「涼しくなってきて過ごしやすいのになんとなく憂うつだな……」「全然やる気が出ない……」
猛暑が終わって活動しやすい気候になってきたはずなのに、こんなふうに面倒な気持ちになる人は多いのではないでしょうか。9月頃にこのような状態になることを「9月病」といいます。
9月病に対処するための方法を知っておけば、憂うつな気分を長引かせず早めにいつものペースに戻すことができますよ。本記事では、特にストレスの軽減に着目し、ストレスコーピング術についてご紹介します。
【ライタープロフィール】
柴田香織
大学では心理学を専攻。常に独学で新しいことの学習にチャレンジしており、現在はIllustratorや中国語を勉強中。効率的な勉強法やノート術を日々実践しており、実際に高校3年分の日本史・世界史・地理の学び直しを1年間で完了した。自分で試して検証する実践報告記事が得意。
9月病がおこる理由
5月病に比べ、9月病はあまり聞きなじみがないかもしれません。
クラシエ薬品株式会社の調査によると、「『9月病』の認知度はわずか16.5%でしたが、実際に不調を感じたことがある人は約4割にも上る」のだそうです。
(カギカッコ内引用元:PR TIMES|夏休み明けにやる気が出ない… 実は『5月病』ならぬ『9月病』かも? 『9月病』の症状を漢方視点で解説 ~認知度はわずか16.5%も、約4割が経験ありと回答!~)
自覚がないだけで、多くの人が憂うつになったり疲れやすくなったりするなど、9月病の症状を感じているのです。そもそも、なぜ9月病がおこるのでしょうか。
横浜鶴見リハビリテーション病院で院長を務める吉田勝明氏は、9月病の原因について「生活面での原因と、気候面での原因があります。」と述べています。(カギカッコ内引用元:ウェザーニュース|やる気が出ない日が続けば「9月病」かも? 今できる対策は?)
生活面での原因は「夏バテからくる不規則な睡眠や食生活の乱れ」で、気象面での原因は「9月が台風やゲリラ豪雨など気象の変動が大きい時期であるのに、そうした季節の変わり目に体がついていかない」ことにあるのだそう。(カギカッコ内引用元:同上)
低気圧や気温の変化が、自律神経に影響を与えることは広く知られていますよね。それに加えて、休暇中の生活の乱れが影響し、身体が高ストレス状態になってますます自律神経が乱れる……という状態になるのが9月病、というわけです。
環境や生活リズムの変化など、さまざまなストレスが重なることで、9月病になりやすくなってしまうのですね。気象はコントロールできませんが、それ以外のストレスをできるだけ軽くすることで、9月病をやわらげたり、回復を早めたりすることができそうです。
休暇明けの憂うつに効くストレスコーピングとは?
ストレスを軽くする手段として「ストレスコーピング」があります。
洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長で、公認心理士の伊藤絵美氏によると、コーピングとは「ストレスを軽減すべく『意図的な対処』をする」ことを指すのだそう。(カギカッコ内引用元:PHPオンライン|「これ以上引きずらない」ためのストレス対処法)
具体的にはどのような対処をするのでしょうか。同氏は「ストレスの悪循環に陥っている自分を助けてくれることなら、すべてコーピングになります。」と述べています。(カギカッコ内引用元:同上)
たとえば、ストレスが溜まっているとき、ゆっくりお茶を飲むとほっとするのなら、それはコーピングになるというわけです。ただ、「あくまでも、『これが自分のストレスに対処する方法である』と意図したうえで行なうのがコーピングであると理解して」おくことが重要なのだそう。(カギカッコ内引用元:同上※太字は編集部が施した)
同じ行動をとるにしても、ただなんとなくお茶を飲むより、「自分はゆっくりお茶を飲むとほっとするから、忙しかった日は寝る前にゆっくりお茶を飲む時間をとる」と考えて行なうほうが、コーピングになるのですね。
同氏は、このようなコーピング方法をまとめた「コーピングリスト」をつくることをすすめています。落ち着いているときに、「これまで自分はストレスを感じたとき、どんな行動をとると気分がよくなったか」を思い出して、その行動をリストにしておくのです。
そうすれば、ストレスを感じたときに、すばやくコーピングを行なうことができるのですね。また、リスト作成のポイントとして「多種多様なストレスに応じて有効なコーピングを選択するには、レパートリーが多いことが重要」だと語っています。(カギカッコ内引用元:同上)
ひとくちにストレスといっても、さまざまな種類があるもの。コーピングも複数持っておけば、柔軟に対応できるのです。
コーピングリストをつくってみた
実際に筆者がコーピングリストを作成し、実践してみました。20個のコーピングをリストアップしています。
コーピングリストはレパートリーの多さが大切ということだったので、癒されるものからスカッとすることまでバランスよくリストアップすることを心がけました。
コーピングリストがあれば、ストレスに強くなれる!
実践した日、筆者は仕事やさまざまな雑用が重なってモヤモヤしていたので、コーピングリストのなかから「ダンスエクササイズ動画を観て踊りまくる」を選び、30分ほどひたすら踊りました。30分後にはかなり汗をかき、全身の血液が巡っている感じがして、とてもすっきりしました。
実践してみて感じたメリットはふたつあります。
ひとつめは、事前にリストにしてあることで、迷わずコーピングを選択できることです。ストレスが溜まっているときに、いろいろ考えるのはおっくうですよね。
コーピングリストがあれば、「なんだかストレスが溜まっているな。じゃあ、コーピングリストを見て、やりたいものを選んでやろう」と意思決定を楽にすることができるため、効率的だと感じました。
ふたつめは、「これをやれば、確実にストレス発散できる」とわかっていることです。筆者の場合、「ダンスエクササイズは自分のストレス発散に効くものだ」と自覚しており、そのうえでコーピングリストに加えています。
そのため、この行動は確実にストレス発散につながるという確信がありました。ほかのコーピングも同様で、「このリストに書かれている行動なら、どれを選んでも必ずストレスは軽くなる」とわかっているのは非常に心強いものでした。それだけで、ストレスが軽減したように感じました。
モヤモヤしているときには、ダンスやカラオケなど発散するタイプのコーピング、疲れている・元気が出ないというときには、お茶を飲む・たくさん寝るなどエネルギーを補充するようなコーピング、というように、自分が感じやすいストレスに合わせてコーピングを書き分けておくと、さらに便利になるのではないかと感じました。
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長期休暇明けはストレスで憂うつになりやすいもの。できるだけストレスを軽減するため、コーピングリストはおすすめです。本記事を参考にしてみてくださいね。