「たった7分」の夜の習慣。世界の一流は、平日夜をどう設計しているのか

越川慎司が語る平日夜の設計術とブレインダンプで翌朝のパフォーマンスを最大化する1日7分の夜習慣

帰宅して、夕食を済ませて、気づけばスマホでYouTubeを見ている。もう寝なければと思いながら、あと1本だけ。ベッドに入ると、今日の仕事の続きや、上司に言われた一言が頭の中をぐるぐる回って、なかなか眠れない……。

前回、世界の一流は平日の夜を「仕事の余り」ではなく、翌日の成果のために設計している、という話を聞きました。では、彼らは帰宅してから寝るまでのあいだに、具体的に何をしているのでしょうか。

日本企業129社428名の検証で最も効果が大きかった習慣と、越川さん自身が続けている寝る前7分の「ブレインダンプ」を中心に、『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)を上梓した越川慎司さんに聞くインタビュー後編です(全2回)。

取材・文/STUDY HACKER編集部

【プロフィール】
越川慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表取締役。国内外の通信会社に勤務した後、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。業務執行役員として事業責任者などを歴任する。2017年に株式会社クロスリバーを設立。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援。オンライン講演・講座は年間300件以上、受講者満足度は平均96%。Voicy「トップ5%社員の習慣ラジオ」が好評放送中。著書にベストセラー『世界の一流は「休日」に何をしているのか』(クロスメディア・パブリッシング)、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。著書累計35冊。

翌朝のパフォーマンスを決めるのは、睡眠の時間と質

前回、世界の一流は翌日の成果のために夜を設計している、という話をしました。では、翌日の成果に直接効くのは、夜の何でしょうか。答えは単純で、睡眠です。どれだけ長く、どれだけ深く眠れたかが、翌朝の頭の回転を決めます。

私もこれをマイクロソフトで17時に帰るようになって実感しました。夜遅くまで働いていたころは、翌朝は疲れが残っていて、9時から100%の力が出ませんでした。その後、17時に帰って睡眠をしっかり取るようにすると、9時からフルスピードで頭が動くようになったことを覚えています。

ところが、日本人の睡眠時間はOECD加盟国のなかで最下位クラスです。

短いだけでなく、寝る直前まで仕事のことを考えていたり、スマホを見ていたりしているということもあるのではないでしょうか。こうして、眠りの質も落としてしまっているのです。

世界の一流にとって、帰宅後の時間は眠りに向けた助走の時間でもあります。私自身も、9時か10時には寝て、朝5時に起きるようにしています。前回お話しした「朝7時台に頭がいちばん冴える」状態は、この睡眠があって初めて成り立ちます。

夜の設計は、何かを足すことより先に、睡眠の量や質を削っているものを外すことから始まります。

では、何を外せばいいのか。データを見てみましょう。

日本企業129社428名の検証で最も効果が大きかったのは寝る前にスマホから離れることだった

428名で試して、いちばん効いたのは「スマホから離れる」こと

日本企業129社428名に、次の4つの習慣から1つ選んで、12週間続けてもらいました。

検証した4つのルーティン
  • デジタル機器から離れる時間を設ける
  • スマホを寝室に持ち込まない
  • 感謝や達成をノートに書く
  • シャワー後にストレッチをする

結果、睡眠の質がいちばん改善したのは、デジタル機器から離れる時間を設けた人たちでした。スマホ、パソコン、テレビと接触しない時間を作る、というだけです。睡眠の質だけでなく、午前中の集中力が上がったという声も多く出ました。もともと「見すぎている」という問題意識を持っていた人が多かったからでもあるでしょう。

ここで、ブルーライトが脳を覚醒させるから、という説明を期待されたかもしれません。しかし私は医者ではありませんし、最近は寝る前に動画を見ても構わないと言う専門家もいます。医学的に何が正解かは、私には言えません。

私が止めたいのは、覚醒ではなく自己嫌悪です。

「今日もなんでこんなにYouTubeを見てしまったんだ」と思いながら眠ると、翌日の行動量が落ちます。逆に、「寝る前に頑張って見なかった」と思って眠れれば、それが自己効力感になって翌朝に残ります。10分、20分スマホを触らないという実験は、自己嫌悪を止めて自己効力感を残す手段として、とてもコストパフォーマンスが高いのです。

