「地頭がよくなりたい」そう思っていませんか? 根を詰めて勉強しても、地頭のいい人とは成果がまるで違う。やっぱりもともとの頭の出来が違うから……? いえいえ、諦めるにはまだ早いんです。誰にでも身につけられる、「地頭のいい人」になるための3つの思考習慣をお伝えします。
「地頭」とは、思考力だ
そもそも、「地頭がいい」とはどういうことなのでしょう。「地」とついているので、生まれつきの頭のよさのことだと思いがちですよね。ですが、じつはそうではないんです。
現役東大生で勉強法に関する著書を多くもつ西岡壱誠氏は、もともと高校3年時の偏差値が35で、「勉強はしているのに一向に成績が上がらない、典型的なバカ」だったと言います。そんな西岡氏がなぜ、東大合格という大逆転をなしえたのか。それは、「頭のいい人のやり方、思考法をパクリまくったから」とのこと。
机に向かっている時間が長いわけでもなければ、もともと頭の出来は違うわけでもない。思考の違いが、「頭のよさ」をつくっているのです。
そしてその思考回路は、誰でも真似できます。偏差値35だった僕も、その思考回路を真似することで、東大に合格することができました。
(引用元:西岡壱誠(2020),『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』,東洋経済新報社. ※太字は引用にあたり筆者にて施した)
つまり西岡氏は、東大生の頭のよさの正体は思考回路だと言っているのです。
また、ビジネスコンサルタントの細谷功氏は、「頭がいい」を次の3つに分類しています。
- 物知りである(知識・記憶力)
- 機転が利く(対人感性力)
- 地頭がいい(考える力)
やはり、地頭とは思考力のことだと言えますね。そして、地頭のよさとは生まれもったものではなく、思考を変えれば誰でも高められるということもわかります。
では、地頭力を鍛えて、勉強効率を上げるための3つの思考法をご紹介していきましょう。
その1. 脱「常識」思考
1つめは、脱「常識」思考。これまで頭のよさや勉強そのものに対して抱いていた常識を、リセットする思考です。
作業療法士の菅原洋平氏は、「頭がいい人は、もともとの頭の出来が人とは違うんだ」「勉強は、とにかく机に向かって知識を詰め込むものだ」といった、多くの人が抱く従来の「勉強常識」が、勉強の効率を落としていると言います。こうした考え方は意志や努力に頼るものが多く、脳に大きな負担をかけるため、パフォーマンスを下げてしまうのです。
菅原氏は、そんな従来の「勉強常識」を「科学的勉強常識」へと変えることをすすめています。「科学的勉強常識」とは、脳や体を勉強に適したかたちで働かせることにより、学習のパフォーマンスを高める考え方のこと。たとえば、以下のような具合です。
(『東洋経済オンライン|「地頭の良い人」に憧れる人が知らない勉強技術』を参考に編集部にて作成)
地頭をよくするために、「科学的勉強常識」を実践して、脳が最大限に働く状態をつくるところから始めましょう。
その2. 知的好奇心思考
2つめは、何事にも知的好奇心をもつ思考です。細谷氏は、地頭のベースは知的好奇心だと言います。
まず最もベースとなるのが、「知的好奇心」です。「考える」という行為の最も基本、かつ起動回路となるのがこの知的好奇心です。知的好奇心とは、日常的に触れる何気ない物事にも「ひっかかり」を持ち、何事に対しても一度は疑ってみることだと思います。そうすることによって思考が起動する(考えはじめる)のです。
(引用元:細谷功(2008),『いま、すぐはじめる地頭力 結論から・全体から・単純に』,大和書房. ※太字は引用にあたり筆者にて施した)
知的好奇心をもつことは、普段の勉強においても大切です。参考書を読んで勉強するなら、書いてあった内容をそのまま受け取るだけでは不十分。西岡氏いわく、東大生は知識を覚えるときに、丸暗記するのではなく、その「原因」を探して理解しているのだそう。
例として西岡氏が挙げるのが「ペリーが来航した年=1853年」の覚え方です。ただ年号を暗記するのではなく、「なぜ1853年だったのか?」と考えて実際に調べてみると、同じ年の数ヶ月後にヨーロッパでクリミア戦争が起こっていることがわかります。アメリカは、情勢が不安定なヨーロッパの国が手出しできないうちにと思って、日本に来たのではないか……そう推測できるとのこと。
このように、物事をそのまま覚えるのではなく「なぜ? どういうこと?」と知的好奇心を働かせて考えると、広い知識が体系的に身につき、しかも記憶に残りやすくなります。これが、知的好奇心のつくる地頭の力です。思考停止の丸暗記はやめて、好奇心をもちながら勉強するようにしてみましょう。
その3. 俯瞰思考
3つめは、俯瞰してとらえる思考。細谷氏によれば、地頭のいい考え方とは「結論から・全体から・単純に」考えること。また西岡氏は、頭のいい人は「マクロとミクロを行き来」して考えると言います。どういうことでしょうか。
たとえば、ある長文を読むとしましょう。地頭がよくない人は、一文一文をひたすら読んでいきます。一方、地頭のいい人は、この文章の結論はなんなのか、全体を通してどのような構成になっているか、単純に要約するとどんな内容かを考えながら読みます。文章の全体像(マクロ)を俯瞰でとらえて、その中で一文一文(ミクロ)がどんな意味をもつのかを考えるのですね。すると、一文一文をひたすら読んでいくのに比べ、それぞれの文に対する理解度がぐっと上がります。
じつは、先ほど例に挙げた「ペリー来航は1853年」の覚え方も、俯瞰思考であると言えます。目の前の年号をただ暗記するのではなく、その出来事が歴史全体の中でどういう意味をもつのかを考えているからです。
思考力のない人は、何かと目の前の細部にとらわれがちです。ひたすら読む、ひたすら覚える。そのような勉強は、思考を止めてしまいます。いま自分の目の前にある問題や物事を、もっと大きな視点でとらえ直す習慣をつけましょう。
ある事象が、歴史全体、経済全体、科学全体においてどんな意味をもつのか。いま自分がしている勉強は、何のためにしているのか。常に俯瞰で考える姿勢が、地頭を育みます。
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地頭とは、思考力。目の前の常識にとらわれず、もっといい方法はないのか? 原因は何? それってつまりどういうこと? と自分の頭で考える力なのです。あなたが「自分は地頭が悪い」と思い込んでいるのは、考えていないから。思考力をつけて、地頭のよさを手に入れましょう。
(参考)
西岡壱誠(2020),『「考える技術」と「地頭力」がいっきに身につく 東大思考』,東洋経済新報社.
細谷功(2008),『いま、すぐはじめる地頭力 結論から・全体から・単純に』,大和書房.
東洋経済オンライン|「地頭の良い人」に憧れる人が知らない勉強技術
東洋経済オンライン|東大生から見た「地頭がいい人」の典型的な特徴
東洋経済オンライン|「地頭がいい人」とそうでもない人の決定的な差
STUDY HACKER|「地頭力」を鍛える方法10選【保存版】
【ライタープロフィール】
梁木 みのり
大学では小説創作を学び、第55回文藝賞で最終候補となった経験もある。創作の分野のみでは学べない「わかりやすい」「読みやすい」文章の書き方を、STUDY HACKERでの執筆を通じて習得。文章術に関する記事を得意とし、多く手がけている。