「伝え方がうまい人」は “相手の型” を知っている【4タイプ解説】

ソーシャルスタイル理論の4タイプを示した画像

——今日も会議で同僚と意見がぶつかってしまった……。
——部長の指示が理解できず、ギクシャクしてしまう……。

職場での人間関係に悩んでいませんか? 

特に会議やプロジェクト進行で意見が合わない場面では、「この人とは根本的に合わないのかも……」と感じてストレスになりますよね。とはいえ、相手を変えることもできないし、意思疎通がうまくいかない状態を放置するわけにもいきません。

そこで、参考となるのが「Social Style®理論」です。相手のコミュニケーションスタイルを理解することで、あなたのリーダーシップスキルや営業力、チームワーク能力を大幅に向上させることができるでしょう。あなたや周囲の人が「どのタイプに当てはまるのか?」をチェックしながら、読み進めてみてくださいね。

多くの企業が活用する「ソーシャルスタイル理論」とは?

Social Style®理論(ソーシャルスタイル理論)とは、1950年代のデイビッド・メリル氏の研究を起点に、のちにロジャー・リード氏らとともに体系化されたモデルです。現在、多くの企業がパフォーマンス向上のために活用しています。*1 

性格特性を測るツールは数多く存在しますが、ソーシャルスタイル理論が特に優れているのは、実証的な研究に基づく信頼性の高さにあります。実際に、イノベーション・マネジメントを専門とする研究者らの研究報告でも、ソーシャルスタイルがプレゼンテーションの評価に有意な影響を与えることが実証されており、職場での評価向上にも直結するスキルと言えます。*2

従来の主観的な人物評価——「あの営業は積極的だ」「あの新人は控えめな性格」といった漠然とした印象——では、効果的なコミュニケーション戦略を立てることは困難です。しかし、チームのメンバーを理解するひとつの基準としてソーシャルスタイル理論を活用すれば、相手の行動パターンや意思決定プロセスを客観的に捉え、理解を深めることができます。

たとえば、会議で発言が少ない同僚に対しても、「消極的だから意見がない」ではなく「慎重に検討してから発言するタイプなので、事前資料の共有と十分な検討時間の確保が必要」といった建設的なアプローチが可能になるのです。

では、4つのスタイルを詳しくご紹介しましょう。

ディスカッションしているビジネスパーソン

Driving Style(実行型)

【基本特徴】
決断力・行動力に優れ、率直な印象を与える
「非常に目標志向が強く、達成したい目標に自分の努力だけでなく、他者の力も積極的に活用する」
チームを先導するリーダーシップに長けている
注意すべき傾向

感情表現が控えめで、支配的・強引な印象を与えることもある

特徴的な言動例
会議での発言
「いまの工程では人員も必要だし、時間もかかりすぎます。もっと効率化できる方法を早急に検討しませんか?」
 

特徴:問題を提起し、明確でスピーディな判断をする

部下や同僚への対応
「正直に言うけど、今月の成果目標には届かなさそうに思える。効率的に進めるために、一緒に考えようか」
 

特徴:相手の感情よりも、結果やスピードを重視する

チームでの役割:停滞しているプロジェクトでは、彼らの迅速な意思決定が重要な役割を担う

うまく付き合うには……
1
結論から端的に話す

「この提案により売上20%向上が見込めます。実行には3つの工程が必要で……」のように、最初に結果を伝える

2
データと具体的な成果を準備

感情論ではなく、数字や事実に基づいた論理的な根拠で説得する

3
スピード感を重視

長時間の検討より、迅速な意思決定と行動を好むため、テンポよく進める

窓際で話し合っているビジネスパーソン

Expressive Style(表現型)

【基本特徴】
感情表現が豊かで人当たりがよく、状況に対する反応が大きい
ネガティブな状況によらず、ポジティブな状況でも感情をあらわにする
人と話すことも好きで、会話の中心になることも少なくない
注意すべき傾向

場合によっては「意見が強い」「感情的だ」と受けとられることもある

周囲の場をなごます言動例
ミーティングの終わり
「今日のミーティング、意見が多くあがって盛り上がりましたね。今度のプロジェクト、成功する気がします。とても楽しみです!」
 
