友人(横の関係) |
|
2026年の 役割 |
情報ノイズのひとつ | 月曜日を生き抜くための「心のOS」 |
特に秀逸なのが「ネガティブな感情をポジティブに翻訳する言語化の技術」です。「後悔さんは電柱の影から見守ってくれる友」——後悔という感情を責めるのではなく、愛着のある存在として再定義する。この言語化の手法が、読者の自己肯定感を爆上げし、「この文章を書く人を信頼したい」という感情を生み出します。*2

プラットフォームが閉じても消えない——「人格のインフラ化」という最強の構造
しいたけ占いの構造的な強さを理解するうえで、2023年の出来事が重要です。
2014年夏から約8年半にわたって連載してきたVOGUE GIRLが、2023年5月末に閉鎖しました。しいたけ.は当時noteにこう記しています。「8年半の執筆活動は本当に孤独を伴う作業であったものの、VOGUE GIRLチーム、そして、毎週の執筆を待っていて下さる温かい読者の方々がいてくださったおかげでなんとかやり通していくことができました」。*1
閉鎖発表のSNSでは「生きていけるかな」という読者の声が広がりました。これほどの依存度を生んでいた連載が終了した後、しいたけ.は公式サイト(shiitakeuranai.jp)を立ち上げ、noteでの有料マガジン(月刊しいたけ占い・お手紙・悩み相談マガジン)へと移行しました。*1
ここに、しいたけ占いのビジネス的な強さの本質があります。読者が求めているのは「VOGUE GIRLに載っている占い」ではなく「しいたけ.という人格が書く文章」だったのです。これが「人格のインフラ化」です。プラットフォームが何であれ、その人格についていく読者が存在する——これはSEOにも広告にも依存しない、最も崩れにくいブランドの形です。
2026年、AIが大量の文章を生成できる時代において、「この人が書いた文章だから読む」という感情が希少価値を持ちます。しいたけ占いはその最前線にいます。

顧客の「頑張り」を言語化することが、最強のマーケティングになる
しいたけ占いが教えるのは、マーケティングにおける根本的な問いです。
あなたのサービスは、顧客に「正しいスペック」を語るあまり、彼らの「疲れた心」を置き去りにしていないでしょうか。機能・価格・品質という「正しい情報」を伝えることに必死になるほど、顧客が本当に求めている「承認」や「安心」から遠ざかってしまうことがあります。
しいたけ占いは12星座という大括りでしか書いていません。しかし「いまの状況を認めてもらえた」という感覚が、「この文章は私のために書かれた」という錯覚を生む。これは「精度の高い予測」が生む信頼ではなく、「ただ隣に座って承認してくれる存在」が生む信頼です。
2026年のマーケティングは、顧客を「説得して動かす」ことではないのかもしれません。ただただ顧客の隣に座り、彼らの「頑張りを言語化してあげる」ことから始まる——しいたけ占いの8年半と、その後の自立がそれを証明しています。

