つい他人と比較してしまう? そんなの、実は普通です。——脳の「比較グセ」と気楽に向き合う3つの方法

天井を見上げる女性

同期が昇進した。そう聞いて「おめでとう」と言った、その声が自分でもわかるくらい薄かった。

夜、なんとなく開いたSNSには、今度は友人の起業報告。その下に、後輩の海外赴任の写真。閉じる。天井を見る。取り残されているのは自分だけ、という気がしてくる。

人の幸せを喜べないなんて、自分はどれだけ性格が悪いんだろう。

でもそれは、あなたの性格の問題ではありません。人間にはもともと「比べる」仕組みがあって、それがいまの環境でうまく回っていないだけです。

今回は、どうしてもしてしまう「他人との比較」と、そこへの向き合い方のお話です。

比較は脳のデフォルト機能である

人と自分を比べてしまうのは、当たり前のことです。むしろ比べずに生きるほうが難しい。

考えてみると、仕事の充実度とか、人生がうまくいっているかどうかとか、そういうものには点数がつかないものです。テストなら80点は80点ですが、「いい30代」に点数はない。

絶対的な物差しがないと、人は隣の人を物差しにします。同期が目盛りになる。同期の昇進がこたえるのは、そういうことです。

ただ、比べることそのものは悪くありません。少し先を行く人を見て「あの人のやり方、真似できないかな」と思えることもある。それは学びになることもあります。

比べてしまうのは、自分の位置を知ろうとする仕組みがちゃんと動いている証拠だともいえます。

窓際でスマホを見る男性

比べるのは正常。入力される情報が多すぎるだけ。

では、なぜこれほどしんどいのか。

大谷翔平選手が打てば、素直にうれしい。なのに、同期が昇進すると胸がざわつく。この差は何なんでしょう。

心理学者のアブラハム・テッサーが「自己評価維持モデル」という考え方を出しています。自分にとって大事な分野で誰かが成功したとき、その相手が自分に近いほど、自分の値打ちが下がったように感じてしまう、というものです。*1

遠い人なら、ただの「すごい人」。近い人だと、「自分と入れ替わっていたかもしれない人」。そう考えると、大谷選手に嫉妬しないのは当たり前で、同期にざわつくのも当たり前です。近い相手の成功ほど、比較は自分ごととして突き刺さる。装置はそういう仕様になっています。

そして、ここからが現代の話です。

その「近い人」が、かつては村や職場の数人でした。いまはポケットの中に数千人います。しかも流れてくるのは、その人たちの暮らしの「映える」瞬間だけを切り出したハイライトです。

フィリップ・ヴェルデュインらの2015年の研究では、SNSで自分からは投稿せず、人の投稿を眺めているだけの使い方をしている人ほど、そのあと気分が落ち込みやすかったそうです。背景にあるのは妬み。*2

眺めているだけで沈む。心当たりがある風景です。

比較してしまうという性質は昔のまま、目にする情報だけが何百倍にもなった。もやもやが増えたのは、比較の入力量そのものが膨れ上がったからで、あなたがおかしいからではありません。

窓の外を見る女性

【自己診断】あなたの比較は「燃料型」? 「消耗型」?

同じ比較でも、行き着く先は人によって違います。あなたはどちらでしょう。

燃料型の傾向

消耗型の傾向

消耗型が多かった人。それでもやっぱり、性格の問題ではありません。装置の使い方が、まだ手つかずなだけです。

付箋を見つめる男性

比較を燃料に変える3つの操作

やめようとしなくて構いません。どうせやめられませんし、やめる必要もありません。比較をやめようと頑張るより、うまく使うほうが早い。操作は3つです。

1. 入力を減らす

もやもやの発生源になっているアカウントはミュートしてください。フォローは外さなくていいし、絶縁もしない。ミュートは相手に伝わりません。

ミュートはしたくないと思うのなら、例えば受動的にスクロールしがちな時間帯には、スマホを別の部屋に置く。それだけでも入力はかなり減ります。

2. 比較の軸を増やす

同期の昇進は「キャリア」という一本の軸の話です。評価の軸が一本しかなければ、勝ち負けは一つに決まる。

だから、自分が積み重ねてきた別の軸を書き出してみてください。専門性でも、家族との時間でも、健康でも、学び直しでも。五本並べると、負けている軸もあれば、そうでもない軸もある。それが見えるだけで、痛み方が変わります。

3. 過去の自分を対照群にする

ときどき、「1年前の自分にはできなかったこと」を3つ書き出してみてください。

他人との比較は、相手との「距離」で痛みが決まります。一方で過去の自分との「距離」はそのまま成長です。

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比較は止められません。それは生まれつき備わった性質ですから。でも、誰と、どの軸で、いつ比べるかは、自分で選べます。

次に誰かの昇進を聞いてざわついたら、自分を責める前、「いま、誰と、どの軸で比べているんだろう」と確かめるだけで穏やかさを取り戻せるかもしれませんよ。

よくある質問(FAQ)

Q. 嫉妬している自分が嫌になります。
嫉妬は、自分が何に関心を持ち、何を求めているかを教えてくれる信号だと捉え直すと、扱いやすくなります。
Q. SNSをやめれば解決しますか。
入力量を減らす手段としては有効ですが、比較という装置自体はSNSをやめても残ります。比較の軸を増やす、過去の自分と比べるといった使い方の工夫も、並行して取り入れてみてください。
Q. 人と比べない人になれますか。
比較の装置を完全に停止することは難しいものです。目指すのは、誤作動を抑え、比較を自分の成長のために使いこなすことです。
Q. 部下や子どもを他人と比べてしまいます。
比較の矛先が他者に向くと、相手を傷つけやすい点に注意が必要です。「同僚はできているのに」と他人と比べる代わりに、「先月のあなたと比べて、ここが進んだね」と過去の本人と比べる言い方に切り替えると、相手も受け止めやすくなります。

【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部

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