
たくさん練習しているのに、なぜか覚えられない。何回もやったはずなのに、テストになると出てこない。
そういう人は、もしかすると、覚えることばかり考えていて、忘れることを考えていないのかもしれません。
今日は記憶の研究から、覚えるのとは反対の「忘れる」の話をします。
記憶のカギは「忘れかける」ことである
変な話に聞こえると思いますが、記憶が定着するには、いったん忘れかける必要があります。
覚えたばかりのことを、忘れないうちにもう一回やっておこう、というのは誰でもやることですし、真面目な人ほどやります。
でも記憶の研究では、それが一番残る復習だったためしがないんです。残るのは、忘れかけてから思い出したもののほうでした。

忘れかける→思い出す→定着する
どういうことか、順番に言います。覚えたことは、時間がたつと取り出しにくくなります。ここで、なんとか思い出そうとして、思い出す。
記憶が強くなるのは、この瞬間です。
ところが、覚えたその日のうちに問題集を開くと、考えなくても答えが出てきます。思い出していないので、記憶はそれ以上強くなりません。
脳は覚えたときに定着させるのではなく、思い出したときに定着させる。だから、忘れかけるまでの時間がいるわけです。
コラム
望ましい困難
「望ましい困難」という言葉があります。記憶研究の第一人者、UCLAの心理学者ビョーク氏がつけた名前で、学ぶときに少し手間がかかるほうが、あとに残る、という考え方です。
たとえば、復習の間隔を空ける。一つの内容を続けてやらず、ほかと混ぜてやる。読み返す代わりに、自分でテストする。どれも、その場では手間が増えて、覚えにくく感じます。でも、その手間が思い出す力をつけて、あとまで残る。
忘れることについても、氏はこう言っています。忘れかけているときに思い出すと、記憶は強くなる。逆に、すぐ思い出せる状態で何度やり直しても、ほとんど身につかない。*1
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ハック 忘れる時間をつくる「回し方」
やり方は簡単で、今日やったことを、明日はやらない。それだけです。
たとえば月曜に単元1をやったら、火曜は単元2、水曜は単元3と進めます。
木曜になったら、単元1をもう一回やってから単元4。金曜は単元2をもう一回やってから単元5。
こうやって、新しいことを一つと、三日前のことを一つ、毎日セットで回していきます。
前回の範囲を頭からやり直していた時間が、そのまま三日前の分の復習になるので、勉強はちゃんと前に進みます。
回し方の例(1週間)
月
火
水
木
金
土
濃い色が新しい単元、薄い色が三日前の単元の復習。
三日たつと、単元1の解き方はけっこう忘れています。木曜に開いて、あれ、どうやるんだっけ、となる。
そこで思い出したものが残ります。
コラム
一日に詰め込んでも効果は薄い!?
これを確かめた実験があります。実験では、ある数学の単元をまず教えました。その後、練習問題を2問だけ解きます。この時の正解率は95%。
そのあと、全員を3つのグループに分けました。
グループ1は、その場で続けてあと4問解きます。これを「まとめ組」としましょう。
グループ2は、その場で追加であと2問解きます。これを「軽いまとめ組」とします。
そして、グループ3は、その場では追加で2問解いたあと、1週間後にもう2問解きます。これを「分け組」とします。
すべてのグループに、最後の練習から1週間後にテストをします。結果は、「まとめ組」は49%、「軽いまとめ組」は46%、そして「分け組」はなんと74%(南フロリダ大学の研究者らの研究による)。*2
まとめ組
軽いまとめ組
分け組
その場で倍やっても、点はまったく増えない
興味深いのは、追加で4問やった「まとめ組」と追加で2問しかやっていない「軽いまとめ組」でほとんど差がなかったということ。
つまり、その場で全部やっても、半分しかやらなくてもほとんど同じ。差があるのは、1週間あけてやったかどうかだった、ということです。
***
覚えられないのは、覚え方が悪いのではなくて、忘れる時間を取っていないだけかもしれません。
今日やったことは、明日は開かない。三日たってから開いて、思い出す。
やることはそれだけなので、明日から試してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 忘れないうちに復習しないと、忘れてしまいませんか。
Q. 復習は、何日空ければいいのでしょうか。
Q. 一日にまとめて何度も練習するのは、意味がありませんか。
*1: Worth Publishers|『Psychology and the Real World: Essays Illustrating Fundamental Contributions to Society』FABBS Foundation 編(所収 Bjork, E. L. & Bjork, R. A., Making Things Hard on Yourself, But in a Good Way: Creating Desirable Difficulties to Enhance Learning)
*2: Rohrer, D. & Taylor, K. (2007), Instructional Science, 35(6), pp.481–498|The shuffling of mathematics problems improves learning
STUDY HACKER 編集部
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