「集中しよう」と思わないほうがいい。仕事後の勉強で集中できる人がやっていること

仕事後の勉強で集中力を高めるための「条件と行動」メモの例

仕事を終えて、夕食を済ませて、ようやく机に向かう。

資格試験のテキストを開き、「よし、今日は集中するぞ」と気合を入れる。しっかり机に向かい、スマホも遠ざけ、余計なことは考えていないはずなのに――なぜかテキストの文字が頭を通り過ぎていく。内容を理解しようとすればするほど、自分の頭が空回りしているような焦りだけが募り、「やっぱり自分には集中力がないのかも」と落ち込んでしまう。

みなさんにも、そんな経験はありませんか? 筆者にはたくさんあります。

でもそれは、意志が弱いせいではないかもしれません。むしろ、集中しようと意識しすぎることで、勉強そのものよりも「ちゃんと集中できているか」の確認に注意が向いてしまうことがあるのです。

この記事では、限られた時間で勉強したい社会人に向けて、「仕事後の勉強で集中できる人がやっていること」をご紹介します。ポイントは、集中を邪魔する頭の働きを減らすこと。今日の勉強の際に、ひとつだけ試せる小さな方法まで落とし込みます。

「集中しよう」と思った瞬間、意識は勉強からそれてしまう

仕事後に勉強を始めようとするとき、私たちはすでに疲れています。日中の会議、メール、家事、移動、対人対応など……。頭のなかには、まだ片づいていない仕事や気がかりが残っているはずです。

その状態で「集中しなきゃ」と強く命令すると、どうなるでしょうか。じつは、このとき、意識の一部が「いま集中できているか?」をチェックし始めます。テキストを読んでいるはずなのに、頭の片隅では「ちゃんと入っている?」「またぼんやりしていない?」と自分を監視しているような状態です。

心理学者ダニエル・ウェグナー氏らの有名な実験では、参加者に「白いクマのことを考えないでください」と指示すると、かえって白いクマが頭に浮かびやすくなる現象が示されました。考えないようにするには、その対象を見張る必要があるため、逆に意識にのぼりやすくなるのです。*1

勉強中でも、これと似た構図が見られるかもしれません。「集中できているだろうか」「また気が散っていないだろうか」と自分の状態を何度も確認するほど、その監視役としての役割に意識が分散してしまうのです。

それなら最初から、集中力を高めようとするのではなく、注意の向け先を整えてみてはいかがでしょう。このあと詳しく説明します。

📖 もっと読みたい 勉強に集中できない人のための "10のしないこと"。集中力を「高めよう」と思わなくていい studyhacker.net

1.「集中しよう」を「条件と行動」に置き換える

勉強前に、思わず頭のなかで「よし、集中しよう」などと唱えてしまいそうなときは、「集中しよう」を特定の「条件と行動」に置き換えてみましょう。そのためにも、以下のような内容を簡単に紙に書いて、見える場所に貼っておくといいかもしれません。

「21時になったら15分、単語帳42〜44ページを1周する」など、条件と行動を具体的に書いたメモの例

≪例≫

「集中して英単語を覚える」 → 21時になったら15分、単語帳の42〜44ページを1周する
「集中して問題集を進める」 → 勉強を始めてから10分経ったら、間違えた問題を3問だけ解き直す

心理学では、単に目標をもつだけでは不十分とされています。一方、実行意図(implementation intentions)と呼ばれる方法があります。「もし〇〇になったら、△△する」と具体的に決めることで、行動へ移りやすくなるというものです。

なぜなら「もし〇〇になったら」の部分でその状況に気づきやすくなり、「状況」と「行動」のあいだに強い結びつきが生まれて、反射的に動けるようになるからです(Gollwitzer, 1999)。*2

その際には動きやすくなるよう、できるだけ小さな行動にすることがおすすめです。

📖 もっと読みたい 「理想の1日」を書き出した効果がすごすぎた。毎日の充実度が劇的に変わった話 studyhacker.net

2. 「雑念を消す」のではなく「いったん外」に出す

勉強を始めた瞬間に、なぜか関係ないことが浮かぶことはありませんか?