【本記事のまとめ】
1. 「予言」から「伴走」へ——全肯定の言語化がコモディティ市場を突破する
未来の予測という機能価値ではなく、現在地の承認という情緒価値を提供する。「後悔さんは電柱の影から見守ってくれる友」のような言語化が、読者の自己肯定感を高め「この人を信頼したい」という感情を生む。12星座という大括りでも「私のために書かれた」という感覚を生み出すのが言語化の力だ。
2. プラットフォームに依存しない「人格のインフラ化」——最も崩れにくいブランドの形
VOGUE GIRLの閉鎖という危機を乗り越え、公式サイト・noteへと移行できたのは、読者が求めていたのが「掲載媒体」ではなく「しいたけ.という人格」だったから。SEOにも広告にも依存しない人格への信頼が、AI時代の最も崩れにくい競争優位になる。
3. 「説得して動かす」から「隣に座って言語化する」へ——2026年のマーケティングの本質
正しいスペックを伝えることに必死になるほど、顧客が本当に求める承認や安心から遠ざかる。顧客の頑張りを言語化し、「いまの自分のままで大丈夫」と感じさせることが、2026年最強の差別化になりうる。
よくある質問(FAQ)
しいたけ占いの「当たる・外れる」精度はどのくらいですか?
しいたけ占いの価値は「当たる・外れる」という軸で測るものではありません。しいたけ.自身の占い手法は、一般的な占星術ではなくオーラカラーを見る独自のメソッドです。読者が「当たった」と感じるのは予測の精度からではなく、「自分の状況や感情が言語化されて承認された」という体験から来ています。これはバーナム効果(誰にでも当てはまる内容を自分に特有のことと感じる心理)の側面もありますが、しいたけ占いの場合は「承認の言語化」が徹底しているため、読後の感情が特別なものになっています。
「人格のインフラ化」は個人でないとできませんか?
企業でも応用できます。重要なのは「この会社が言うなら信じる」という感情的な信頼の蓄積です。たとえばパタゴニアが環境に対して一貫したスタンスを取り続けることで、「パタゴニアの声明なら読む」というファンを作っているのも同じ原理です。しいたけ占いが個人で実現したことを企業でやろうとするなら、特定の社員や創業者の人格を前面に出すか、ブランドそのものに「この問題に関しては絶対に譲らない信念」を持たせることが近道です。
「全肯定マーケティング」は、すべての商品・サービスに使えますか?
全肯定という言葉は誤解を招くかもしれませんが、しいたけ占いがやっていることは「顧客の現在地を承認する」ことです。これはほぼすべてのビジネスに応用できます。たとえばダイエット食品を売る際に「今の体型でも十分頑張っている、その上でもっと楽になるために」という文脈を作ることができます。「顧客の努力や苦労をまず認め、その上で自社の商品・サービスをどう役立てるか」という順序を意識するだけで、コミュニケーションの温度が変わります。
*1|しいたけ.公式note「VOGUE GIRL『しいたけ占い』連載終了について」(2023年3月)。VOGUE GIRLでの連載が2014年夏から約8年半続いたこと・2023年5月31日のVOGUE GIRL閉鎖に伴う終了・「8年半の執筆活動は本当に孤独を伴う作業だった」という本人の言葉・公式サイト(shiitakeuranai.jp)とnoteへの移行・毎週月曜日の更新・note有料マガジン(月刊しいたけ占い・お手紙悩み相談マガジン)の運営を確認
*2|しいたけ占い公式サイト(shiitakeuranai.jp)。毎週月曜日更新の週刊しいたけ占い・各星座の運勢をさらに深掘りした月刊占い・お手紙悩み相談のマガジン更新・オーラカラーと共に運勢を診断する独自メソッド・「今の状況と、これからどうすればよいのかを熱く解説」という現在地の承認というアプローチを確認。「後悔さんは電柱の影から見守ってくれる友」はしいたけ.の文章スタイルを代表する言い回しとして複数のメディア・読者レビューで言及されている表現
▼ 新人さんのためのマーケティング講座 Season7
「なぜこの構造(仕組み)は崩れないのか」を事例で深掘りしていきます。
- 第1回:なぜニトリは、インフレの時代でも「お、ねだん以上。」を維持できるのか
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- 第6回:売上高39%増・過去最高益——コメ兵の「真贋マーケティング」が2026年に爆発した理由
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- 第13回:なぜしいたけ占いは、「当てない占い」のまま、数百万人の月曜日に欠かせない存在になれたのか(本記事)
▶ Season1(全14回)はこちら|マーケティングの基礎概念からWeb広告の実務知識まで
▶ Season2(全15回)はこちら|PL翻訳術、弱者の戦略、広告評価、インタビュー技術まで▶ Season3(全20回)はこちら|現場で使える顧客心理・ブランド戦略・価格設計の本質
▶ Season4(全20回)はこちら|「摩擦の除去」で読み解く世界的ブランドの設計思想
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岡 健作(おか・けんさく)
株式会社新恵社代表取締役/スタディーハッカー(現(株)イングリッシュカンパニー) 創業者。
1977年生まれ、福岡出身。同志社大学卒業。2010年に創業。「Study Smart(合理的に学ぶ)」をコンセプトに、科学的知見に基づく英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」を設立し、人気ブランドへと成長させる。 事業拡大の要として、自らオウンドメディアとSNSの編集長を兼任。オウンドメディアは最大500万PV、Instagramでは月間700万PV、フォロワー27万人規模のメディアにするなど、広告費に依存しない集客モデルを確立する。現在はその知見を活かし、「企業の認知獲得の専門家」として、論理とデータに基づいた再現性の高いメディア戦略・ブランディング論を発信している。
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