眠気覚ましのシャワーはムダ!? 朝イチの仕事からシャキッとしたいなら、この2つをやってみて

コーヒーを飲む男性

朝はどうにも調子がでない。普段なら、メールの整理や予定の確認などの軽いタスクでウォーミングアップしてから、と進める。でも、最近は朝から大事な要件をこなす必要があることも多い。

なんとかしなければ、と思いつつも、眠いものは眠いのだと半ばあきらめかけている。

でも、どうやら午前中からパワフルに動く「コツ」があるようです。今日は睡眠の研究から、朝からしゃきっと働ける方法を探ります。

そもそも、しゃきっと目覚める方法など「ない」

まず、前提をお伝えしておきます。すこし残念なお知らせです。じつは、目覚めた後、どんな行動をとってもしゃきっとすることはありません。

ベッドでゴロゴロしても、朝食をとっても、シャワーを浴びても、たいした違いはありません。

それを、わざわざ確かめた絶望の実験があります(笑)

健康な成人に8時間眠ってもらい、ふだんの時刻に起きてもらいます。そして起きた直後から4時間、眠気の強さと計算テストの成績を追いました。これを3日続けています。

実験には、朝の過ごし方がふたつありました。

ひとつめは、起きて朝食をとり、シャワーを浴びて過ごす「起きて動く朝」です。がんばりました。

ふたつめは、ベッドに横になったまま過ごす「寝たままの朝」です。ダラダラしています。

どうでしょう。なんとなく、シャワーのほうが効きそうな気がしませんか?

でも残念。どちらの朝でも、起きた直後は眠気が強く、計算テストの成績も落ちていたそうです(ハーバード大学医学部のジュエット氏らの研究による)。*1

ジュエット氏らの実験 朝の過ごし方の2条件

起きて動く朝

朝食シャワー
→
起床直後眠気強く成績低下

寝たままの朝

ベッドで横になる
→
起床直後眠気強く成績低下

どっちも眠い!!

8時間たっぷり寝ていても、これです。ここから導かれるのは、眠りが足りていても、起きた直後は眠いということです。これには「睡眠慣性」という名前までついているそうです。

目覚まし時計

頭が戻る目安は「起きてからの経過時間」

では、眠気はいつ覚めるのでしょうか。これにも、実験があります。実験では、起きてから4時間の推移を追いました。

結果として、起きた直後に強かった眠気はだいたい40分ほどを目安に薄れていったそう。そして、計算テストの成績は70分ほどを目安に、本格的に回復していったことが観察されました。

その後、2時間から4時間かけて普段の脳に戻ります(同じくジュエット氏らの研究による)。*1

起きてからの回復の推移

 
 

起床

眠気が強く計算の成績も低い

 

40分

眠気が薄れていく

 

70分

計算の成績が本格的に回復

 

2〜4時間

ふだんの脳に戻る

つまり、起きた直後はどの道なにをやっても眠い。時間をかける必要がある、ということです。

7時に起きた人の予定にあてはめると、頭を使う作業の回復は8時頃から本格化し、9時から11時頃ふだんに近いところまで戻る、ということですね。

だから、朝起きてシャワーを浴びようと頑張るよりも、頭を使う時間から逆算して起きるほうが効果的だということです。

窓の外を見る女性

ハック1 リモートの朝は「70分前起床」

一つ目のハックは「70分前起床」。リモートワークの日に、その日いちばん頭を使う用件の時刻から70分引いて、そこを起きる時刻にする方法です。

在宅の日は、起きて30分で席につけます。便利なぶん、用件の直前まで寝ていられるので、起きた直後の一番鈍い頭で会議に入ることになります。出社の日はこうなりません。9時の会議なら7時には起きていて、通勤の時間が回復の時間を勝手に確保しているからです。

やることは前の晩の一回だけ。明日の予定を見て、頭を使う用件がいつ始まるかを確かめ、その70分前に目覚ましを合わせる。9時の会議なら7時50分、10時の提出なら8時50分です。

70分は、実験で計算テストの成績の回復が本格的に進んだ目安です。ふだんの脳に戻りきるのは2〜4時間後なので、余裕があるなら2時間前でもかまいません。起きてすぐの一番鈍い時間帯を用件から外すだけなら、70分で足ります。

起きてから用件までの70分は、頭を使わなくていい時間です。シャワーも朝食も、メールの整理も、この枠に入れておく。ウォーミングアップは、起きてから用件までの時間そのものがやってくれます。