部下に対する配慮
「何かあったら遠慮なく言ってくださいね。私はコミュニケーションを大切にしているので、相談があればいつでも歓迎します」
 

チームでの役割:豊かな感情表現や共感力で周囲にポジティブな気持ちをもたらし、「この人とは気軽に話せる」という安心感を与える

うまく付き合うには……
1
アイデアに共感を示してから意見を述べる

「素晴らしいアイデアですね。それに加えて...」のように、まず相手の提案を認める

2
ビジョンや将来性を交えて説明

単なる作業ではなく、「この取り組みが将来どんな成果をもたらすか」を語る

3
一対一の対話時間を作る

人とのつながりを重視するため、個人的な関心事にも配慮を示し、関係性を深める

笑顔で話し合っているビジネスパーソン

Amiable Style(温和型)

【基本特徴】
自分の感情を率直に伝える
「協調性があり、気さくで、リラックスできる人」
ほかのスタイルの人より「人間関係」を重視する
仕事遂行の条件:まず第一に「安心できる人間関係」にいること
注意すべき傾向

対人関係の衝突を避けるあまり、自分の主張を強く発言するのが苦手

チームに貢献する言動例
会議で意見が衝突しているとき
「どちらの意見も一理あると思います」
 

特徴:双方の立場に配慮し、議論が感情的にならないよう中立的に調整する

チームのひとりが悩んでいるとき
「ランチ行かない? 気分転換になると思って」
 

特徴:相手を気遣い、自然な形でサポートを提供する

チームでの役割:周囲を見渡しながら常に気を配り、チーム内に安心感をもたらし、職場の「心理的安全性」を高める

うまく付き合うには……
1
十分な検討時間を与える

即断即決を求めず、「ゆっくり考えてくださいね」と時間的プレッシャーをかけない

2
チーム全体への影響を説明

「みんなで協力すれば成功できます」のように、人間関係の観点から協力を求める

3
個人的な関心事にも配慮を示す

仕事以外の話題にも耳を傾け、安心できる関係性を築くことを優先する

談笑している四人の従業員

Analytical Style(分析型)

【基本特徴】
分析が得意で慎重になる特徴がある
「物静かで論理的、そして時に控えめな印象を与える」
意思決定にも慎重な態度を示し、行動の正しさを再確認しながら進める
冷静な知性があり、複雑なプロジェクトや問題解決の場面で活躍
注意すべき傾向

物静かさ・慎重さが裏目に出ることもあり、積極的に周囲とコミュニケーションをとることが苦手

活かすポイント

結論を急がず、彼らの情報整理・分析する時間を配慮すること

コミュニケーションスタイル例
感情的な議論の場面
「少し感情的になっているようなので、もう一度事実に戻って冷静に議論しませんか?」
 

特徴:感情より事実を重視し、論理的な議論に導く

企画提案の検討場面
「この企画案はやや根拠に乏しいと私は考えます。〇〇のデータを再度見直し、判断したいと思います」
 

特徴:データに基づいた慎重な判断を重視する

チームでの役割:事実・データにもとづいた信頼性の高い判断で、チームの方向性が迷走したり意見が対立したりするとき、冷静で論理的な考えでチームを正しい方向性に導く

うまく付き合うには……
1
詳細な資料を事前に準備

会議前に資料を共有し、十分な検討時間を確保する。データの根拠も明確にする

2
論理的な順序で説明

感情的にならず、ステップバイステップで客観的事実に基づいて議論を進める

3
質問時間を十分に確保

「何か不明な点はありませんか?」と確認し、疑問点をクリアにしてから進める

書類を見ながら話し合っている3人の従業員

※SOCIAL STYLE®およびSOCIAL STYLE Model™は、The TRACOM Groupの登録商標です。本記事は理論の一般的な解説を目的としており、診断提供や商用研修を行なうものではありません。

***
4つのソーシャルスタイルを確認して、ご自身や周囲の人に当てはまるスタイルはありましたか? 「こういう考えで働くんだ」と理解すれば、お互いの個性や仕事のスタイルを客観的に見ることができ、興味深く思えるはずです。よりよい対人関係を築くヒントになれば、幸いです。

【ライタープロフィール】
青野透子

大学では経営学を専攻。科学的に効果のあるメンタル管理方法への理解が深く、マインドセット・対人関係についての執筆が得意。科学(脳科学・心理学)に基づいた勉強法への関心も強く、執筆を通して得たノウハウをもとに、勉強の習慣化に成功している。

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