  • 「明日のメール、返していなかった」
  • 「そういえば洗濯物を干したっけ」
  • 「あの会議の言い方、変だったかな」
  • 「週末の予定、どうしよう」

こうした雑念が出ると、多くの人は「考えちゃダメ」「勉強に戻らなきゃ」と押しのけようとします。それが、余計にそのことを考える結果を招くわけです。

そこでおすすめは、「雑念を消す」のではなく「いったん外」に出すことです。手元に小さな紙を置き、気になることが浮かんだら1行だけ書きます。つまり、「雑念を消す」ではなく、「雑念の置き場所をつくる」のです。

「明日Aさんに返信」「洗濯物確認」「会議の件」「週末の予約」など、頭に浮かんだ雑念を1行ずつ書き出したメモの例

≪例≫

  • 「明日Aさんに返信」
  • 「洗濯物確認」
  • 「会議の件」
  • 「週末の予約」

心理学の研究では、未完了の目標は頭のなかに残り続け、別の作業への集中を妨げることがあります。しかし、その目標について具体的な計画を立てると、そうした認知的負荷が軽減される可能性が示されています(Masicampo & Baumeister, 2011)。*3

頭のなかで保留になっていた課題をいったん外に出し、対応の見通しをつくることで、今度こそ目の前の勉強に注意を向けやすくなるはずです。

📖 もっと読みたい 勉強前の〇〇がカギ! 記憶力と集中力を劇的に高めるふたつの簡単ルーティン studyhacker.net

実際にやってみた

このふたつを実際に試したところ、勉強中の雑念に脳を奪われる時間がかなり減ったように感じられました。

ただ、実践してみてわかった注意点もあります。条件を「21時になったら」のように時間だけにすると、急な用事でズレたときに計画が崩れ、やる気を失いやすいのです。また、雑念を書き留めたメモ紙が机の上に散らかっていると、それ自体が新たな視覚的ノイズになります。

条件には「お風呂から上がったら」など確実に迎える日常の行動も混ぜ、メモは小さく、扱いをシンプルに保つのが継続のコツです。

***

仕事後の勉強で必要なのは、気合ではなく、「ある条件で何をするか」を小さく決めること。

そして、「雑念の置き場所をつくる」こと。このふたつを意識するだけでも、仕事後に勉強するハードルは、ぐっと低くなるはずです。

よくある質問

仕事後は疲れていて勉強する気力がありません。そもそも始められないときはどうすればいいですか?

「気力が出たら始める」ではなく、「お風呂から上がったらテキストを開く」など、日常の行動に勉強のきっかけを結びつけるのがおすすめです。記事で紹介した「条件と行動」の考え方(実行意図)を使えば、気力に頼らずに動き出せるようになります。まずは「5分だけ」という小さな条件から設定してみましょう。

雑念を紙に書き出すと、そのメモが気になってさらに集中できなくなりそうです。

メモは小さく、扱いはシンプルにするのがポイントです。付箋1枚に収める、書いたらテキストの下に裏返して置くなど、視界に入りにくい工夫をするとよいでしょう。書き出すこと自体の目的は「頭の外に出して一時保管する」ことなので、メモの内容は勉強後に見返せばOKです。

「条件と行動」を決めても、その条件のタイミングに気づけないことがあります。

時間だけを条件にすると、予定がズレたときに崩れやすくなります。「お風呂から上がったら」「歯磨きのあと」など、毎日必ず起こる行動を条件にするのが効果的です。複数の条件を組み合わせておく(時間+行動)と、どちらかが来たタイミングで動けるようになります。

この記事で紹介された方法は、どんな種類の勉強にも使えますか?

はい、資格試験・語学・読書・スキルアップなど、机に向かって取り組む勉強全般に活用できます。ただし、ひとつのセッションで扱う内容は絞り込むほど効果的です。「今日は単語帳のこのページだけ」と範囲を限定した条件設定にすると、より動きやすくなります。

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。