「時間ができたら勉強しよう」が一生来ない理由。先に決めるだけの『実装意図』勉強法

疲れている女性

「資格の勉強を始めたいのに、今日も仕事で終わってしまった」「本を買っただけで満足してしまう」。そんな日が続くと、「自分は意志が弱いのかもしれない」と感じてしまうものです。

しかし、実は問題は意志の強さではなく、「学習を始める設計」にあるのかもしれません。多くのビジネスパーソンが、同じ場所でつまずいています。

この記事では、調査データと行動科学の研究をもとに、忙しい毎日でも学習が続く仕組みのつくり方を紹介します。

忙しくて勉強できないのはあなただけじゃない。多くの人が「時間の壁」で立ち止まっている

「仕事が落ち着いたら勉強を始めよう」。そう思っているうちに、数か月が過ぎていた。そんな経験はありませんか。

厚生労働省「令和6年度 能力開発基本調査」によると、令和5年度に自己啓発を行った労働者は36.8%でした。正社員に限ると45.3%にのぼります。*1

一方で、正社員の82.9%が自己啓発に何らかの問題を感じており、いちばん多い悩みは「仕事が忙しくて自己啓発の余裕がない」(55.9%)でした。*1

データで見る時間の壁

それでも、自己啓発を行った人の95.2%が「役に立った」と回答しています。*1

また、30代で自己啓発を行った人は45.0%、40代では38.3%と、年齢が上がるほど下がる傾向もみられます。*1

仕事で責任が増え、家庭との両立も求められる年代だからこそ「まとまった時間ができたら始める」という考え方では難しいのかもしれません。

必要なのは、時間ができるのを待つことではなく、「時間がなくても始められる仕組み」を先に用意することです。

意志の問題ではなく「始める仕組み」の問題だった

「忙しいときは、まず余裕をつくろう」と考えがちです。

しかし、時間やお金が足りない状態では、私たちの注意や判断の幅が狭くなりやすいことが研究で示されています(ムライナサン、シャフィール著『欠乏の行動経済学』)。*2

「忙しいから計画が立てられない」のではなく「忙しいからこそ計画を立てる力が削られてしまう」可能性があるのです。

だからこそ、先に学習の枠を決めてしまうことが大切です。そのために役立つのが、次の3つの設計です。

学びを続ける3つの設計

  • 学習を日常の行動につなげる
  • 「いつやるか」を先に決める
  • 進み具合を記録する

なかでも注目したいのが、「もし○○したら、△△をする」と決めておく「実装意図」です。多くの研究をまとめた分析で、目標の達成に中くらいから大きめの効果が確認されています。*3

たとえば、「勉強する」ではなく、「退勤して電車に乗ったら英単語アプリを15分開く」と決めておく。

「やるか、やらないか」をその場で考えなくて済むため、忙しい日でも始めるハードルが下がります。

進捗チェック

加えて、138の研究をまとめた分析では、進み具合を記録することが目標の達成を後押しすることが示されています。*4

「頑張る」のではなく、「始めやすくする」こと。それが、学びを続ける第一歩なのです。

今日から始める。学習を優先タスクに変える3ステップ

では、具体的に何をすればよいのでしょうか。

総務省「令和3年社会生活基本調査」では、「学習・自己啓発・訓練」に使う時間は、10歳以上の全体でみると1日平均13分です。働いている人にかぎると、テレワークをした日は10分、しなかった日は4分という結果も示されています。*5

大切なのは、「1時間をまとめてとること」ではなく、「10分を積み重ねること」。まずは次の3ステップから始めてみてください。

1「すでにある時間」とつなげる

通勤電車の15分、昼休みの10分、寝る前の5分など、毎日ほぼ変わらない時間を使います。

「新しく時間をつくる」のではなく、「すでにある時間に乗せる」ことがポイントです。

2「もし○○したら△△する」を決める

行動をセットにして、あらかじめ決めておきましょう。

  • パソコンを閉じたら、資格のテキストを15分開く
  • 朝コーヒーを飲んだら、ニュース記事を1本読む
  • 帰宅したら、英語アプリを5分だけ開く

3「続いた日」を記録する

学習時間を細かく記録する必要はありません。

「今週は4日できた」「3日続いた」というように、実行日数だけでも十分です。

もし朝活に挑戦したいなら、「30分早起きする」だけでなく、「30分早く寝る」こともセットにしてみてください。睡眠時間を削るやり方は、長続きしにくいためです。

大きな目標よりも、小さく始められる仕組みのほうが、忙しい毎日には向いています。

***

「忙しくて勉強できない」は、意志の弱さではなく、設計の問題かもしれません。時間ができるのを待つのではなく、「いつ、どこで、何をするか」を先に決めてしまうこと。まずは今日、「退勤したら15分だけ開く」というひとつの約束から始めてみませんか。

よくある質問(FAQ)

Q. 忙しくて勉強時間がとれないのは、自分の意志が弱いからですか?
必ずしもそうとはいえません。厚生労働省の調査では、正社員の82.9%が自己啓発に何らかの問題を感じており、いちばん多い理由は「仕事が忙しくて余裕がない」(55.9%)でした。多くの人が同じ壁にぶつかっています。また行動経済学の研究では、時間が足りない状態では注意や判断の幅が狭くなりやすいことが示されています。意志の強さより、「始めやすい仕組み」を先に用意するほうが効果的です。
Q. 1日どのくらい勉強すれば効果がありますか?
総務省の調査では、学習・自己啓発に使う時間は10歳以上の全体で1日平均13分です。まずは1時間の確保を目指すのではなく、通勤や昼休みなど「すでにある時間」に10〜15分の学習を乗せ、それを積み重ねることから始めるのがおすすめです。
Q. 勉強を習慣化する具体的なコツはありますか?
「もし○○したら△△する」と行動をセットで決めておく方法(実装意図)は、多くの研究をまとめた分析で、中くらいから大きめの効果が確認されています。あわせて、「今週は4日できた」など実行日数を記録して進み具合を見えるようにすることも、目標の達成を後押しするとされています。

【ライタープロフィール】
橋本麻理香

大学では経営学を専攻。13年間の演劇経験から非言語コミュニケーションの知見があり、仕事での信頼関係の構築に役立てている。思考法や勉強法への関心が高く、最近はシステム思考を取り入れ、多角的な視点で仕事や勉強における課題を根本から解決している。