新型コロナウイルス感染拡大の影響で、計画していた海外留学が延期になってしまった人は少なくないはず。収束の見通しも立っておらず、「いつになったら留学に行けるだろうか……」「英語力を高めるせっかくの機会が後ろ倒しになっていく……」などと、もどかしく感じている人も多いのではないでしょうか。
でも、ただ指をくわえて待っているだけでは、時間は過ぎていくばかり。むしろ、この空いた時間をチャンスととらえ、留学のコストパフォーマンスを高めるための「準備」を入念に行なっていきませんか? 時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」の藤ヶ崎花恵さんにお話をうかがいました。
藤ヶ崎花恵さん
株式会社スタディーハッカー「StudyHacker ENGLISH COMPANY」事業部長。慶応義塾大学で教育学を専攻後、進学校の教員として東大進学クラス等を担当。その後カナダに留学、TESOLを取得。北米各地での就業経験を経て、英語教育現場に復帰。
「留学すれば自然と英語力は上がる」と安易に考えるのは危険!?
語学学校に通いたい、大学編入を目指したい、現地で働いてみたい――海外留学に行く目的は人それぞれでしょうが、その根底には当然「英語を使いこなせるようになりたい」という思いがあるはず。しかし、自身も留学経験がある藤ヶ崎さんは、「留学に行きさえすれば英語を流暢に話せるようになる」という考えは幻想に過ぎないと指摘します。
「日本にいるときと比べて、英語に触れる機会が圧倒的に増えるのは事実。でも、そもそも相手が何を話しているのか聞き取れなくて輪に入れず、日本人だけのコミュニティに安住して結局日本語ばかり使ってしまう、といった失敗事例をこの目で見てきました」
留学の醍醐味は、それまで引き出しの中に蓄えてきた知識の使い方を「実戦を通して学べる」というところにあります。裏を返せば、引き出しの中に入っていなければ何も出せないということ。せっかく英語を使うチャンスが豊富にあるのに、それを生かせないのはもったないですよね。事前に引き出しの中身をいかに増やし、それを使うための準備をいかに整えておけるか――留学のコスパはここで決まると、藤ヶ崎さんは言います。
「いまは、コロナ収束を待って国内で待機している方もたくさんいるでしょう。でも、考えようによってはチャンスかもしれません。日本にいるうちに力をつけてスタート地点を引き上げておけば、留学という有限で貴重な時間を、スピーキング力やディベート力といった、もっと高度なスキルを磨くために費やせるのです」
よくある「英語が聞き取れない問題」どうすれば解決できるのか?
いざ現地に行ってコミュニケーションをとろうとした際、多くの人が突き当たるのが「ネイティブの英語が聞き取れない」という問題です。しかし藤ヶ崎さんによれば、ひとくちに「聞き取れない」と言っても、そこには大きく3つの理由があるのだとか。
「1つめは『単語・文法などの知識が不足している』というケースです。当然、読んでわからない状態では聞き取れるはずもありませんよね。日本にいるあいだに、単語や文法の知識をしっかりインプットしておく必要があります」
2つめは「英語の音声に関する知識が不足している」ケース。テキストを読めば意味は理解できるのに、音自体を聞き取ることができません。これは、個々の英単語の発音を正確に理解していないことに加え、ネイティブ特有の省エネな発音パターンを知らないことにも原因があるのだそう。
「これを『音声変化』と言いますが、じつは留学当時の私自身も体系的には理解できていませんでした。留学前に知っていたらどんなに効率的でどんなに楽だったか……と悔しく感じたことを覚えています。
たとえば、ネイティブは『弱形』を多用します。これは文字通り “単語を弱く短く発音する” ことです。一方で、日本の学校教育で教えられるのは『強形』発音。習った発音と異なる発音で話されると、まったく聞き取れないのも当然ですよね。リスニングが苦手な日本人が多いのもそのためです」
また、この「弱形」発音に付随するものとして、英語特有の「リズム」もあるとのこと。藤ヶ崎さんは留学先で発音指導専門のスクールに通い、この強勢のつけ方を特訓させられたのだそうです。
「リズムを身につけることでブレイクスルーを味わえた反面、『日本語と英語はリズムや拍のとり方がまったく違う』という点にそれまで注目していなかったことを痛感しました
日本語は音節で拍をとる “syllable-timed language” と呼ばれるのに対し、英語は強勢を重視する “stress-timed language” と呼ばれます。LやRなど、個々の発音の問題は日本でもよく話題になりますが、日本人の英語がネイティブに伝わらない原因はむしろ、この英語特有のリズムを表現できていないからだと言われています。
逆に言えば、こういった『音声変化』や『英語特有のリズム』について、留学前に体系的に習得しておけば効率がいいということ。そのためには、ディクテーション(聞こえてきた音声をすべて書き取る)やオーバーラッピング(聞いた音声を同時に発音する)、シャドーイング(音声のすぐ後ろを追いかけながらまねして発音する)といった方法がおすすめです」
留学のコスパは「準備」で決まる
最後の3つめは「英語は聞き取れるものの瞬時に理解できない」。たとえば、英文が長くなればなるほど理解が追いつかなくなるといったケースが該当します。
「この場合、英語を頭から瞬時に処理するスキルが足りていません。特に、学校教育で英語を頑張ってきた方や、きれいに和訳しながら英文を理解する “返り読み” の癖がしみついている方に多く見られる傾向です」
実際に藤ヶ崎さんが留学した際も、ペーパーテストでは高得点をとって上級レベルのクラスに入ったものの、先生からの指示やクラスメートのやり取りが聞き取れず苦労していた日本人がまわりに大勢いたのだそう。
「こんな方におすすめなのが、英文を頭から意味のかたまり(チャンク)ごとにイメージしながら音読する『チャンクリーディング』というトレーニング。リスニングはリーディング以上に処理スピードが求められます。この方法を通して英文理解の瞬発力を引き上げ、実際のリスニングに備えましょう」
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日本での「準備」の良し悪しが留学のコスパを左右する――この事実を知れば、コロナで留学延期となった今の状況はむしろチャンスかもしれません。留学前に日本でできることをしっかりやっておけば、留学のコスパは何倍にも高まります。
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【ライタープロフィール】
STUDY HACKER 編集部
「STUDY HACKER」は、これからの学びを考える、勉強法のハッキングメディアです。「STUDY SMART」をコンセプトに、2014年のサイトオープン以後、効率的な勉強法 / 記憶に残るノート術 / 脳科学に基づく学習テクニック / 身になる読書術 / 文章術 / 思考法など、勉強・仕事に必要な知識やスキルをより合理的に身につけるためのヒントを、多数紹介しています。運営は、英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」を手がける株式会社スタディーハッカー。