「勉強したのに覚えられない」と悩む人向けのノート術。なぐり書きでOK「捨てノート」の効果

勉強内容を思い出せない女性

「選択式の問題ならなんとなく回答できるけど、記述式だと正確に答えられない……」
「テキストをしっかり読んだのに、問題を解こうとすると思い出せない……」

資格試験の勉強などでこうした記憶力に関する悩みを抱える方は、「捨てノート」を試すといいかもしれません。そのやり方と効果を、筆者の実践例も交えてご紹介しましょう。

「捨てノート」が勉強に効果的な理由

「捨てノート」とは、『マンガでわかる 現役東大生が実践していた! 東大を攻める7つの勉強習慣』で紹介されているノート術。同書を共同執筆した現役東大生・東大大学院生たちが、大学受験時に重要視し実践していたという勉強法のひとつです。

同書によれば、捨てノートとは「書き出し優先」の「保管不要のノート」。その目的は「記憶すること」です。書き出すという作業のためだけに使うノートなので、復習などで「あとで見返すため」の「整理されたノート」とはまったく別のものになります。(カギカッコ内引用元:東大まんがくらぶ (2020), 『マンガでわかる 現役東大生が実践していた! 東大を攻める7つの勉強習慣』, 講談社.)

なぜ、書き出し専用のノートをつくるのでしょう。その理由について、同書ではこう説明されています。

手を動かして書くという作業は、記憶の定着に一定以上の効果を発揮します。この「書く」という作業が、短期記憶を長期記憶に変換するうえで、重要な役割を果たしているのです。

(引用元:同上)

覚えるために書くことの有効性については、脳科学に詳しい精神科医の樺沢紫苑氏も、次のように述べています。

「書く」「話す」といった運動神経を使った記憶は、「運動性記憶」と呼ばれます。運動性記憶の特徴は、一度覚えるとその後はほとんど忘れることはないということです。

(引用元:樺沢紫苑著(2018),『学びを結果に変えるアウトプット大全』,サンクチュアリ出版.)

記憶定着に役立つ「捨てノート」

また『東大を攻める7つの勉強習慣』によれば、「暗記科目は、覚えたつもりでも意外と抜けが生じるもので、その抜けは実際にアウトプットしてみなければ、気づくことはできない」とのこと。つまり、捨てノートをつくると、自分がまだ正確には覚えられていない箇所がどこなのか、気づけるという効果もあるのです。

続いて、具体的なやり方についてご説明しましょう。

「捨てノート」で勉強する方法

捨てノートで勉強する方法は次のとおりです。

  1. テキストを短いひと区切りごとに読む
  2. 読んだ内容を、記憶に基づいてノートに書き出す
  3. 書き出した内容をすぐに添削する

(『東大を攻める7つの勉強習慣』よりまとめた)

先述のように、あとで見返すためのノートではないので、ノートに書く際はなぐり書きで問題ないそう。添削する際は、重要な要素を見落としていないかや、記憶違いがないかを確認するといいとのことです。

じつは、このように記憶だけに頼って学習内容を思い出す勉強法は、「リトリーバル」と呼ばれるもの。スタンフォードオンラインハイスクール校長の星友啓氏も、脳科学の観点から推奨しています。

星氏の著書『脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法 スタンフォード大学OHS校長が教える「超効果的頭の使い方」』によれば、10~15分の区切りで学び、1~2分かけて学んだ内容を思い出すとよいとのこと。場合によっては、3~5個の単語を覚えるごとに学習内容を思い出すという方法でもいいそうです。思い出す際は、「書く」「声に出す」といったかたちで言葉にして外に出すと効果的だそうですよ。

作成途中の「捨てノート」

「捨てノート」で勉強してみた

筆者もさっそく、捨てノートを活用しながら勉強をしてみました。学習内容は、FP(ファイナンシャルプランナー)技能検定3級です。

10~15分でテキストの項目をひとつ読んで、捨てノートに書き出すことを基本とし、特に難しい内容は、単語を数個勉強するごとに捨てノートに書くようにしました。また個人的に以下のツールが使いやすいと感じましたので、あわせてご紹介します。よろしければ参考にしてみてください。

  • 自由帳
    ノートはジャポニカ学習帳の自由帳(B5判・179×252mm)を使いました。横罫や方眼罫の大学ノートも試しましたが、罫線に意識が向いてしまい自由度が低く感じられました。白無地の自由帳のほうが、なぐり書きに適していると思います。
  • シャーペン
    ボールペンでも試しましたが、ペンの滑りがシャーペンのほうがスムーズで、なぐり書きに適していると感じました。

学習内容を書き出す際は、以下の2パターンで行ないました。なぐり書きとはいえ、まとめながら書けば、より学習効果を高められるだろうと考えたのです。

  1. マッピングで情報を階層構造にしてまとめる。
  2. 単語の意味を要約したり、箇条書きにしたりしてまとめる。

階層構造でまとめたのは、世界記憶力グランドマスターの青木健氏が、情報を体系的に覚えられる方法だとしてすすめていたから。(参考:青木健 (2020), 『記憶力日本チャンピオンの 超効率 すごい記憶術』, 総合法令出版.)

