「相手が本当はどう考えているのかわからない」
「もっと本音を引き出して建設的な会話をしたいけれど、どう聞いたらいいのかな……」
こんなふうに、相手の本音をいまひとつ引き出すことができずに悩むことはありませんか? 仕事で関わる相手の本音を引き出すことは、そう簡単なことではありません。相手の本音を引き出して建設的なやり取りを展開し、成果につなげるために必要なのは「どう質問するか」「どう本音を引き出すか」ということに尽きます。
本記事では、「よい質問とはどのようなものか」に触れながら、質問の具体的なフレーズをご紹介します。
質問が相手の本音を引き出す
相手の本音を引き出す質問をすることは、相手に思考や行動を促す建設的な会話につなげる大きな一歩となります。
たとえば不動産営業をイメージしてみましょう。顧客が物件を探しているとき、ただ「この物件は見晴らしがよくて……」と話を振るだけでは相手の本音を引き出せず、希望を把握しにくいはずです。一方、「いまのお住まいで不便に感じるところはどこですか?」と質問をすれば、顧客は自分の考えや希望を伝えることが容易になります。
悪い例とよい例を比べてみましょう。
×悪い例
営業:こちらの物件は収納が広くて便利ですよ。私、収納が狭い部屋に住んだことがあるんですが、すごく不便でした。
顧客:へえ、そうなんですね。
一見、収納の広さを売りにして部屋の魅力を説明しているように見えますが、顧客の気持ちや意見を置いてきぼりにしてしまっています。この話し方では顧客から相づちを引き出すことしかできません。
続いて、こちらはよい例です。
◎いい例
営業:いまのおうちで困っていることはありませんか? たとえば、収納が足りないとか……。
顧客:たしかに。
営業:何かご趣味のものが置いてあるとかですか?
顧客:キャンプが好きなのでアイテムが部屋を圧迫しています。
営業:キャンプがご趣味なんですね! それでは、キャンプ用品を収納できるスペースがあると便利ですよね。
悪い例では相手の話を引き出せませんでしたが、よい例では質問をしながら相手の本心を聞き出し、さらに相手の思考や行動のきっかけをつくることができています。
このように、相手の本音を引き出せると次の提案がしやすくなったり、思考や行動を促して建設的な会話へとつなげていくことができたりするのです。
ビジネスにおける「よい質問」とは
しかし、質問することに苦手意識をもつ人もいるでしょう。そもそも、「よい質問」とはどんな質問のことを言うのでしょうか。
株式会社コーチ・エィ取締役の粟津恭一郎氏は、「問われた人が思わず答えたくなる、新しい気づきを与えてくれる質問こそが『良い質問』」であり、良い質問が「その人に新たな思考や行動を引き起こす」と述べます。つまり、「質問を変えれば、行動も変わる」というわけです。*1
相手に気づきを与えるためには、まず本音を引き出さなくてはなりません。
本音を引き出すための質問方法として、「オープンクエスチョン」があります。オープンクエスチョンとは、「5W1H(いつ、どこで、誰が、どうやって、なぜ)」と呼ばれる要素を加え、「はい」「いいえ」だけでは答えられない質問のことです。*2
心理カウンセラーの浅野寿和氏は、オープンクエスチョンでは「相手に会話の主導権を与えることができ」、「回答者が普段は気づいていない深い考えを引き出すきっかけにもなる」と言います。*2
たとえば、「このプロジェクトがうまくいかなかったとしたら、その原因は何だと思いますか?」という質問は、ただ「はい」「いいえ」で答えるだけではないオープンクエスチョンです。
また、「いますぐできる最初の一歩は何ですか?」と相手に思考や行動を促す質問を続けることもできます。
このように、「はい」「いいえ」だけでは答えられないオープンクエスチョンを心がけることで、本音を引き出すだけではなく、相手に新たな思考や行動を引き起こすこともできます。これこそ、建設的なビジネスを展開するうえでの「よい質問」と言えるでしょう。
ビジネスで使える! 本音を引き出す質問フレーズ
それでは、具体的に使える質問のフレーズをご紹介しましょう。
本音を引き出す質問フレーズ10選
- 「率直に言って、どう思いますか?」
→遠慮せずに本音を話しやすくなります。 - 「◯◯について、正直なところを聞かせてもらえますか?」
→「正直に」と前置きすることで、本音を引き出しやすくなります。 - 「もし制約がなかったら、どうしたいですか?」
→立場や状況に縛られない考えを引き出せます。 - 「一番気になっていることは何ですか?」
→相手が本当に考えていることを優先的に引き出せます。 - 「どんなことが一番の不安ですか?」
→相手の悩みや課題を明確にし、深掘りするのに有効です。 - 「この話をするときに、何か気を遣っていることはありますか?」
→遠慮しているポイントを明らかにし、深い話を引き出せます。 - 「誰にも言ってないけど、じつは……と思っていることはありますか?」
→「じつは……」というフレーズにより本音を語りやすくなります。 - 「本音ベースで聞きたいのですが、何か引っかかっていることはありますか?」
→「本音ベースで」と伝えることで、意図的に本音を求める姿勢を示すことができます。 - 「今の状況を10点満点で評価するとしたら、何点ですか? その理由は?」
→数値化することで、相手の満足度や不満など、本心を引き出しやすくなります。 - 「今後、もっとよくするために、何か変えるべき点はありますか?」
→問題点を正直に話しやすくなり、新たな気づきを得たり行動を変えるきっかけにもなります。
こうしたフレーズを覚えておくだけで、相手の本音を引き出し、思考や行動を促す質問をタイミングよくすることができます。ぜひ自分のものにして実践してみてください。
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「上手に質問ができること」はビジネスパーソンにとって大切なスキルです。相手の本音を引き出し、深い思考や行動を促すことで建設的なビジネスを展開することができます。ぜひ「よい質問」を日々の仕事に活かし、成果につなげてください。
※引用の太字は編集部が施した
*1 ダイヤモンド・オンライン|「良い質問」とはどのような質問か?
*2 マイナビウーマン|「オープンクエスチョン」とは? 具体例や効果的な使い方を解説
STUDY HACKER 編集部
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