「A4紙1枚・7ステップ」で、大きな問題も真の課題もあっさり解決できるワケ。

阿比留眞二さんインタビュー「課題解決の技法」01

課題発見に課題設定、課題解決と、ビジネスの場には頻繁に登場する「課題」という言葉。でも、そもそも「課題」とはどういうものなのでしょうか。

「『問題』とはまったく異なる『課題』をはっきりさせないと、仕事で成果を挙げるのは難しいし、なにより仕事をおもしろく感じられない」と言うのは、「問題解決コンサルタント」である阿比留眞二(あびる・しんじ)さん課題がもつ意味とあわせて、課題そのもの、そしてその解決策の見つけ方を教えてくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人

「問題」を、個人がやるべき「課題」に落とし込む

仕事で成果を挙げるには、自らがやるべきこと――すなわち「課題」を明確にし、それを解決していく必要があります。ところが、多くの人は課題と「問題」を混同しています。

では、「大きく下がっている会社の売上を回復させなければならない」とき、これは課題と問題のどちらでしょうか? 答えは、「問題」です。問題とは、「会社やチームで解決すべきこと」なのです。

さて、この「会社の売上を回復させる」という問題を解決するため、ビジネスパーソン個人にできることはあるでしょうか? その会社の経営者、そうではなくとも経験豊富で能力も高い人なら、自分のやるべきことやできることがすぐに見えてくるかもしれない。でも、「会社やチームで解決すべきこと」である問題はあまりに大きいために、たいていの人には自分がやるべきこと――課題がなかなか見えません。

問題を、より具体性をもった個人でやるべきことである課題に落とし込むことこそが、課題を明確にするということです。

そもそも、成果を挙げる以前に、会社や上司から与えられたことをこなすだけでは、仕事をおもしろく感じられないですよね。自分自身で考えてやるべきことを見つけたとき、さらに、もがきながらもその課題をなんとか解決したときにこそ、大きな喜びを得られ、ビジネスパーソンとして成長できるのだと思います。

阿比留眞二さんインタビュー「課題解決の技法」02

課題は、実行可能な行動で解決できるものでなければならない

では、どのようにして問題を課題に落とし込めばいいのでしょう。まずは、「会社の売上を回復させる」という問題を解決するために、あなたにできることを考えてください。例として「お客さまからのクレームを減少させる」「自分の企画のプランの穴をなくす」といったことでもいいでしょう。

この段階では、思いつきレベルでも問題ありません。肝心なのは、次からのステップです。多くの人は、思いつきレベルの課題に対して即座に解決策を考えてそれで「良し」としてしまうもの。しかし、本当にそれはやるべきことなのか、そして解決できるものなのかを検証する必要があります。課題とは、自らがやるべきことであると同時に、自らが実行可能な行動によって解決できるものでなければならない。解決できないことを課題として設定することほど意味を成さないことはありません。

では、その「真の課題」を見つけ、解決策を導くための7つのステップを紹介します。これは、私が課題解決の技法と呼んでいるものです。「7つのステップ」と言うと、面倒だと感じる人もいるかもしれませんが、A4用紙1枚もあればできるものですから、だまされたと思って試してみてください。

阿比留眞二さんインタビュー「課題解決の技法」03

思いつきの課題から「真の課題」をあぶり出す

ステップ1第一の課題を挙げるはすでにお伝えしたとおり、思いつきレベルで問題ありません。これらは、言ってみれば、真の課題をあぶり出すための材料のようなものです。ここでは、「お客さまからのクレームを減少させる」ということにしておきます。

続くステップ2では、第一の課題を生み出している事象や困った状況を挙げます。ここで重要となるのは、「客観的な視点」。個人の感情や思い込みなど主観が入り込むと、真の課題にはたどり着くことができないからです。「Aさんがクレームに対するメール対応をしない」はOKですが、「Aさんはクレーム対応が苦手だから、メール対応をしない」はNGという具合ですね。Aさん本人が「クレーム対応が苦手」と言っているならともかく、他人の勝手な主観で「Aさんはクレーム対応が苦手」と判断してはいけません。そして、ここで挙げる事柄のなかで特に重要だと思うものにラインを引いておきます