また、要約や箇条書きをしたのは、前出の樺沢氏が、情報を自分なりに整理したりまとめたりすると、情報を覚えやすく、忘れにくく、思い出しやすくなると述べていたためです。(参考:樺沢紫苑(2019),『学び効率が最大化するインプット大全』, サンクチュアリ出版.)

まず、1の階層構造を意識しながら書いた捨てノートの紙面がこちら。「遺族給付には遺族基礎年金と寡婦年金、死亡一時金と……がある」というように、主に特定のテーマの全体像を把握したい場合に、こちらの方法をとりました。

FP技能検定3級のマッピング

そして、2の要約や箇条書きを意識して書いた捨てノートの紙面がこちらです。

FP技能検定3級の要約・箇条書き

なお、1と2どちらのパターンでも、ノートに間違った内容を書いてしまったときは、テキストを再度確認し、正しい情報をノートに書き直しました。というのも、前出の星氏がこう述べていたからです。

予測を立てて、それが間違いであることがわかったときに、報酬系が活性化して、その間違いを正しく修正する脳の「準備」ができる。その状態で間違えたことを確認し、正しい答えを理解することで、最高の学びが得られるんです。

(引用元:『結果が出る最強の勉強法』※太字は編集部にて施した)

この脳のメカニズムを活かして、問題集で誤答した問題や、直感的に正解できたが苦手な問題も捨てノートに書くことに。問題集の解説文には要点がまとめられているため、それを読み込み、記憶した内容をノートに書き出しました。

実践途中の「捨てノート」

「捨てノート」で勉強してみたら、しっかり覚えられた!

捨てノートで勉強して感じた効果や、提案したいことを以下へまとめます。

1.「繰り返し書く」と、記憶がより定着した!

まず、テキストの内容をスムーズに記憶して、間違った問題を一度の復習で理解できる確率が高まったと感じました。

もちろん、ノートにたった一度書いただけで、すべての内容を完全に覚えられるわけではありません。捨てノートで記憶を強化するには、「繰り返し書く」ことが重要だと思います。

樺沢氏によれば、情報が脳の「海馬」で仮保存されているあいだに繰り返しアウトプットすることで長期記憶になるとのこと。アウトプットは、2週間で3回以上を目安に行なうといいそうです。(参考:『学びを結果に変えるアウトプット大全』)

捨てノートは、テキストを読んだり暗記シートを使ったりするより効率的に覚えられる印象ですが、記憶をいっそう定着させるには、やはり堅実に繰り返し書くことをおすすめします。

2.「声に出しながら書く」のもおすすめ

先述のとおり、「運動性記憶」になることから「話す」のも有効なアウトプット法のひとつだと樺沢氏。また専門学校講師やセミナー講師を務める石川和男氏も、「2つ以上の動作を行うことが記憶の定着に有効」だとして、「目で見るだけでなく、声に出し」ながら暗記することをすすめています。(カギカッコ内引用元:リクナビNEXTジャーナル|この「勉強法」は、やってはいけない~暗記編~

そこで筆者も、テキストの内容を声に出しながらノートへ書くことに。特に、間違った箇所や苦手な箇所へ下線を引くなどしてゆっくり声に出すと、記憶に定着しやすくなりました

また個人的に、声に出しながら書くと、焦らず落ち着いて思い出せるようになったとも感じました。もし声を出すことができる環境でしたら、ぜひあなたも試してみてください。より覚えやすくなることでしょう。

***
覚えた内容を書きなぐる、保管不要の「捨てノート」。ぜひ、資格試験勉強などに活用してみてくださいね。

(参考)
東大まんがくらぶ (2020), 『マンガでわかる 現役東大生が実践していた! 東大を攻める7つの勉強習慣』, 講談社.
樺沢紫苑(2019),『学び効率が最大化するインプット大全』, サンクチュアリ出版.
樺沢紫苑 (2018), 『学びを結果に変えるアウトプット大全』, サンクチュアリ出版.
星友啓 (2021), 『脳科学が明かした! 結果が出る最強の勉強法 スタンフォード大学OHS校長が教える「超効果的頭の使い方」』, 光文社
青木健 (2020), 『記憶力日本チャンピオンの 超効率 すごい記憶術』, 総合法令出版.
リクナビNEXTジャーナル|この「勉強法」は、やってはいけない~暗記編~

【ライタープロフィール】
かのえ かな
大学では西洋史を専攻。社会人の資格勉強に関心があり、自身も一般用医薬品に関わる登録販売者試験に合格した。教養を高めるための学び直しにも意欲があり、ビジネス書、歴史書など毎月20冊以上読む。豊富な執筆経験を通じて得た読書法の知識を原動力に、多読習慣を続けている。

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