本と眼鏡

ハック2 充電器を移すだけでできる「紙の夜」

二つ目のハックは「紙の夜」。寝る前に読むものを、端末から紙に替えておく方法です。

スマホとタブレットの充電器を、寝室から玄関やリビングに移します。寝る前に手に取るものは、本でも雑誌でも、印刷した資料でもかまいません。寝る前に読みたい記事があるなら、夕方のうちに印刷しておく。

起きてすぐの眠気は、前の晩に何で読んだかで変わるのでしょうか。それを調べた実験があります。

チャン氏らの実験 健康な若い成人12人、5夜ずつ

端末の夜

寝る前の約4時間明るさ最大のタブレットで読む
→
22時に就寝8時間眠る
→
寝つき約10分遅れ翌朝も眠い

紙の夜

寝る前の約4時間紙の本で読む
→
22時に就寝8時間眠る
→
端末より約10分早く寝つく翌朝は眠気が残らない

眠った長さは同じなのに、翌朝に差が出ています(ハーバード大学医学部のチャン氏らの研究による)。*2

寝る前にスマホでニュースや動画を見て、そのまま眠る。それが、まさに実験の「端末の夜」です。翌朝、眠気が残ります。

紙の夜は、朝の習慣を一つも増やさずに、翌朝に眠気を残さない方法です。充電器を移す、印刷しておく。夜のふたつの動作で、翌朝が変わります。

***

というわけで、朝に頭が回らないのは、どうやら誰でもそうらしい、というのがこの記事の結論です。8時間寝ていても、シャワーを浴びても、起きてすぐは眠い。これはもう、どうしようもありません。

ただ、時間がたてばちゃんと戻ります。だいたい70分くらい。なので、朝しゃきっとする方法を探すのはやめて、大事な用件のときに頭が戻っているように、起きる時間を決めてしまいましょう。リモートの日なら、用件の70分前に起きる。それだけです。

あとひとつ。寝る前にスマホを見ていると翌朝がよけいに眠くなるそうなので、充電器は寝室の外に出しておくといいですよ。

明日の朝、大事な予定は何時ですか。そこから70分引いて、目覚ましを合わせてみてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 朝、頭が働かないのは寝不足のせいですか。
寝不足だけではありません。8時間眠ってふだんの時刻に起きた健康な成人でも、起きた直後は眠気が強く、計算テストの成績が落ちていました。朝食をとってもシャワーを浴びても同じで、誰にでも起きます。眠気は40分ほど、計算の成績は70分ほどを目安に回復が本格的に進み、ふだんの脳に戻るには2〜4時間かかります。
Q. リモートの日は、大事な用件の何分前に起きればいいですか。
70分前が目安です。実験で計算テストの成績の回復が本格的に進んだのが、起きてから約70分でした。ふだんの脳に戻りきるのは2〜4時間後なので、余裕があれば2時間前でもかまいません。出社の日は通勤の時間が回復の時間になっているので、変える必要はありません。
Q. 寝る前にスマホで読むと、翌朝は何が変わりますか。
寝る前の約4時間を画面の明るさを最大にしたタブレットで読んだ夜は、紙の本で読んだ夜に比べて寝つくまでが約10分遅れ、翌朝も眠気が残っていました。眠った長さは8時間で同じです。充電器を寝室の外に移し、寝る前に手に取るものを本か印刷した資料にしておくと、翌朝が変わります。
(参考)

*1: Jewett, M. E., Wyatt, J. K., Ritz-De Cecco, A., Khalsa, S. B., Dijk, D. J. & Czeisler, C. A. (1999), Journal of Sleep Research, 8(1), pp.1–8|Time course of sleep inertia dissipation in human performance and alertness
*2: Chang, A.-M., Aeschbach, D., Duffy, J. F. & Czeisler, C. A. (2015), Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America, 112(4), pp.1232–1237|Evening use of light-emitting eReaders negatively affects sleep, circadian timing, and next-morning alertness

【プロフィール】
岡 健作(おか・けんさく)

株式会社新恵社 代表取締役。
1977年生まれ、福岡県出身。同志社大学文学部英文学科卒業。2010年に株式会社恵学社(現・株式会社イングリッシュカンパニー)を創業。2014年に学習メディア「STUDY HACKER」を立ち上げ、編集長を通算10年以上務める。STUDY HACKERは最大で月間500万PV、STUDY HACKERのInstagramは月間700万PV、フォロワー28万人(2026年10月7日時点)。2026年に新恵社を設立し、自社のメディアで読者と直接つながる「広報のD2C」を掲げる。著書に『勉強の戦略』(朝日新聞出版)など。
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