行動実験が進んでいる人は、寝室にスマホを持ち込むこと自体をやめています。難しければ、寝る前と起き抜けの数分だけでも構いません。

1日7分でできる夜の習慣10選は決まった動作にすることで意志の力に頼らず続けられる

「1日7分」でできる夜の習慣、10選

本書では、一流の夜の過ごし方を日本の会社員でも取り入れられる形にして、「1日7分」の習慣として10個にまとめました。

1日7分でできる夜の習慣 10選
01
会話/ 7分
夕食の席で、今日の仕事の話やアイデアを家族や同居人に話してみる。評価のない場で話すと、努力が「確定」する
02
趣味/ 7分
新しい趣味を1つ考えて、思いきり楽しむ。仕事に活かせるかは、あとから考える
03
歩く/ 20分
夕方から夜にかけて20分、スマホも音楽もなしで歩く。「考えよう」と意気込まない
04
読書/ 7分
異業界のビジネス書を、帰宅後まず7分。役立つかどうかを判断せずに読む
05
イベント参加/ 7分
近所のイベントを検索して、月1回参加してみる
06
個人発信/ 7分
SNSに投稿しなくてもいい。自分の興味関心を200字で下書きする
07
講座学習/ 7分
学びたい分野を1つ決めて、理由を1行書き、1コマ予約する
08
ストレッチ/ 7分
シャワー後、布団に入る前にゆっくり伸ばす。鍛えるのではなく、ほぐす
09
ブレイン・ダンプ/ 7分 私のイチオシ
タイマーを7分かけて、頭の中を片っ端から紙に書き出す
10
デジタル・リセット/ 7分
スクリーンタイムを見て、いちばん使っているアプリを1つアンインストールする
出典:越川慎司『世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか』第5章より編集部で要約

10個に共通しているのは、どれも「決まった動作」だということです。今夜は何をしようかと考える時点で、意志の力を使ってしまいます。やることが最初から決まっていれば、意志に頼らずに眠りに向かえます。前回お話しした「やる気には頼らない」は、夜にも当てはまるのです。

全部やる必要はありません。どれか1つで十分です。そして、どれか1つと言われたら、私はブレインダンプを勧めます。

寝る前7分で頭の中を紙に書き出し切り刻んで捨てるブレインダンプを勧める越川慎司さん

一押しは、頭の中の「泥水」を紙に出してから寝る「ブレインダンプ」

スマホを置いても、まだ眠れない夜があります。ベッドに入ってから、仕事が終わっていないとか、上司にこう言われたとか、考え始めてしまう夜です。眠れないのは、頭のぐるぐるをベッドの中で取ろうとしているからです。

ブレインダンプは、ベッドに入る前に、頭の中の泥水を外に出す排水作業です。

やり方は単純で、寝る前に、頭の中にあることを紙に片っ端から書き出します。「あいつがこんなことを言った」「これはよかった」「これはふざけるな」まで、全部です。ジャーナリングや日記に似ていますが、目的が逆です。日記は覚えておくために書きますが、ブレインダンプは忘れるために書きます。

書くと、頭の中のもやもやが紙の上に移ります。これは「外在化」と呼ばれる働きで、頭の中にあるストレスが紙の上に映る、と考えるとわかりやすいでしょう。

もやもやは言語化できていないからもやもやなのであって、紙に出して目で見れば、形のある言葉になります。そして、書いた紙はその場で切り刻んで捨てます。他人に見せる日記ではないので、取っておく必要がありません。切り刻んで捨てると、頭の中も空になったような状態になって、すっと眠れるのです。

正直に言うと、私も最初は無理だと思いました。何を書けばいいのかわからず、うまくいかなかった。それでも続いたのは、忘れるために書くのだと腑に落ちてからです。今は出張先でもやっています。

ブレインダンプの道具は捨てる前提で選ぶ、裏が白いチラシで十分だと語る越川慎司さん

道具は「捨てる前提」で選ぶ

ブレインダンプで使う道具は、捨てることを前提に選んでください。

たとえば、縦開きで、点線で切り離せるメモ帳がいい。横開きより、書いてすぐ切れます。大きさは小さいほどよくて、大きいとたくさん書かなければいけない気がして、それ自体がストレスになります。手のひらサイズで十分ですし、持ち運べるので出張先でも続けられます。

もっと言えば、裏が白いチラシで十分です。新聞の折り込みや、ポストに勝手に入っているチラシは、コスト削減のために裏が白い。あれくらいカジュアルなものがちょうどいいのです。私は失敗した契約書の下書きを事務所に置いておいて、A4を半分に折って1日1枚使い、切り刻んで捨てています。

お気に入りのノートは、絶対に使わないでください。捨てられなくなりますし、きれいに書こうとしてしまうからです。ブレインダンプに必要なのは、汚く書いて、破って、捨てられる紙です。

帰宅してから眠るまでに、何をしないかを決め、何をするかを決める。夜を設計するというのは、翌朝の自分にいちばんいい状態を手渡すことです。その最初の一歩は、7分で足ります。今夜、紙を1枚用意してから寝てみてください。(完)

【越川慎司さん ほかのインタビュー記事はこちら】

世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか

世界の一流は「平日」の夜に何をしているのか

  • 作者:越川慎司
  • クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
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【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社 代表取締役。
1977年生まれ、福岡県出身。同志社大学文学部英文学科卒業。2010年に株式会社恵学社(現・株式会社イングリッシュカンパニー)を創業。2014年に学習メディア「STUDY HACKER」を立ち上げ、編集長を通算10年以上務める。STUDY HACKERは最大で月間500万PV、STUDY HACKERのInstagramは月間700万PV、フォロワー28万人(2026年10月7日時点)。2026年に新恵社を設立し、自社のメディアで読者と直接つながる「広報のD2C」を掲げる。著書に『勉強の戦略』(朝日新聞出版)など。
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