次のステップ3で、ステップ2で挙がった事象や困っている状況をグループ分けして整理します似ているものをグルーピングするのです。先に挙げた「Aさんがクレームに対するメール対応をしない」なら「社内の連携」といったグループになるでしょうか。

さて、次がいよいよ真の課題を見つけるステップ4です。でも、ここまでのステップをきちんと踏んでいたら、意外と簡単。ステップ2で、重要だと思う事象や困った状況にはラインを引いているはずです。そして、ステップ3でそれらをグルーピングした。すると、グループのなかに、ラインを引いている重要な事柄が多いものが見つかるはずです。そのグループが最重要のテーマとなります。

そして、そのグループのなかに含まれる事象や、困った状況のなかで最も優先して解決すべきものは? それこそが、真の課題なのです。

阿比留眞二さんインタビュー「課題解決の技法」04

自動的にやるべきアクションが見つかる

ステップ4で真の課題が見つかったら、今度はその解決策を見つけるために、真の課題を生んでいる原因――「真因」を探しましょう。ここで、ステップ5としてWHY(なぜ?)を4回繰り返します。じつは、真の課題を生んでいる真因は意外なものだということも少なくありません。WHY(なぜ?)と1回や2回問うだけでは、意外な真因にはたどり着けないのです。

ここでは、真の課題を仮に「同じお客さまからクレームが発生している」としましょう。その場合、たとえば次のようにWHY(なぜ?)を繰り返します。「同じお客さまからクレームが発生している」。なぜ? 「クレーム発生の際、内容をオペレーターから販売、開発側に流しているが、その後のお客さまへの連絡がないから」。なぜ? 「クレームは販売、開発側の責任であり、彼らにクレーム内容を伝えればオペレーターは自分たちの仕事は完遂したと思っていたから」。なぜ? 「社内におけるそれぞれの役割が不明確で曖昧だから」。なぜ? 「社内における各部署や従業員の責任所在を規定できていないから」――。こうしてたどり着いたものが、真の課題を生んでいる真因です。

続いて、ステップ6で解決策を見つけます。ここでは例を挙げませんが、ステップ5で真の課題を生んでいる真因を見つけていたら、具体的な解決策もはっきりと見えてくるはずです。そのため、いくつも解決策が浮かぶということもあるでしょう。でも、解決策は3つまでに絞ることが大切。私の経験からも、人は「あれ、これ、それ」の3つくらいのことしか実行できないからです。

最後のステップ7で、ステップ6で決めた解決策を具体的なアクションプランに落とし込みます。解決策が見えているなら、必要なアクションも明確に見えてくる。決して難しくないはずです。

先にもお伝えしましたが、思いつきレベルの課題とその解決策を考えて満足してしまう人が多いように思います。でも、そのあいだにあるステップ2〜6こそがとても大切。面倒だと思う人もいるかもしれませんが、それらのステップを順に追うことで自動的に真の課題とやるべきアクションが見つかるのですから、むしろこんなに楽なことはないはずです。

阿比留眞二さんインタビュー「課題解決の技法」05

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紙1枚で仕事の課題はすべて解決する

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  • 作者:阿比留 眞二
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【プロフィール】
阿比留眞二(あびる・しんじ)
1954年、東京・中野生まれ。株式会社ビズソルネッツ代表取締役。1979年に大学卒業後、大手総合化学メーカーに入社。経理、財務、工場原価計算、家庭品・化粧品営業、営業事務、営業企画を歴任。2006年、教育そのものに目覚め、自主退職。退職後は、事業再生会社でコンサルタントの教育を受け、その後、帝京大学名誉教授であり自己啓発協会の佐藤允一氏のもと、問題解決に取り組む。2007年、株式会社ビズソルネッツを設立。独自の「課題解決の技法」を武器に、企業・団体等における多種多様な課題解決を支援している。著書に『最高のリーダーは、この「仮説」でチームを動かす』、『最高のリーダーは、チームの仕事をシンプルにする』(ともに三笠書房)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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