差し戻しを74%減らした「進捗20%」のチェック。一流マネージャーが実践する、部下を伸ばす任せ方

越川慎司さん

多岐にわたるマネージャーの業務のなかでも重要とされるのが、チームに与えられた課題を達成するために、必要な業務をメンバーに割り振ることです。いい換えれば、仕事を部下にしっかりと任せられるマネージャーこそが、デキるマネージャーともいえるでしょう。しかし、延べ17万3000人のビジネスパーソンの行動分析を行なってきた、株式会社クロスリバー代表取締役の越川慎司さんは、「仕事を任せられていない人も多い」と懸念します。成果を出せるマネージャーは、どのように仕事を任せているのでしょうか。その極意に迫ります。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

【プロフィール】
越川慎司(こしかわ・しんじ)
1971年9月21日、山梨県生まれ。株式会社クロスリバー代表取締役。国内外の通信会社勤務を経て、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。のちに日本マイクロソフト業務執行役員としてPowerPoint、Excel、Microsoft Teamsなどの事業責任者を歴任する。2017年に働き方改革を支援する株式会社クロスリバーを設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)を実践しながら、800社以上の業務改善、会議改革、事業開発を支援。オンライン講演・講座は年間300件以上、受講者満足度は平均96%。『仕事ができる人がやっている小さな習慣』(アスコム)、『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)、『トップ5%社員の読書術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

「丸投げ」では部下は育たない

日本の企業では、一般的に優秀なプレーヤーがマネージャーに抜擢されます。そのため、多くのマネージャーが「自分でやったほうが早い」「自分が正解を知っている」と考え、部下に仕事を任せることに不安を感じているようです。

しかし、環境変化のスピードが増しビジネスの課題が複雑化した現在では、マネージャーひとりの判断や経験則だけで成果を出し続けることは困難になっています。だからこそ、マネージャーがすべてを抱え込むのではなく、部下が自分で考えて試行錯誤する機会をつくることで組織全体の力を高めなければなりません(『成果が出ない管理職に共通していた、たった1つの習慣。945人の成功者は「仕事を37%減らしていた」』参照)。

ただし、ここで注意が必要です。それは、「任せる」と「丸投げ」はまったくの別物だということです。「丸投げ」とは、「これやっといて」と仕事を渡すだけで、その目的や背景も説明せず進捗確認もしないという行為を指します。

ここでいう「背景」の中核には、「相手」が存在します。あらゆる仕事には原則として相手がいるからです。たとえば資料作成なら「最終的にそれを使う人」が相手に位置づけられます。マネージャー自身が使う資料なのか、もっと目上の本部長に見せる資料なのか、あるいはお客さまが意思決定をするための資料なのか、その相手が好む見せ方はどのようなものなのか――それらの違いによって、資料の仕上がりはまったく違ってきます。

そうした背景や目的を伝えることなく丸投げし、かつ作成途中での進捗確認すらしないという状況では、部下は不安を抱え、間違った方向に進んでも軌道修正することができません。マネージャーの立場からしても、そうして上がってきた的外れな資料を見て「こうじゃないんだよな……」と落胆するのがオチでしょう。部下の時間や労力を完全に無駄にするばかりか、部下のメンタルに負荷をかけ、そのモチベーションを低下させてしまうことにもつながります

デスクで頭を抱える女性従業員

部下に不安なく仕事に集中させる

一方の「任せる」とは、目的と背景、進捗確認のタイミングを事前に明示し、かつ「〇〇部のAさんに協力してもらって」というように使えるリソースも提供したうえで仕事を与える行為を指します。これであれば、なんのためにどのようなアウトプットをすべきかをはっきり認識できますから、部下は不安を感じることなく仕事に集中できます。

進捗確認のタイミングは、「やや早めに」ということがポイントです。先の例ではありませんが、間違った方向に進んで軌道修正できなくなることを防ぐためです。具体的には、「進捗20%で一度チェックする」ことを推奨しています。

「20%」のとらえ方に多少の個人差はあると思いますが、資料作成ならドラフトを作成した状態などでしょうか。その段階であれば、仮にマネージャーの想定イメージと多少ずれていたとしても、大幅な修正をしなければならないという事態は避けられます。

実際、この「進捗20%でチェックする」ことは非常に有効です。私の会社では、企業や公共機関など815団体で働く約17万3000人の行動をAIによって分析していますが、その調査の結果、「進捗20%でチェックする」ことをルール化した組織では、差し戻しがなんと74%も減少したのです。

部下の話を聞く上司

指示待ちタイプの部下に効く「逆質問」

しかし、「任せる」ことが重要だと言っても、なかにはいわゆる「指示待ち」の部下もいます。指示待ちタイプの部下は、「自分で考えて失敗したら叱られた」という過去体験から指示を待つようになっています

この思考パターンを変えるのが「逆質問」で、文字どおり、質問に対して「逆に質問で返す」というものです。質問に質問で返すのは場面によっては失礼にあたりますが、指示待ちタイプの部下にはとても有効です。

部下が「これ、どうすればいいですか?」と指示を仰いできました。プレーヤーとして優秀だったマネージャーが「Aだ」と教えるのは簡単でしょう。でも、答えを与え続けると、部下はこれからも考えることを放棄し続けます。

そこで、「あなたはどう思う?」「AとBだったらどっちが正しいと思う?」「他に選択肢はないかな?」というように、逆に質問するのです。すると、部下は「自分で考えることをマネージャーは期待してくれている」と理解し、自ら考えて動くようになるでしょう。つまり、自走する習慣を身につけていくのです。

この習慣が定着した部下は、たとえ質問する場合でも、「自分はこう考えたのですが、どう思いますか?」というように、考えたうえで質問をするようになるはずです。もっと言えば、マネージャー側が「なにこれ、すごいね!」と驚くような、想定を超えるアウトプットをしてくるケースだって増えていくと思います。

それこそが、マネージャーに課せられた本来の責務ではないでしょうか。マネージャーは、自分ひとりで成果を出す存在ではありません。異なる経験や強み、視点をもつ複数の部下を束ね、その力を引き出し掛け合わせることで、個人では到達できない成果を生み出す役割を担っています。「1+1」を単に「2」にするのではなく、「3」や「5」にまで引き上げる。そのために、部下に任せ、考えさせ、試行錯誤の機会を与え続けることこそが、いまの時代において、マネージャーが果たすべき役割です。

必ず成果につながる、アウトプットドリブンの読書習慣についてお話しくださった越川慎司さん

【越川慎司さん ほかのインタビュー記事はこちら】
成果が出ない管理職に共通していた、たった1つの習慣。945人の成功者は「仕事を37%減らしていた」
週3回以上、“あの言葉” を使うマネージャーのチームはなぜ強くなるのか?

 

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)

1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。

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